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正義の正しさ編(最終章)
第63話 俺たちは、俺たちで魔王と戦う
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やがて、クロウはスキルを唱えるのを辞めて、おもむろに立ち上がった。そして、突き刺さった銀の剣を握って、それをゆっくりと引き抜く。
「……こいつが、シロウの武器か。なるほど、宝具なのに重たい」
全ての武器の適合者であるクロウは、当然ホーリーセイバーも持ち上げることが出来る。そして、それを背中に引っかけて踵を返すと、地獄の底へ向かって歩き出した。
「どこに、行くんだ?」
アオヤ君が訊く。
「シロウには出来なかった魔王討伐。それを達成することだけが、俺がこいつを超える唯一の証明になる」
「……キータさん」
言われ、俺はクロウを呼び止めた。
「待てよ」
「指図するな。それに、俺はもうアトムの扱いも覚えた」
「その先がある」
「……なに?」
「見つけたんだ。既存のスキルを覆す、唱えずに発動する方法を」
足を止めて、振り返った。
「それを、仮にイデアと呼ぶ。イデアは、言わば真の形だ。俺たちが普段見ている、時間的で不完全ではなく、感覚的で永遠不変の存在。世界の模範や、答えと言い換えてもいい。しかし、それがあるのは俺たちの知らない、そう遠くないどこかだ」
「だから、何だというんだよ」
「そのイデアのある世界には、当然俺たちの本当の意識が存在している。その意識に詠唱を任せる事で、こんな事が出来るようになる」
そして、俺はフラフレアを手のひらの上に灯した。
「……お前」
「天才のお前なら、出来るだろ。討伐にでも、役立てるがいいさ」
「どうして、そんな事を教えるんだ?教えなければ、お前だけが使える武器になるだろ」
「別に、俺は最強の称号に興味なんてない。魔王さえ倒せれば、それでいい」
そして、二人に声を掛けた。モモコちゃんは、シロウさんのシャツのボタンを千切って、ポケットに仕舞う。それを見て、アオヤ君はベルトのバックルを貰った。
「協力しろなんて言わない。俺たちは、俺たちで魔王と戦う」
追い越して行こうとすると、今度は俺たちが呼び止められた。
「こ、このアクセサリー。前に使ってたのより、更に強力なバフを得られるんだ」
「だから?」
「よ、四つあるんだ」
「だから何だよ」
「……持ってけよ。戦場で死なれたら、躓いて邪魔だ」
「そうか」
そして、俺はそれを受け取った。
「ありがとう、クロウ」
「死なれたら邪魔だと言ってるだろ」
そして、クロウも俺の隣に並んで歩き出す。
「ついてくるな、キータ」
「お前こそ、今までみたいに後ろから追っかけて来いよ」
「俺が追っていたのはシロウだ。お前なんて、眼中にあった事なんてない」
「黙れ。大体、お前にその剣は似合わない。髪型まで中途半端にあの人の真似しやがって」
「真似じゃない、邪魔だから切っただけだ」
それっきり、俺たちは一言も喋らなかった。だが、俺は出来るだけ全員に聞こえるように、次の作戦をアオヤ君とモモコちゃんに話す。まったく、俺も面倒な性格をしていると、自分で思う。
「……とうとう、着きましたね」
地獄の底の扉。この先に、魔王がいる。
「というか、この扉開けられるんでしょうか」
「バフを掛けて、四人で押そう。おい、クロウ」
少し離れて壁に寄りかかっていたヤツに声を掛ける。
「……なんで、ナチュラルに俺を呼ぶんだ?」
「どうせ、お前も一人じゃ開けられないだろ。ここくらいは協力しろ」
「指図するな。……クソ」
そして、俺はモモコちゃんに、アオヤ君とクロウは自分にバフを掛けて、ゆっくりと扉を開けた。
光が、差し込む。
「な、なんですか?これ」
「……分からない。こんなモノ、今までに見た事が無いよ」
部屋は、これまでの岩で出来たモノとは違う、どこまでも機能的で滑らかな壁と床。そして、足元と天井に火ではない光を使用した球体を設置して、部屋の中を照らしている。更に、部屋の中にはいくつかの長机が設置してあって、その上には図面やデータを記した紙。何が書いてあるのかは、よく分からなかった。
「キータさん、あの奥のヤツ」
「水槽、だね」
奥に進むと、更に不可思議なモノが設置してあった。ボタンの付いた機械と、それに繋がれたコード。反対側は、その水槽に繋がっている。そして、その中にあるモノは。
「脳みそ、だ」
呟いた瞬間、全方位から気配を感じた。弓を構えて見渡すと、本棚や二階に開けられた窓から銃を構えて、俺たちを取り囲んでいる。誘い込まれた、とは言いにくい。この状況は、予測している。既に、手は打ってある。
「そこに居らっしゃるのが、魔王様だ」
「……あんたは?」
「シャチョー、ブランド。現在、全ての悪魔の指揮を執っている、魔王軍の最高責任者」
ブランドは、三メートル程の身長に、他と同じ黒い体。長い爪、長い尾。均等の取れた、巨大な翼。そのどれもが洗練されていて、そして凶悪な形をしている。ただ、頭だけは羊のようで、しかし目は吊り上がり、角は太く捻じ曲がっていた。
「この場所は、一体何なんだ。お前たちは、なぜ地上を征服しようとしている」
「理由など、知れた事。それが、魔王様の願いだったからだ」
「……なに?」
「もうじき、地上の世界は滅びる。貴様らの使う、スキルによってな」
「……こいつが、シロウの武器か。なるほど、宝具なのに重たい」
全ての武器の適合者であるクロウは、当然ホーリーセイバーも持ち上げることが出来る。そして、それを背中に引っかけて踵を返すと、地獄の底へ向かって歩き出した。
「どこに、行くんだ?」
アオヤ君が訊く。
「シロウには出来なかった魔王討伐。それを達成することだけが、俺がこいつを超える唯一の証明になる」
「……キータさん」
言われ、俺はクロウを呼び止めた。
「待てよ」
「指図するな。それに、俺はもうアトムの扱いも覚えた」
「その先がある」
「……なに?」
「見つけたんだ。既存のスキルを覆す、唱えずに発動する方法を」
足を止めて、振り返った。
「それを、仮にイデアと呼ぶ。イデアは、言わば真の形だ。俺たちが普段見ている、時間的で不完全ではなく、感覚的で永遠不変の存在。世界の模範や、答えと言い換えてもいい。しかし、それがあるのは俺たちの知らない、そう遠くないどこかだ」
「だから、何だというんだよ」
「そのイデアのある世界には、当然俺たちの本当の意識が存在している。その意識に詠唱を任せる事で、こんな事が出来るようになる」
そして、俺はフラフレアを手のひらの上に灯した。
「……お前」
「天才のお前なら、出来るだろ。討伐にでも、役立てるがいいさ」
「どうして、そんな事を教えるんだ?教えなければ、お前だけが使える武器になるだろ」
「別に、俺は最強の称号に興味なんてない。魔王さえ倒せれば、それでいい」
そして、二人に声を掛けた。モモコちゃんは、シロウさんのシャツのボタンを千切って、ポケットに仕舞う。それを見て、アオヤ君はベルトのバックルを貰った。
「協力しろなんて言わない。俺たちは、俺たちで魔王と戦う」
追い越して行こうとすると、今度は俺たちが呼び止められた。
「こ、このアクセサリー。前に使ってたのより、更に強力なバフを得られるんだ」
「だから?」
「よ、四つあるんだ」
「だから何だよ」
「……持ってけよ。戦場で死なれたら、躓いて邪魔だ」
「そうか」
そして、俺はそれを受け取った。
「ありがとう、クロウ」
「死なれたら邪魔だと言ってるだろ」
そして、クロウも俺の隣に並んで歩き出す。
「ついてくるな、キータ」
「お前こそ、今までみたいに後ろから追っかけて来いよ」
「俺が追っていたのはシロウだ。お前なんて、眼中にあった事なんてない」
「黙れ。大体、お前にその剣は似合わない。髪型まで中途半端にあの人の真似しやがって」
「真似じゃない、邪魔だから切っただけだ」
それっきり、俺たちは一言も喋らなかった。だが、俺は出来るだけ全員に聞こえるように、次の作戦をアオヤ君とモモコちゃんに話す。まったく、俺も面倒な性格をしていると、自分で思う。
「……とうとう、着きましたね」
地獄の底の扉。この先に、魔王がいる。
「というか、この扉開けられるんでしょうか」
「バフを掛けて、四人で押そう。おい、クロウ」
少し離れて壁に寄りかかっていたヤツに声を掛ける。
「……なんで、ナチュラルに俺を呼ぶんだ?」
「どうせ、お前も一人じゃ開けられないだろ。ここくらいは協力しろ」
「指図するな。……クソ」
そして、俺はモモコちゃんに、アオヤ君とクロウは自分にバフを掛けて、ゆっくりと扉を開けた。
光が、差し込む。
「な、なんですか?これ」
「……分からない。こんなモノ、今までに見た事が無いよ」
部屋は、これまでの岩で出来たモノとは違う、どこまでも機能的で滑らかな壁と床。そして、足元と天井に火ではない光を使用した球体を設置して、部屋の中を照らしている。更に、部屋の中にはいくつかの長机が設置してあって、その上には図面やデータを記した紙。何が書いてあるのかは、よく分からなかった。
「キータさん、あの奥のヤツ」
「水槽、だね」
奥に進むと、更に不可思議なモノが設置してあった。ボタンの付いた機械と、それに繋がれたコード。反対側は、その水槽に繋がっている。そして、その中にあるモノは。
「脳みそ、だ」
呟いた瞬間、全方位から気配を感じた。弓を構えて見渡すと、本棚や二階に開けられた窓から銃を構えて、俺たちを取り囲んでいる。誘い込まれた、とは言いにくい。この状況は、予測している。既に、手は打ってある。
「そこに居らっしゃるのが、魔王様だ」
「……あんたは?」
「シャチョー、ブランド。現在、全ての悪魔の指揮を執っている、魔王軍の最高責任者」
ブランドは、三メートル程の身長に、他と同じ黒い体。長い爪、長い尾。均等の取れた、巨大な翼。そのどれもが洗練されていて、そして凶悪な形をしている。ただ、頭だけは羊のようで、しかし目は吊り上がり、角は太く捻じ曲がっていた。
「この場所は、一体何なんだ。お前たちは、なぜ地上を征服しようとしている」
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