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第一章
2.夢の続き
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柔らかい布団に包まっていたさくらは、あまりの気持ち良さにまだ目を覚ましたくなかった。
――今日は日曜日のはずだ。まだ寝ていよう。
さくらはゴロンと寝返りを打った。
部屋の中には燦々と朝日が差し込み、梅雨の朝とは思えない。昨日がこのくらいのお天気ったら良かったのにとさくらは布団に潜り込みながら思った。そうすればあんな陰気な思いもしなかったはずだ。さくらは昨日の映画館前での屈辱を思い出した。そして気を取り直すかのように、もう一度寝返りを打った。
(それにしても、変な夢を見たな。とても怖い夢だった・・・)
さくらはまだ眠いぼんやりした頭で、その不気味な夢を思い返す。映画館の前で気を失った後に見た夢だ。
映画館の前で気を失う・・・? なぜ気を失ったのだっけ?
さくらは徐々に眠気が覚めてきた。気を失った後、どうやって家に帰ってきたのだろう・・・。さくらはまったく記憶がない。
しかし、あることに気が付いてゾッとした。寝返りを二回も打っているのだ。しかも同じ方向に。自分のベッドは二段ベッドでそんなことは不可能だ。二回目には確実に柵を乗り越えて床に叩きつけられている。それなのにこのベッドは、あと半回転はできそうなゆとりがある。
さくらは完全に目を覚まし、潜っている布団から出ることが恐ろしくなった。
(一体、何が起こったの??)
さくらは暫く布団に潜った状態のまま動けないでいた。もしもここが自分の部屋でなかったらあの悪夢は現実だ。もはやこのベッドが自分のものではないこと明らかだったが、この目で周りを確かめることで現実と認めてしまうのが怖かった。だからといって、いつまでもそのままでいるわけにもいかない。さくらは意を決して布団から顔を出し、恐る恐る辺りを見回した。
そこは昨日とはまったく違い、明るい部屋だった。
とても広く、横一面に大きなバルコニーがあり、そこから日の光が燦々と降り注いでいる。部屋の中央には寛ぐ場所だろうか、美しい絨毯が敷いてあり、丈の低い小さいが美しい装飾が施されているテーブルと、同じように美しい長椅子が置いてある。部屋の奥には大きな楕円のテーブルがあり、その上に花と果物が溢れんばかりに飾ってあった。さくらは自分のいるベッドを見上げると、それは天蓋付きのとても大きなベッドだった。
さくらは呆然とした。ここは一体何処なのだろう? まるでお姫様のお部屋ではないか。
さくらはフラつきながらベッドから降りると、改めてゆっくり部屋を眺めた。まだ夢を見ているのだろうか? そうだとしたら、さっきの夢よりはずっといい。こんなに気持ちのいい部屋は初めてだ。
さくらはうーんと伸びをした時、部屋の片隅に、自分のブーツとバッグか並んで置かれているのが目に入った。あれは映画館に行った時に身に着けていたものだ。再び、さくらは不安に襲われた。やはり夢ではなく現実なのではないだろうか。その時、ベルの音が鳴り、さくらは飛び上がった。
ベルの音はこの部屋の呼び鈴だった。音が鳴った後、一呼吸置き、二人の女性が入ってきた。一人は年配の女性で、もう一人はさくらと同じくらいの年齢と思われる若い女性だった。二人ともお揃いの紺色のくるぶし丈まであるドレスを身に着けている。どこかヨーロッパの中世を思わせる、胸下で切り返しのあるスタイルだ。さくらは不安げに二人を見つめ、そのまま崩れるようにベッドに腰掛けた。
年配の女性が怯えるさくらを気遣うように、とても優しげな笑みを浮かべて挨拶をした。
「お目にかかれてたいへん光栄でございます。さくら様。私はルノー、そしてこちらに居ります者はテナーと申します。本日より私どもがさくら様の身の回りのお世話をさせて頂くこととなりました」
そう言うと、二人揃って深々と頭を下げた。
――今日は日曜日のはずだ。まだ寝ていよう。
さくらはゴロンと寝返りを打った。
部屋の中には燦々と朝日が差し込み、梅雨の朝とは思えない。昨日がこのくらいのお天気ったら良かったのにとさくらは布団に潜り込みながら思った。そうすればあんな陰気な思いもしなかったはずだ。さくらは昨日の映画館前での屈辱を思い出した。そして気を取り直すかのように、もう一度寝返りを打った。
(それにしても、変な夢を見たな。とても怖い夢だった・・・)
さくらはまだ眠いぼんやりした頭で、その不気味な夢を思い返す。映画館の前で気を失った後に見た夢だ。
映画館の前で気を失う・・・? なぜ気を失ったのだっけ?
さくらは徐々に眠気が覚めてきた。気を失った後、どうやって家に帰ってきたのだろう・・・。さくらはまったく記憶がない。
しかし、あることに気が付いてゾッとした。寝返りを二回も打っているのだ。しかも同じ方向に。自分のベッドは二段ベッドでそんなことは不可能だ。二回目には確実に柵を乗り越えて床に叩きつけられている。それなのにこのベッドは、あと半回転はできそうなゆとりがある。
さくらは完全に目を覚まし、潜っている布団から出ることが恐ろしくなった。
(一体、何が起こったの??)
さくらは暫く布団に潜った状態のまま動けないでいた。もしもここが自分の部屋でなかったらあの悪夢は現実だ。もはやこのベッドが自分のものではないこと明らかだったが、この目で周りを確かめることで現実と認めてしまうのが怖かった。だからといって、いつまでもそのままでいるわけにもいかない。さくらは意を決して布団から顔を出し、恐る恐る辺りを見回した。
そこは昨日とはまったく違い、明るい部屋だった。
とても広く、横一面に大きなバルコニーがあり、そこから日の光が燦々と降り注いでいる。部屋の中央には寛ぐ場所だろうか、美しい絨毯が敷いてあり、丈の低い小さいが美しい装飾が施されているテーブルと、同じように美しい長椅子が置いてある。部屋の奥には大きな楕円のテーブルがあり、その上に花と果物が溢れんばかりに飾ってあった。さくらは自分のいるベッドを見上げると、それは天蓋付きのとても大きなベッドだった。
さくらは呆然とした。ここは一体何処なのだろう? まるでお姫様のお部屋ではないか。
さくらはフラつきながらベッドから降りると、改めてゆっくり部屋を眺めた。まだ夢を見ているのだろうか? そうだとしたら、さっきの夢よりはずっといい。こんなに気持ちのいい部屋は初めてだ。
さくらはうーんと伸びをした時、部屋の片隅に、自分のブーツとバッグか並んで置かれているのが目に入った。あれは映画館に行った時に身に着けていたものだ。再び、さくらは不安に襲われた。やはり夢ではなく現実なのではないだろうか。その時、ベルの音が鳴り、さくらは飛び上がった。
ベルの音はこの部屋の呼び鈴だった。音が鳴った後、一呼吸置き、二人の女性が入ってきた。一人は年配の女性で、もう一人はさくらと同じくらいの年齢と思われる若い女性だった。二人ともお揃いの紺色のくるぶし丈まであるドレスを身に着けている。どこかヨーロッパの中世を思わせる、胸下で切り返しのあるスタイルだ。さくらは不安げに二人を見つめ、そのまま崩れるようにベッドに腰掛けた。
年配の女性が怯えるさくらを気遣うように、とても優しげな笑みを浮かべて挨拶をした。
「お目にかかれてたいへん光栄でございます。さくら様。私はルノー、そしてこちらに居ります者はテナーと申します。本日より私どもがさくら様の身の回りのお世話をさせて頂くこととなりました」
そう言うと、二人揃って深々と頭を下げた。
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