ハカイジ

悪夢

自分と同じような人間が何人もいた
レンは、驚きをもってその光景を見ていたが、すぐにそんな余裕はなくなってしまった。

体育の授業がキツかったからだ。

元々、堕落したが生活を送っていて、運動なんてほとんどしてなかった為に、体が鈍っていることも大きな原因の一つだったが、もっと大きな理由があった。

それは、「処置」と呼ばれるものをされたからだった。

睾丸を摘出され、女性ホルモンの注射を打ち始めていたレンは、走り出すと、苦悶の表情を浮かべた。
乳首の辺りにしこりが出来ていて、走ると、とてつもない痛みが走るのだ。

耐えられない痛みだったが、他の連中も痛そうにしており、自分に限ったことではないということがわかったのだった。



それでも、必死にメニューをこなし、なんとかこの地獄の体育を乗り越えたレン達は、一時間ほどで解放された。


そして、約束された通り、昼食の時間に話を聞ける事となった。


先ずは、自己紹介から始めようとしたが、先程少しだけ話をした人物が声をかけてきた。


「さっきはちゃんと挨拶出来ずにごめんね。

ワタシは三橋っていいます。

ここに来た理由は、あなたと同じだと思う。」


「平野と申します。

よろしくお願いします。」


「平野さん、よろしくね。

他の人達にも後で紹介するわ。
でも、先ずは聞きたい事があるんだよね？」


「はい。

どうしてこんな体にされてしまったのか…
それが知りたくて。」


「そうよね。
何が何かわからなかったでしょう？

ワタシもよ。」


「はい。」


「地下にいる人達は、みんな同じ理由でこっちを選んだと思うんだけど。
早く出られるって事と、地上勤務に比べて格段に楽だってこと。」


「はい、そうお聞きしました。」


「それが甘かった

って、後から思うんだけど、もう取り返しがつかないわね。」


「ええ…」


「ワタシ達がここにいる理由


それは、ここの会長のせいよ」


三橋は、少し笑みを浮かべながら、話を続けた。