こいちゃ![R-18]

蒼い色鉛筆

文字の大きさ
上 下
33 / 200
②更新停止中です。お手数ですが近況ボードをご確認ください。

夏が恋した冬に 中編

しおりを挟む
「ごほっ、左藤さとう、昨日も事前に確認したが
もうチャンスはないぞ?ごほごほっ、
脅したくはないが…優沢ゆさわと取引出来ないなら
お前はここに残れないからな?」

昨日怒鳴りすぎて声がカスカスになっている
課長がデスクに腰掛け念入りに確認する。
その正面に立つ燃夏もかはきびきび答えた。

「はい!分かっています!
今度は不備なく…完璧にやります!」

暗に解雇宣言クビを暗示されたのにいつになく
毅然とした態度で燃えている俺に課長含め
先輩たちは目を丸くした。

「ぁあ、それじゃぁ…電話だ。掛けなさい。
私はこんな声…ゲホッ、ゲホだからお前が
もう一度取引の日程を取り付けるんだ。
昨日の謝罪を忘れるなよ、ウェッホン。」

「はい!」

眉に力を入れてデスクの正面に姿勢を正し
着席して慎重に受話器を取る。
取引先の会社の電話番号を入力…っと。
んんっ、と喉の調子を整えて待つ。

prrrr…カチャッ

「はい、ーーーのタカハシです。」

「お世話になっております、ワタクシーー」

仲介を挟んで、優沢さんと電話が
繋がるのをしばらく待った。

心音がうるさい…すごく緊張してる。
もしかしたら一日経ってストーカー野郎とは
話したくないだなんて思われているかも。

いや、それよりもお茶をかけて火傷させた
ことを普通に怒っているかもしれない…。
やばい不安になってきた…声裏返るかも。

一瞬さえも悠久に感じてしまい緊張に
そわそわ膝を揺らしていると…

プッ

「ーーー、はい、優沢です。」

「…っ!!」

やば…っ電話越しだと、耳元で囁かれる
みたいで…!えっろ…!って、ばか!俺!
今は煩悩は捨てるんだ!

聞こえないように深呼吸をして、続けた。

「ーーーです。優沢さん、昨日はご迷惑を
お掛けしました…。左藤です。」

「…はい、覚えていますよ。
昨日の取引のお話でしょうか…。」

「はい、僕の…私の無礼な行動について
大変失礼しました…。お怪我は大丈夫で
しょうか。本当に…申し訳ありません。
その上で恐縮ですがその、次の商品紹介の
ご説明はいつに…。」

慎重に、慎重に言葉を選ぶんだ。
背後の課長が心配で音もなく悶えている。
冷や汗が頬を伝っていくのを感じるが
静かに彼の言葉を待つ…。

受話器越しにパラパラっと紙のめくれる音。
それから小さな吐息が聞こえた。

タバコ…吸ってるのかな。
彼のタバコを吸うセクシーな姿を想像する。
お茶やタバコが好きなんだな…。
彼のことを一つでも知ると、空いた胸の間が
埋まって暖かくて心地良い。

すると、ふと思い出す。昨日彼が言っていた
「海って呼ばれる方が好きなんですよ。」
…という言葉。

「そうですね、明後日の14時は
どうですか?都合に合いますか?」

「!」

彼の声に現実に引き戻された。
あっさりと、取引の日付が決まった。
後にも先にもあんな所業して許して
くれるのはこの人ただ一人だと思う。

しかしこの時は全力で浮かれていた。
嬉しい、また会えるなんて…!

「はい、…はいっ!よろしくお願いします!
ありがとうございます!…失礼します。」

「それでは…」

「ありがとう、海さん。」

言うなり速攻受話器を置いて、電話を切る。
ドッドッ、と鼓動が早まっている。

最後に…言ってしまった…!
彼の特別な呼び名。
彼が好きな俺だけの呼び方…!
ウキウキワクワクして最高の気分だ!
ついニヤニヤ笑ってしまう。

笑顔で課長の方を振り返ると、彼は
安堵のため息をついて10歳くらい老けてた。
それから額の汗を拭い、鋭い目付きで
人差し指を立てて俺に向ける。
お説教モードだ。

「いいか左藤、事前に言っていたが…。」

「はいっ!失礼のないように、ですね!
俺…俺、やります!絶対…っ取引を成功
させますから!チャンスをくださり
ありがとうございます!課長!!」

すかさず答えると課長は面食らった様子だ。

「…ぁあ。皆、左藤のサポート頼んだぞ。」

たっぷり色々な汗をかいた課長は
疲れた様子で自分のデスクにゆっくり座る。

「大丈夫?左藤くん。お姉さんが…」

「ありがとうございます、田中先輩。
大丈夫です!俺、俺頑張りますから!」

不自然に肩を撫でる先輩を言葉で払いのけた。

限界はあるが、自分で出来ることは
なんでも自分でやらなきゃいけないんだ。
他の仕事もこなしつつ取引の資料を集め
小声で音読して暗記する。
自宅に帰ったら資料の不備を点検して
予想される質問の答えを予想して練習。

仕事帰りにお茶の専門店に足を運んで
時間をかけて選んだお茶を淹れてみる。
一口飲んでみるとすごく不思議な味がした。

うん、俺はお茶に詳しくないしむしろ猫舌
なんだけど、すごく飲みやすくて
コクのある紅茶が用意できて、満足だ。

茶の味なんて気にしたことなかったけど
彼が好きだと思うとすごく興味が湧いた。
でも他に好きなものが分からなかったら…
無難な高級菓子を自腹で買う。安いもんだ。

しかし仕事で手一杯なのに夜中を過ぎて
優沢さんの声や、言葉を思い出すと…
ものすごくムラムラする。

「んっ、ん、はっ…っ!」

机の資料の前で自慰を繰り返し
頭の中で優沢さんをいっぱい犯す。

絡み合う二人の体。
優沢さんは俺の肩に腕を回して色っぽく
耳元で甘い吐息を漏らす。
「はぁ♡はぁ♡きもちぃ…♡左藤くんので
お腹いっぱい…イッちゃいそう♡」
耳元で卑猥な言葉を囁かれる。
あの電話と同じ声で、いやらしい。

「あん♡あん♡ぁあん♡」腰を振ると
それに合わせて優沢さんの唇から
とてもえっちな声が零れてしまう。
色んな角度で彼を追い詰めて高ぶらせる。
何度もキスをして、体を抱きしめる。

優沢さんが艶かしく俺の背中に足を
絡ませて、腰を引き寄せて…
「中に出して♡私の中でイッて♡」
甘い声ではしたなくおねだりをされ
絶頂しながら後孔をキツく締められる。
望み通りに優沢さんの中で…!
…とはならず、自分の手の平に吐き出す。

「くっ…!!はっ、ふっ…はぁー…っ。」

椅子にもたれて絶頂の余韻に浸った。
意識が戻り次第、資料に取りかかる。
それを繰り返し…



そうして今日の午後、優沢さんと取引する。
妄想で何度もえっちした相手に会うのは
かなり気まずい…。が、それ以上に
会えることが楽しみでたまらない。
盛り上がりはまるでデートの気分だ。

「左藤、やれるな?」

「はい、自分の責任をしっかり果たします。」

「うむ。いい目になったぞ。」

柔らかい視線で微笑む課長から上機嫌に
二の腕をばしばし叩かれる。
パソコンのスクリーンに映る自分を見た。

「…?」

課長が言うような変化は分からないが…
すごく楽しみで、充足感はある。
今の目的はオトナになって認められたい
ことだけではない。
優沢さんに認めて欲しいんだ。

前回はひどいことをしてしまった。
自分の実力で、努力で今度こそ…
俺は、やるんだ。

受付から電話がけたたましく鳴る。
もうすぐ優沢さんがここに来ると知らせる。
深呼吸をして…目を閉じて…ゆっくり開けた。

大丈夫、今は大丈夫だから。




つづきます→
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

氷の公爵はお人形がお気に入り~少女は公爵の溺愛に気づかない~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:532pt お気に入り:1,595

孤独な王弟は初めての愛を救済の聖者に注がれる

BL / 完結 24h.ポイント:1,251pt お気に入り:690

度を越えたシスコン共は花嫁をチェンジする

恋愛 / 完結 24h.ポイント:717pt お気に入り:1,943

俺の魔力は甘いらしい

BL / 完結 24h.ポイント:804pt お気に入り:161

神官にはなりたくないので幼馴染の公爵様と下剋上します

BL / 連載中 24h.ポイント:85pt お気に入り:6

【完結】元婚約者は可愛いだけの妹に、もう飽きたらしい

恋愛 / 完結 24h.ポイント:624pt お気に入り:7,771

【祝福の御子】黄金の瞳の王子が望むのは

BL / 完結 24h.ポイント:830pt お気に入り:976

ドスケベ団地妻♂に食われる初心な宅配員くんの話

BL / 完結 24h.ポイント:1,952pt お気に入り:28

処理中です...