16 / 28
1話
16
しおりを挟む
「とりあえずアールグレイで良い?」
「あぁ、構わない」
サリナは自室の小さなキッチンで紅茶の準備を始める。
寮の全室にはそれぞれキッチン、トイレ、シャワーが常備されており、寮生は思い思いの生活が可能となっていた。
アルトは設置してあるテーブルと椅子を見て、椅子に腰かける。
(荷物がまとめてあるな…やはりあの噂は本当なのか?)
彼は部屋の隅にまとまられた箱に目がいく。
数は多くないが、それなりに大きい荷物が積んであった。
「お待たせ」
サリナは持ってきた紅茶をテーブルの上に置く。
アールグレイのいい香りが部屋中に充満する。
「それで?私が自主退学するか、だよね?」
「あぁ。噂になってるそうだ」
「まぁ、あながち間違えではない」
そう言うとアルトは少し驚く。
「理由は何だ?両親に何か言われたのか?それとも祖父が急逝したのか?」
「勝手にお祖父ちゃんを殺すな!まだピチピチの現役の医師だから!」
「なら理由は何だ」
「それは…」
サリナはどう話そうか悩んだ。
呪いのことを話すしかなくなるが、どうしてもアルトには知られたくなかったのだ。
(どうして知られたくないんだろ…?)
サリナはふと考える。
何故知られたくないのか?
それは危惧している両親のイメージダウンが関係しているのか。
(いや、それは違う)
彼女は静かに考えを否定する。
漠然とする答えにあと少しで届きそうになるが、まだあと一歩届かない。
「そんなに、僕が頼りないのか…!?」
「え」
顔を上げるとアルトは今にも泣きそうな顔をしていた。
「アル…」
「確かに僕はお前より弱い!だがな、それでも男だし、何よりお前の友人だ!!頼られないのは辛いんだぞ!?」
(頼られないのは…辛い?)
ならば、頼っていいのだろうか?
呪いを受けました、助けてください。
その言葉を口に出来ればどれほど楽だろうか。
けれど彼女は言わない。
何故ならば…。
「アルトに…軽蔑されたくない…」
「は?何を言って…」
「アルトには、綺麗な私を見ていて欲しい…。汚い私は見ないで欲しい…」
サリナが言葉にする度に、ポロポロと彼女の頬を涙が伝う。
「!?おい、何で泣いて…」
「もしアルトに、否定されたら…拒絶されたら私は立ち上がれないんだ…ッ!」
彼女の涙はまるでダムが決壊したように大粒の涙となり落ちていく。
「……」
アルトはそんな彼女の姿を見て、椅子から立ち上がり彼女の側に近寄ると優しく抱き寄せる。
「よく聞け、スタインベック。お前が何に怯えているのか知らないし、聞く気もない。だが、これだけは忘れるな。お前は僕の友人のスタインベックだ。これからもきっと変わらない」
アルトは優しくサリナの頭を撫でる。
その手つきはとても優しくて、大切なものを撫でるかのようなものだった。
(あぁ、そうか…)
サリナは確信した。
自身がアルトに抱いていたモヤや、自主退学する理由が言えなかった訳を。
(私…アルトの事が好きなんだ…)
サリナはソッとアルトを抱きしめ返す。
(なんて華奢なんだろう…)
アルトは腕の中にいるサリナを見ながら痛感する。
サリナは魔法より暴力の方が先に出るような女だ。
しかし、実際フタを開ければ何処にでもいる女の子で、こうして涙を流す事もあるそんな子だ。
アルトは初めて見る彼女の涙に動揺し“友人”発言をしたが、その発言には訂正点がある事を実感する。
(涙は、もう見たくない…。笑ったお前の顔が一番好きなんだ、サリナ…)
アルトは腕に込める力を強くする。
その力は気持ちに比例するかのように、どんどん強くなっていく。
「アルト…ッ苦しッ!」
「ッすまない!」
アルトは力を緩めるが、サリナを離さなかった。
「なぁ。もし、お前の悩みが僕にはどうにも出来ないものであっても、離れず側に居るからな」
「アルト……ありがと」
サリナは涙を浮かべながら微笑む。
その笑顔はアルトが見た中で一番輝いているようにも見えた、美しいものだった。
パリッ!
「あぁ、構わない」
サリナは自室の小さなキッチンで紅茶の準備を始める。
寮の全室にはそれぞれキッチン、トイレ、シャワーが常備されており、寮生は思い思いの生活が可能となっていた。
アルトは設置してあるテーブルと椅子を見て、椅子に腰かける。
(荷物がまとめてあるな…やはりあの噂は本当なのか?)
彼は部屋の隅にまとまられた箱に目がいく。
数は多くないが、それなりに大きい荷物が積んであった。
「お待たせ」
サリナは持ってきた紅茶をテーブルの上に置く。
アールグレイのいい香りが部屋中に充満する。
「それで?私が自主退学するか、だよね?」
「あぁ。噂になってるそうだ」
「まぁ、あながち間違えではない」
そう言うとアルトは少し驚く。
「理由は何だ?両親に何か言われたのか?それとも祖父が急逝したのか?」
「勝手にお祖父ちゃんを殺すな!まだピチピチの現役の医師だから!」
「なら理由は何だ」
「それは…」
サリナはどう話そうか悩んだ。
呪いのことを話すしかなくなるが、どうしてもアルトには知られたくなかったのだ。
(どうして知られたくないんだろ…?)
サリナはふと考える。
何故知られたくないのか?
それは危惧している両親のイメージダウンが関係しているのか。
(いや、それは違う)
彼女は静かに考えを否定する。
漠然とする答えにあと少しで届きそうになるが、まだあと一歩届かない。
「そんなに、僕が頼りないのか…!?」
「え」
顔を上げるとアルトは今にも泣きそうな顔をしていた。
「アル…」
「確かに僕はお前より弱い!だがな、それでも男だし、何よりお前の友人だ!!頼られないのは辛いんだぞ!?」
(頼られないのは…辛い?)
ならば、頼っていいのだろうか?
呪いを受けました、助けてください。
その言葉を口に出来ればどれほど楽だろうか。
けれど彼女は言わない。
何故ならば…。
「アルトに…軽蔑されたくない…」
「は?何を言って…」
「アルトには、綺麗な私を見ていて欲しい…。汚い私は見ないで欲しい…」
サリナが言葉にする度に、ポロポロと彼女の頬を涙が伝う。
「!?おい、何で泣いて…」
「もしアルトに、否定されたら…拒絶されたら私は立ち上がれないんだ…ッ!」
彼女の涙はまるでダムが決壊したように大粒の涙となり落ちていく。
「……」
アルトはそんな彼女の姿を見て、椅子から立ち上がり彼女の側に近寄ると優しく抱き寄せる。
「よく聞け、スタインベック。お前が何に怯えているのか知らないし、聞く気もない。だが、これだけは忘れるな。お前は僕の友人のスタインベックだ。これからもきっと変わらない」
アルトは優しくサリナの頭を撫でる。
その手つきはとても優しくて、大切なものを撫でるかのようなものだった。
(あぁ、そうか…)
サリナは確信した。
自身がアルトに抱いていたモヤや、自主退学する理由が言えなかった訳を。
(私…アルトの事が好きなんだ…)
サリナはソッとアルトを抱きしめ返す。
(なんて華奢なんだろう…)
アルトは腕の中にいるサリナを見ながら痛感する。
サリナは魔法より暴力の方が先に出るような女だ。
しかし、実際フタを開ければ何処にでもいる女の子で、こうして涙を流す事もあるそんな子だ。
アルトは初めて見る彼女の涙に動揺し“友人”発言をしたが、その発言には訂正点がある事を実感する。
(涙は、もう見たくない…。笑ったお前の顔が一番好きなんだ、サリナ…)
アルトは腕に込める力を強くする。
その力は気持ちに比例するかのように、どんどん強くなっていく。
「アルト…ッ苦しッ!」
「ッすまない!」
アルトは力を緩めるが、サリナを離さなかった。
「なぁ。もし、お前の悩みが僕にはどうにも出来ないものであっても、離れず側に居るからな」
「アルト……ありがと」
サリナは涙を浮かべながら微笑む。
その笑顔はアルトが見た中で一番輝いているようにも見えた、美しいものだった。
パリッ!
302
あなたにおすすめの小説
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ
猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。
そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。
たった一つボタンを掛け違えてしまったために、
最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。
主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?
「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした
しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」
十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。
会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。
魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。
※小説家になろう様にも投稿しています※
余命3ヶ月と言われたので静かに余生を送ろうと思ったのですが…大好きな殿下に溺愛されました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のセイラは、ずっと孤独の中生きてきた。自分に興味のない父や婚約者で王太子のロイド。
特に王宮での居場所はなく、教育係には嫌味を言われ、王宮使用人たちからは、心無い噂を流される始末。さらに婚約者のロイドの傍には、美しくて人当たりの良い侯爵令嬢のミーアがいた。
ロイドを愛していたセイラは、辛くて苦しくて、胸が張り裂けそうになるのを必死に耐えていたのだ。
毎日息苦しい生活を強いられているせいか、最近ずっと調子が悪い。でもそれはきっと、気のせいだろう、そう思っていたセイラだが、ある日吐血してしまう。
診察の結果、母と同じ不治の病に掛かっており、余命3ヶ月と宣言されてしまったのだ。
もう残りわずかしか生きられないのなら、愛するロイドを解放してあげよう。そして自分は、屋敷でひっそりと最期を迎えよう。そう考えていたセイラ。
一方セイラが余命宣告を受けた事を知ったロイドは…
※両想いなのにすれ違っていた2人が、幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いいたします。
他サイトでも同時投稿中です。
愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。
人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。
それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。
嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。
二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。
するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー
英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない
百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。
幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。
※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。
悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。
ねーさん
恋愛
あ、私、悪役令嬢だ。
クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。
気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…
【完結】妹ばかり愛され追い出された姉ですが、無口な夫と暮らす日々が幸せすぎます
コトミ
恋愛
セラフィナは、実の親と、妹によって、家から追い出されることとなった。セラフィナがまだ幼い頃、両親は病弱なカタリナのため設備環境が良い王都に移り住んだ。姉のセラフィナは元々両親とともに住んでいた田舎に使用人のマーサの二人きりで暮らすこととなった。お金のない子爵家な上にカタリナのためお金を稼がなくてはならないため、子供二人を王都で暮らすには無理があるとセラフィナだけ残されたのだ。そしてセラフィナが19歳の時、3人が家へ戻ってきた。その理由はカタリナの婚約が上手くいかず王宮にいずらくなったためだ。やっと家族で暮らせると心待ちにしていたセラフィナは帰宅した父に思いがけないことを告げられる。
「お前はジェラール・モンフォール伯爵と結婚することになった。すぐに荷物をまとめるんだ。一週間後には結婚式だ」
困惑するセラフィナに対して、冷酷にも時間は進み続け、結婚生活が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる