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正義の正しさ編(最終章)
第65話 ファイナルバトル
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「勇者よりも、速いな」
「当たり前だ!」
斬って払った勢いで飛び、マントで身を隠して射線を切る。弾丸はボロいマントを更に穴だらけにしたが、それが翻った時にはもうクロウはいなかった。
「余計な事を……」
「フォローだ!アオヤ君の後ろ!」
バフを受けた体は、空中を蹴って背後を守る。そちらに目を奪われた瞬間、今度は空中で閃光を放つレベル3のスキル、スタンアローを放つ。モモコちゃんは、既に俺に目線を送っている。
「左舷!」
「セイクリッド……」
それは、失われた黒い炎と、アトムを手にしたことで極限を迎えた、彼女の究極の奥義。聖なる白い炎は、巨大な火球となって二階の窓を穿つ。
「見誤ったか!奥義など隙だらけの……」
「ブラフに決まってるだろ」
「へヴフレアッ!」
詠唱のフェイクに惑わされ、小部屋に放り込まれた火球に銃を構えた悪魔たちは一瞬だけ生気を失ったが。
「甘いッ!」
その炎は3人の悪魔の爪に切り裂かれ、散り散りになって部屋の中に飛び火する。白い炎は、書類に燃え移ると瞬く間に周囲を火の海に変えた。
「怯えるな!杖使いの奥義は一度使えば動けなくなる!」
小隊を率いる、ブチョークラスだろうか。その3人は陣形を整えるように指示を出すと、咆哮を上げてモモコちゃんへの攻撃を行う。
「……下らないな」
クロウとアオヤ君が、すぐにカバーに掛かる。しかし、その攻撃を受け止めさせることこそが、奴らの狙いだったようだ。
「今だ!射撃班は弓使いを潰すのだ!ブレインさえ無くなれば、奴らは烏合の衆だッ!」
一斉射撃。しかし、それより一手、俺の方が早かった。真上にヒールボムを投げて打ち抜き、頭を隠して即死を防ぐと、くらった傍から回復をしてその雨をやり過ごしたからだ。
「……貴様、本当に人間か?」
「どうだろうな」
振り返りざまに、シロウさんのソードオフを二発放った。しかし、これは攻撃をする為ではない。
「合図だ」
呟き、モモコちゃんが炎で壁を張る。それを回り込んで三体の悪魔は三人に迫った。
「これ、ホントに効果あるっすか?」
「当たり前だ」
斬りかかった刹那、バフを掛けてアオヤ君の速度を上げる。打ち上げるように交差して、槍を突き出したアオヤ君が静かに着地すると、その後に攻撃の音が聞こえて来た。
「バカ、な……」
それは、クロウのアクセサリーによって強化された事による、ディレイの賜物。ヤツらブチョークラスは、宝具の攻撃を正面から受け止める。ならば、受け止めさせずに致命の一撃にしてしまえばいい。胸を突き刺して薙いだ槍の傷は、二体の悪魔を滅ぼした。
「この俺から、目を逸らすな」
そして、残った一体の悪魔を、クロウが剣を叩きつけて足止めする。刹那、壁を蹴って飛んだアオヤ君が、背中から突き刺して命を奪った。
「まだだ。まだ、終われないッ!」
ブランドの奮起の声を聞いて、周囲の悪魔たちは再び銃を撃つ。しかし、開幕同様正面の驚異の無い状態で放ったとしても、俺たちには届かない。
「そう思っているな?だが、貴様は吾輩を忘れているッ!」
そして、耳を劈くような咆哮が部屋中に響き渡る。あまりの声に鼓膜が破裂したのが分かった。恐らく、三人も今同じ状況なのだろう。モモコちゃんは平衡感覚を失って、一瞬だけよろめいてしまってる。聴力を取りに来るとは、ヤツもとうとう切り札を切って来たって事か。
「……」
正面に向き直ると、ブランドは更に巨大な体躯を持つ姿へと変わっていた。吐息には紫電が混じり、羊の頭を破った顔は怒りに塗りつぶされて、眼光は赤く鋭く牙がむき出しになっている。周囲の壁には、衝撃で張り付いた白い炎。そして、その手にまとっているのは、モモコちゃんが嘗て見せたあの黒い炎だった。
そうか。今になって、あの黒い炎の正体が分かった。あれは、怨嗟だ。黒いイデアと言い換えてもいいかもしれない。それを燃やす事で、あの炎が生まれるんだ。
「なるほど、厄介だ」
呟いたが、その姿を恐れずに突っ込む青い風が一筋。風圧を伴った一本の槍は、正面から放たれた拳を受け止めたが、しかし力で押し負けて吹き飛ばされてしまう。
「……違う」
理解は、きっとアオヤ君の速度よりも遅かったが、彼にバフを掛けるイデアを生み出すのには間に合った。聞こえない音をまき散らしながら、悪魔が耳を塞いだ事で作られた一瞬の隙をついて、窓の上の小部屋を旋風で巻き込む。
「レッスン5。格上相手には、柔軟に戦うべし」
口の形で、そう呟いたのが分かった。きっと何度も、アオヤ君が戦いの中で自分に言い聞かせて来た言葉。あまりにも洗練されているその愚直さには、美しさすら覚える。
未だに、音は聞こえない。だが、これはチャンスだ。再び左舷に攻撃を仕掛けて、悪魔を駆逐する方が得策。その準備は、もう用意してある。
思考の瞬間、今度は白い炎が巻き上がる。そして、それを止めるブランドの拳をクロウが斬って落とした時、モモコちゃんは炎を天井目掛けて放った。
「合図、忘れてなかったんだね」
誘爆。シロウさんの弾丸に燃え移った弾丸は、一発目で天井を燃やし、二発めで窓を瓦礫で塞ぐ。それを見て残り一つのミレイの矢を放つと、モモコちゃんは一番小さな炎で先端を燃やし、着弾と同時に大爆発で状況を沈めた。
……後は、お前だけだ。
「当たり前だ!」
斬って払った勢いで飛び、マントで身を隠して射線を切る。弾丸はボロいマントを更に穴だらけにしたが、それが翻った時にはもうクロウはいなかった。
「余計な事を……」
「フォローだ!アオヤ君の後ろ!」
バフを受けた体は、空中を蹴って背後を守る。そちらに目を奪われた瞬間、今度は空中で閃光を放つレベル3のスキル、スタンアローを放つ。モモコちゃんは、既に俺に目線を送っている。
「左舷!」
「セイクリッド……」
それは、失われた黒い炎と、アトムを手にしたことで極限を迎えた、彼女の究極の奥義。聖なる白い炎は、巨大な火球となって二階の窓を穿つ。
「見誤ったか!奥義など隙だらけの……」
「ブラフに決まってるだろ」
「へヴフレアッ!」
詠唱のフェイクに惑わされ、小部屋に放り込まれた火球に銃を構えた悪魔たちは一瞬だけ生気を失ったが。
「甘いッ!」
その炎は3人の悪魔の爪に切り裂かれ、散り散りになって部屋の中に飛び火する。白い炎は、書類に燃え移ると瞬く間に周囲を火の海に変えた。
「怯えるな!杖使いの奥義は一度使えば動けなくなる!」
小隊を率いる、ブチョークラスだろうか。その3人は陣形を整えるように指示を出すと、咆哮を上げてモモコちゃんへの攻撃を行う。
「……下らないな」
クロウとアオヤ君が、すぐにカバーに掛かる。しかし、その攻撃を受け止めさせることこそが、奴らの狙いだったようだ。
「今だ!射撃班は弓使いを潰すのだ!ブレインさえ無くなれば、奴らは烏合の衆だッ!」
一斉射撃。しかし、それより一手、俺の方が早かった。真上にヒールボムを投げて打ち抜き、頭を隠して即死を防ぐと、くらった傍から回復をしてその雨をやり過ごしたからだ。
「……貴様、本当に人間か?」
「どうだろうな」
振り返りざまに、シロウさんのソードオフを二発放った。しかし、これは攻撃をする為ではない。
「合図だ」
呟き、モモコちゃんが炎で壁を張る。それを回り込んで三体の悪魔は三人に迫った。
「これ、ホントに効果あるっすか?」
「当たり前だ」
斬りかかった刹那、バフを掛けてアオヤ君の速度を上げる。打ち上げるように交差して、槍を突き出したアオヤ君が静かに着地すると、その後に攻撃の音が聞こえて来た。
「バカ、な……」
それは、クロウのアクセサリーによって強化された事による、ディレイの賜物。ヤツらブチョークラスは、宝具の攻撃を正面から受け止める。ならば、受け止めさせずに致命の一撃にしてしまえばいい。胸を突き刺して薙いだ槍の傷は、二体の悪魔を滅ぼした。
「この俺から、目を逸らすな」
そして、残った一体の悪魔を、クロウが剣を叩きつけて足止めする。刹那、壁を蹴って飛んだアオヤ君が、背中から突き刺して命を奪った。
「まだだ。まだ、終われないッ!」
ブランドの奮起の声を聞いて、周囲の悪魔たちは再び銃を撃つ。しかし、開幕同様正面の驚異の無い状態で放ったとしても、俺たちには届かない。
「そう思っているな?だが、貴様は吾輩を忘れているッ!」
そして、耳を劈くような咆哮が部屋中に響き渡る。あまりの声に鼓膜が破裂したのが分かった。恐らく、三人も今同じ状況なのだろう。モモコちゃんは平衡感覚を失って、一瞬だけよろめいてしまってる。聴力を取りに来るとは、ヤツもとうとう切り札を切って来たって事か。
「……」
正面に向き直ると、ブランドは更に巨大な体躯を持つ姿へと変わっていた。吐息には紫電が混じり、羊の頭を破った顔は怒りに塗りつぶされて、眼光は赤く鋭く牙がむき出しになっている。周囲の壁には、衝撃で張り付いた白い炎。そして、その手にまとっているのは、モモコちゃんが嘗て見せたあの黒い炎だった。
そうか。今になって、あの黒い炎の正体が分かった。あれは、怨嗟だ。黒いイデアと言い換えてもいいかもしれない。それを燃やす事で、あの炎が生まれるんだ。
「なるほど、厄介だ」
呟いたが、その姿を恐れずに突っ込む青い風が一筋。風圧を伴った一本の槍は、正面から放たれた拳を受け止めたが、しかし力で押し負けて吹き飛ばされてしまう。
「……違う」
理解は、きっとアオヤ君の速度よりも遅かったが、彼にバフを掛けるイデアを生み出すのには間に合った。聞こえない音をまき散らしながら、悪魔が耳を塞いだ事で作られた一瞬の隙をついて、窓の上の小部屋を旋風で巻き込む。
「レッスン5。格上相手には、柔軟に戦うべし」
口の形で、そう呟いたのが分かった。きっと何度も、アオヤ君が戦いの中で自分に言い聞かせて来た言葉。あまりにも洗練されているその愚直さには、美しさすら覚える。
未だに、音は聞こえない。だが、これはチャンスだ。再び左舷に攻撃を仕掛けて、悪魔を駆逐する方が得策。その準備は、もう用意してある。
思考の瞬間、今度は白い炎が巻き上がる。そして、それを止めるブランドの拳をクロウが斬って落とした時、モモコちゃんは炎を天井目掛けて放った。
「合図、忘れてなかったんだね」
誘爆。シロウさんの弾丸に燃え移った弾丸は、一発目で天井を燃やし、二発めで窓を瓦礫で塞ぐ。それを見て残り一つのミレイの矢を放つと、モモコちゃんは一番小さな炎で先端を燃やし、着弾と同時に大爆発で状況を沈めた。
……後は、お前だけだ。
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