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快楽調教12

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今回中々お館様から声が掛からなかったので
藍乃介のことを忘れたのかと肝を冷やした。

恋する娘のようにはんなり月を眺める日々。
時々…隣にシロと肩を並べた。

しかし何の偶然か、幸いなことに
シロに肌を噛まないよう言って少ししてから
逢瀬の約束の日にちが決まったのだ。
お逢いする時までに歯形は消えるだろう。
ギリギリだったのか…。
そういう意味でも胸が冷やっとした。

だが、それ以上に期待に口角が弛む。
ようやく初めてお館様に抱かれるのか…!
そう思うと心がウキウキしてきた。

最近、床の技が上手くなってきたと
シロは沢山褒めてくれる。
俺は人に褒められることに弱いようだ。
あとぎゅーっと抱きしめられたり、
撫でられたりすると体の力が抜けてしまう。

シロ相手にそうやって蕩けるなら
お館様に同じようにされたらどうなるのか。
体がふやふやになって胸が幸せいっぱいに
なってしまうかも…すごく楽しみだ。

彼の人と逢う日が近いこともあって
調教師の店には足を運ばなくなった。

気を許したらまた肌を噛まれそうで…
というか俺が体を許してしまいそうで。
男が初めての体ではないがお館様との初夜
直前に男に抱かれるのは色々気まずい。

なので火照った体を独り持て余すが緊張で
胸いっぱいで、自慰することも出来ず
どんな風に愛して貰えるのかと妄想しては
布団に顔を突っ込み足をばたつかせた。

シロに会えないというのは少し不安になるし
寂しい…気もするが、それ以上に俺の心は
お館様でいっぱいに満たされている。

早く夜にならないかな、
逢瀬の日が来ないかな。
待ちきれない子供のように毎日過ごした。

俺には幸せな未来しか見えていなかった。

ようやくやって来た逢瀬の日。
たった数日だが苔が生えるかと思ったぞ!
月は上りきっていないが気分はもう待てない!
鉛玉のように家から飛び出した。

闇夜に紛れて足早に門を潜り、お目付け役の
監視をすり抜けて城の離れを目指す。
小さい頃からやっているので慣れたものだ。
こっそり顔を上げて離れの方を見るが…

「あっ…。」

そ、そうだよな、俺が早すぎた。

まだ予定の時間じゃないのだから
離れに明かりがないことは仕方ない。
はしゃぎすぎたことを反省した。
軒下に正座して主人を待つ。
上手く隠れているので見つかる心配はない。

一人を実感すると緊張する…!
上手く出来るだろうか、とか不安になる。
さわさわ手の甲を擦って心を落ち着かせる。

だ、大丈夫…食べ物も喉を通らなかったし
腹の中も空っぽに洗い流した。
前回以上に体もピカピカに洗った。
お館様に抱かれる準備は完璧でございます!
武人らしくしゃんと背を伸ばして座る。

そわそわ足先を揺らしながらしばらく待つ。

「ふふ……。」

かなり待つ。

「………。」

ずっと待つ。

「………。」

寂しくなってきた…。
上りきった白い月をぼんやり眺めて
逢瀬の日付を間違えたかな?なんて思う。
冷える体を小さく縮こまって暖める。

帰ろうにも帰れずぽつんと待つ。
しばらくして、遠くにゆらり明かりが見えた。
お館様だ…!

裾の砂埃をいそいそ払い、立ち上がる。
にこにこ笑顔で主をお迎えした。

「良い夜ですね、お館様。」

「おお、そうだな。」

穏やかな笑みのお館様の持つ灯りを
代わりに受け取り、離れの戸を開ける。
横切る時に仄かに酒の香りを感じた。

行灯に火を灯し、戸を閉めたことを確認。
そして御前に膝をついて頭を下げた。
上座に座ったお館様はふう、と息を吐いた。

「面を上げよ。」

「はい。…み空丸様。」

お館様の頬はぽってりと明るい。
経緯を上機嫌に話して下さった。

「いい酒を貰ってな。中々宴が盛り上がって
誰も離してくれなんだ、参った参った。」

楽しそうに大きな声で笑っておられた。

「左様でございましたか。かたじけない。
その…宴の最中藍乃介の元へ来て下さって…
本当にありがとうございます。」

「構わんよ。さっきまで寝てたからな。」

「あ、そ、そうだったのですね。」

宴が終わって、休まれてからいらしたのか。
それなら少し遅くなった理由は分かる。
分かるけど…胸の奥がちくりと痛んだ。

「隣のお園が起こしてくれなかったら
朝まで寝てるところだった!まだ床の技は
不慣れだがよく出来た女だ。は、は、は!」

「あ、あはは。」

お館様は女人にも人気なのだから
ただの男の俺が嫉妬しても仕方ない。
子供じみたワガママを堪え、微笑み返す。
するとお館様は神妙な顔を向けた。

「それで…どうなんだ?前回はお前が
使えぬと申したから期間を開けてみたが、
さすがに今回は大丈夫だろうな?」

「はっ。お気遣い痛み入ります。
仰る通り此度は大丈夫でございます。」

「おおそうか、では早速やって見せよ。」

「は、はいっ…。」

来た…早速だ!
覚悟は完璧ではないがそう言ってられない。

二人で同じ褥に上がる。
それは二度目だが緊張した。
今回は「本番」なんだから…っ!
布団の上に膝をついて期待にはち切れそうな
胸の襟元を緩め、帯をほどいてから気づく。

「あっ…!」

忘れてた…!

「ん?どうしたのだ?」

眉をひそめたお館様は不機嫌そうだ。

「い、いえ。なんでもございません。」

取り繕った笑顔で対応するが内心焦った。
後ろを慣らすための油を忘れたのだ。
浮かれすぎて家に置いてきた。
身の回りに代用出来そうなものはないし
それを取りに帰るなど言語道断だ。

未だにシロのモノも慣らさないととても
挿いらないのだが…どうにかするしかない。
幸い昨日はをしていた。

シロがしてくれたようになぞらえてみよう。
想像して心を落ち着けた。

「んぐっ…。」

早速指を喉奥に突っ込んで唾液を塗り込む。
同時に袴を脱いで腿を露にした。

「んむぐ…ぷは、はぁ…、ん、う。」

十分浸したら下着を降ろし、後孔に当てる。

「おおなるほど。男は後ろを慣らすのか。」

「さ、左様でございますっ…んっ…♡」

なんてはしたない…!
お館様の御前で自らの指で尻を解して、
ご立派なモノを挿入される妄想をするなんて
…だけど興奮する。

「あ、あっ♡はぁ…は、んっ…。」

孔の浅い部分を弄ると気持ちいい。
しかし自分では快楽のツボには届かない。

シロが居てくれていれば意地悪な微笑みを
浮かべてじっと見つめ、俺の指を導いて
気持ちいいところに当ててくれる。
「ここがあなたの牝のしこりですよ♡」
なんて言葉責めも交えて辱しめるのに…
いや、今は自分の力でなんとかするんだ!

指が滑る限り、粘膜を十分に拡げる。
お館様のイチモツは本当に大きいのだから。

「面白い、面白い。感じているのか?」

「は、い…♡お館様の寵愛を…想像して…
孔を弄っております…♡ん、ふっ…♡」

「ほほう。そうか。だがそうして
いつまでも儂を焦らすつもりか?」

「い、いえっ、すみません…。」

低い声にはっと我に返り、急ぎ謝った。

「はは冗談だ。気の済むまでやりなさい。」

「……っ。」

お館様は優しいからそう仰って下さるが、
気の小さい俺は気が気じゃない。
興味をなくされたらどうしよう。
もういらないなんて言われたらどうしよう…。

多分十分だ、大丈夫、大丈夫。
根拠のない自信を言い聞かせ
主人の前にその身を屈めた。
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