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番外編 ⑪ (デウルサン国)16歳

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    私達は南に下り【デウルサン国】へお昼頃に着いた。が、ここは空気も悪いし異臭がしている。

    この臭いは数年前に嗅いだことある臭い、それは死臭だ。

    最後の場所、ここへ来る前に覚悟をしていた。何故なら私は神獣の主だから。

    私は神獣のスオウと女神様の眷属のマロンと共に神獣剣で戦わないといけないことが、神獣の古記にも記されている。

    神獣であるスオウは世界最強だが、そのスオウと女神の眷属のマロンでも倒せない相手がいる。だから私が神獣剣で体を貫かないと勝てない相手だ。

    その凶悪な相手はデウルサン国の国王陛下で、元は人間だったが地下の一室で人間から動物、魔物やモンスターを鎖で身動きができないように縛り付け、国王陛下は酷い拷問を笑いながら命が尽きるまで自ら行っていた。

    その拷問という名の国王陛下の趣向が赤ちゃんからお年寄り、小動物から大型動物、弱い魔物から強くて巨大なモンスターまでいたぶり、苦痛に歪む顔や姿を見ているのが快感だったらしいが、そこで事件が起こった。

    命を奪われたモノタチからの怨みが国王陛下へ集中し、邪気が膨大に増し、邪鬼から悪鬼と化したのは、命を奪ったモノ達の血肉を料理させ、それを喰らっていたからだ。

    その悪鬼を神獣剣でとどめを刺すことが私の使命だ!

    この話をスオウから聞いたルーク様とパパやママは反対をして渋っていたが、神獣の主の使命で、これが終わらない限り世界は不安定のままで最悪破滅すると聞かされ、16歳の成人したルナの手助けすることだけは自由だと聞いたルーク様とパパ、ママは納得してくれた。

『マロン、アレをギルドとエメルロ侯爵本家、王宮の3ヵ所に置いて来たのか?』

『置いてきたよ。ギルドにはドルバルに渡し、エメルロ侯爵本家にはクリスに、王宮には国王陛下に渡したよ。

    最終戦の際に、ルナがデウルサン王にトドメを刺す勇気を出す為に、皆で声援を送ってほしいことを伝えて来たよ!』

    ドヤ顔して話すマロンに褒め言葉をかけるスオウ。そっかぁ、デウルサン王と戦う時に皆の顔が見れるし話せるんだ。そこだけは楽しみだけど、戦いは真剣に頑張らなきゃだ!

「あれ?  神獣剣が前より長くなってる。

    もしかして、私の身体が成長したからなのかな?」

『うむ、成長した身体に合わせて剣も成長している。

    主よ、ワレの話を聞いてくれ。

    500年前……ワレの主が亡くなり力を出すことが出来ず、デウルサン王に深手を負わされ空間移動を試みたが、時空かま裂けルナがいる世界へ落ち主と出会った。

    デウルサン王はワレやマロンの攻撃では消滅しない。ルナが持っている神獣剣でないと倒せないし消滅しない。

    ワレも全力で戦うが、ルナも全力を出すんだぞ!  例えワレが戦闘不能になろうとも前に進め!

    いいな?』

    両手をギュッと拳にして、力強く頷き答えた。

「うん。わかった!!」

『では行くぞ!』


    不思議な感覚が身体中を巡ってきた。それは、会いたかったスリチア国にいる皆からの声援だった。

「クソ魔王を倒して、貴女をギュッと抱きしめさせて!  ルナ、頑張って!!」
    
    うん、ローラン。

「皆のお姫様、俺らがバックにいる。だから、おもいっきり神獣剣で貫け!」

    レン。うん、神獣剣で貫くよ!

「ルルナ。いざとなったらテオルを盾にしなさい!  そして、頑張れ!!」

    ライラ。パパを盾にすることは出来ないけど、頑張るよ!

「ルナ、綺麗になったな。いいか、相手の動きをよく見て神獣剣で貫け!  俺らはここで見て応援してるからな!」

    ドルバル。うん、むやみやたらに神獣剣を振らないよ。アドバイスをありがとう!

「可愛いルルナ。貴女は誰よりも強いわ!  私達の分までぶん殴って!!」

    ドリアン。分かった、みんなの分までぶん殴っとくよ!!

「ツラい旅も今日の戦いで終わりだな。俺達はルナ達の帰りを待ってる。だからよ、その神獣剣で終わらせてやれ!!」

    レイブン……そうだね。この神獣剣で幕を引いてあげないとね。

「ルナたん。長い旅の中でツラいことがあっただろう。そんな旅も今日で終わりだ!  神獣の主としての使命を全うし、笑顔で帰ってきてくれ!」

    はい、お爺様!!

「ルナたん。誰1人欠けることなく無事に帰って来てくれることを祈っているわ!!」

    お祖母様。ありがとうございます。

「ルナ。エメルロ侯爵としての使命……その戦いが終わったら、笑顔で帰って来てくれ!」

    おじ様。必ず帰還します!!

「ルナ。この数年間辛かったでしょ?  でもね、その経験があったからこそ家族の絆が強くなってるわ。それを励みに使命を頑張りなさい!  こんな言葉の声援で許してね。終わったら成長したルナを抱かせてね!」

    おば様。励みになる言葉をありがとうございます。

「ルルナとルナ。参戦できない俺を許しておくれ。でも、みんなでルナの戦いを見守りながら応援するから頑張るんだぞ!!」

    ジェイ兄様。はい、私頑張ります!!

「ルナ、君には今まで辛いことを背負わせてしまってすまない。その戦いが終われば何もしなくていい。後処理は我ら大人が引き受ける。だから、そのクソ魔王をぶっ飛ばして来い!!」

    はい、ありがとうございます!  ベル叔父様。

「ルルナよ。この世界を滅ぼす魔王との戦いをそなたに任せてしまうこと、誠に申し訳ない。この戦いが終わり、ルルナが帰還したら……国中で宴をしようではないか!  ルナ、ルルナ。頑張るのだぞ!!」

    国王陛下。はい、ありがとうございます。宴を楽しみに頑張ります!!

「ルルナ。帰還したら一緒にお茶をしましょう。この戦いでは貴女に負担が大きいことは承知です。ですが、わたくし達もスリチアで応援していますわ!!」

    王妃様。はい、帰還したあとのお茶を楽しみに頑張ります!!

「ルルナ……デウルサン王なんか、ちゃちゃっと倒して帰って来い!  ライアンならそう言うよ。俺も同じように思っている。頑張れルナ!!」

    ありがとうございます。お兄様の声援とディオン殿下の声援しかと受け止めました。

「ルルナ……わたくし、泣かない!  ルルナが無事に帰って来てくれるまで泣かないわ。……ここで、皆様と応援しています。なので、使命が終わったら帰ってきてくださいまし!」

    リミレニー王女様、必ず帰るので泣かないでくださいね。応援ありがとうございます!

    皆からの声援を受け取った私の身体に変化が起きた。それは、負けない力と臆することない勇気だ。

    前を向き、目を閉じ深呼吸したあと目を開き、皆に言葉を送った。

「皆様、力ある声援ありがとうございます。わたくしは、デウルサン王を討伐し抹消したのを見届けたあと家族4人とスオウ、マロンとで帰ります!」

    後ろではワーワーと応援してくれてる声が聞こえている。

『この部屋にヤツはいる。開けるぞ!』

「うん!!」

    扉を開いた瞬間、炎の矢が何十本単位で射ってきたが。

防壁バリヤ!!  氷の渦アイス・トルネード!!」

    デウルサン王こと魔王からの攻撃をバリヤで防ぎ。魔王の体を囲むようにして氷の渦で攻撃した。

    が、ひるませることしか出来なかった。

    その隙に、パパの大剣とルーク様の長剣で魔王の体を貫いたが、直ぐにそのキズが塞がってしまった。が、魔王の鋭い爪で体を貫かれたパパとルーク様。

「ぐはあぉぁぁっ!!」

「がはあぁぁぁっっ!!」

    パパとルーク様は貫かれた胸とお腹を押さえ、吐血して倒れた。流れる血からは紫の血?  じゃない、毒だ!!

「パパ!!  ルーク様!!

    やだっ!

(パチンッッ!!  怯むな私!!)

    あっ!  空間ボックス!!」

    気合を入れる為に両頬を強く叩いたあと、2人を急いで空間ボックスへ入れた。危機一髪だ。この中でなら、解毒され傷も癒される。

    が、残酷な光景を目の当たりにしたママは錯乱し絶叫した。

「いやあぁぁぁっ!!

    テオル!  テオルーーッッ!!」

    膝から崩れ落ち、座り込むママを落ち着かせたあと、強力な防壁で囲み。憎き魔王を絶対に許さない!!

「ママ、パパとルーク様はこの空間ボックスで治癒されているから無事だよ。だから安心して!!」

「本当に?

    ……スンスン……テオルもこんな気持ちだったのよね。ルナが大丈夫って言うなら信じるわ!

    あのクソ魔王を倒してしまいなさい!!」

    私は大きく頷いた。

氷の防壁アイス・バリヤ!  風の防壁ウインド・バリヤ!!」

   私はママに笑顔で頷き返し、憎き魔王をキッと睨んだ!

風の刃ウインド・カッター!!

    水の球ウォーター・ボール!!

    氷の槍アイス・ランス!!」

『ルナ、マロンの方へ!』

「分かった!」

    スオウから飛び降り、マロンへと飛び乗った。

『よくもワレの大切な者達を……許さん!  万死に値する!!』

「ぐがぁ……ぐふっ…ぐっ、この魔王であるワシに歯向かうというのかぁぁぁぁ!!」

『黙れ!  その減らず口を閉じていろ!!』

    スオウは鋭い牙と爪、猛毒の三本の尻尾で四方八方から攻撃をし、魔王に隙ができるよう仕向けた。

「ぐががががっっ!!

    ぐあ"あ"ぁぁぁぁぁ……がはっ…ぐっ、ぐっ、ぐっ、ぐっ……があ"あ"あ"ぁぁぁ!!」

『ルナ、ボクに掴まっててよ!

    行くよっっ!!』

    マロンは天井まで飛び、勢いよく魔王目掛けて急降下し、鋭い嘴を心臓近くを貫いた。

「ぐがあ"ぁぁぁあぁぁぁ!!」

    魔王の隙が出来た!!

「「「「ルナ!  今よ!!」」」」

「「「「今が好機だ!  心の臓を貫け!!」」」」

「「「「ルナ、行けえぇぇ!!」」」」

    私は大きく頷き、キラリと光る神獣剣で禍々しく瘴気が出ている心臓を貫いた。すると、音を立てて心臓……魔石が割れ、デウルサン王の体は灰になり崩れ戦いは終わった。

「お……終わったの?」

『ルナ、よく頑張ったな!  神獣の主の使命は終わりだ』

『ルナ。偉い!  ライアンも喜んでるよ』

    空間ボックスに入れていたパパとルーク様を出すと、パパに抱きしめられ。

「よく、よく頑張ったな!  さすがは俺の自慢の娘だ!!」

    後ろからはルーク様に抱きしめられ、髪の上からキスを落とした。

「ルナ、頑張ったね。俺のルナは世界一だ!!」

    パパの胸に飛び込んだママは泣いて離さなかった。

    私は皆に笑顔で「ありがとう!」と伝えた。
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