「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?

綾織季蝶

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番外編

リカルド・クロイツという男2

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「えぇ!?リカルド君、あいつの弟なの!?」

 しばらくして、カナリアとリカルドは学校の中庭のベンチに腰掛け、話をしていた。

「あいつって…兄上をご存知なんですか?」
「知ってるよ、魔法省の先輩だからね、一応」

 カナリアは何か嫌なことを思い出したのか、苦笑いをする。

「あいつの腕、折ったの私なんだ」
「そうなんですか!?」

 リカルドは驚く。
 カナリアはリカルドからしてみれば、華奢で、とても成人済み男性の腕を容易く折るようには見えなかったのだ。

(魔法で折ったのかな…)
「いや、あんなに容易く手で折れるとは思わなくて…」
(あ、違った)

 予想を大きく裏切られたリカルドは、話の方向を変えるために口を開く。

「どうしてそんな事になったんですか?」
「あいつがナーシャに“服従の呪い”をかけようとしたからだよ」
「あぁ…」

 リカルドはなんとも言えない声を上げる。
 兄の行動はもっともだった。
 何せバジリスクは危険飼育禁止魔法生物だ。
 危険を最小限まで抑えたかったのだろう、とリカルドは考えた。

「こんなに可愛いのに…酷くない?」

 カナリアはバジリスク、ナーシャの頭を優しく撫でる。
 その姿はまるで何処かの肖像画になっても可笑しくないレベルで美しかった。

「カ、カナリアさんは蛇語を話せるから大丈夫なんですよ…。僕らからしたら恐怖を感じてしまう…」
「一応、気には留めておくよ…」

 リカルドはカナリアと話していると、勉強から離れれている事に気づいた。
 勉強しか取り柄のない自分に新たな世界を見せてくれるカナリアに、彼は敬意を抱き始めていた。

「にしても、リカルド君は可愛いな~。あいつの弟だって信じられないよ!」
「うわっ!?」

 突然リカルドは不意を突かれたことにより、そのままカナリアに抱きつかれ、そのまま頭を撫でられる。

「ちょ、カナリアさん!」
「よしよし~」
「もぉ~!」

 リカルドはそのままカナリアが飽きるまで撫でられ続けた。



「え、えぇ!?兄上とカナリアさんが交際!?」

 その数カ月後、リカルドは2人が話してるところを見て違和感を持った。

(あれ?仲悪いはずなのに…)

 そんな事を考えていると、カナリアに呼び止められ、関係を暴露された。

(いつから全然気づかなかった。いやこの2人めちゃくちゃ仲悪かったよね!?けど見た感じかなり打ち解けてるみたいだし…)
「リカルド君大丈夫?…なんか思っていた反応と違う…」
「てっきり何か言われるものかと思ったが…」

 アワアワするリカルドは段々と落ち着いていき、やがて考える。

(あぁ。兄上に取られちゃうのか)

 リカルドは何処か納得するような心境だった。
 リカルド・クロイツはカナリア・スタインベックに惚れていた。
 劣等感しかない自分に踏み寄り、寄り添ってくれた彼女を深く愛したのだ。
 だが、それを暴露すればどうなるのか?
 きっと2人は困るだろ。
 だから、リカルドは。

「おめでとう、2人共。義姉上って呼んだほうが良い?カナリアさん」
「ちょ!気が早いって!」

 あえて口にするつもりはなかった。
 大切に育てた心を、想いを暴露する勇気などリカルドには無かったのだ。



(そして、本心を隠す為に始めた女装が、思いの外ハマっちゃったのよね~)

 リカルドはアルバムをテーブルに置き、紅茶に口をつける。
 それから間もなくして、リカルドは好奇心と意気消沈してたこともあり、女装に手を出した。
 始めは違和感があるだろうと思った彼。
 しかし、街に出てみれば違和感など無く、むしろ男性に声をかけられるほどに彼は女に扮していた。
 両親には勘当を言い渡される勢いで反対されたが、カナリアと意外にもロナルドは肯定してくれたのだ。

「お前の望むなら、すればいい」

 そう言われたリカルドは、初めて兄が自分を見ていてくれたと痛感した。
 そしていつしか女装は当たり前の日常と化していて、教鞭を執るようになったリカルドは校長にまで上り詰めた。
 その間、カナリアが失踪して荒れたロナルドをなだめたりしたし、暴走した時はストッパーにもなった。
 良くも悪くもカナリアのおかげで兄弟らしくなってる、とリカルドは常々思っていた

「所でリカルド、前から思っていたが…」
「ん?何?」
「どうして女装にハマったんだ?」
「ふっ…。愚問ね、そんなの決まってるじゃない」

 リカルドはとびっきりの笑みを浮かべる。

「可愛いのに磨かないのは、世界の損失だからよ!」
「…そうか」

 リカルドは隠し続ける。
 義姉に対する想いを、兄に対する劣等感を。
 例えそれが永遠だろうと、彼にとっては苦ではない。
 何故なら宿命だと割り切っているからだ。
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