ハカイジ

要点

ここまでくると、柿崎と櫛田は、レンと三井をマルチ商法の獲物にしようとしていることが露骨にわかった。


もちろん、世の中に、そんな上手い話などあるわけがない。


いや、たしかに一部の人間は儲けているかもしれない。

しかし、レンや三井は、いわゆる搾取される側の人間であり、親ネズミになれる器ではない。

そんなバイタリティがあれば、朝から夕方まで黙々と喋りもせずに、ラインに入る工場仕事など選ぶはずがない。


自分の立ち位置は、しっかりと把握できている…


あー、早く帰りたい


だが、奥の席に詰められ、一切の逃げを許さないこのやり方は、二人を絶望させた。

視線を逸らそうにも、逸らす場所がない。

また、今度といっても、許してくれず、帰してくれない。


周到に準備され、こうなる事を仕込まれたのだ。

それを見抜けなかった自分が悪い。


とりあえず、この健康食品を購入したら帰らせてもらえるのか？


値段は…


36万！！


何が妻にクリスマスプレゼントだ。


消費者金融が経営しているローンに入らされて、これを購入させられる…


もう、終わりだ…


絶望の淵に立たされたレンは、なんとかこの窮地から逃れようともがいたが、マルチ商法の相手から、そんなに容易く逃げられるわけもなく、きっちり契約をさせられてから、解放された。