14 / 42
第一章
13.箱庭
しおりを挟む
初日は第一の宮殿の庭園から散策を始めた。
端から端までブラブラと歩いてみたり、中央のベンチで休んでみたり、池の中にある人口の滝に無理やり近づいてみたり、中央を横切ってみたり、子供のように歩き回った。
一日二日もするとそれに飽き、今度は第一の宮殿と第二の宮殿との間の中庭が気になり始めた。さくらは庭園の端から中庭に続く道を見つけ出し、そっちを探索してみることにした。
中庭は初めて見たときとは何か印象が違った。第一の宮殿と第二の宮殿を繋ぐ回廊に囲まれ、日の光が降り注ぎ、とても気持ちがいい。手入れされた草花や芝生、美しく張り巡らされたタイルが日に反射してキラキラしている。
だが、やはり四方を建物で囲まれているせいだろうか、とても静かで物悲しい。それにこんなに広いのに人が一人も居ないことも気になった。そういえば第一の宮殿の庭園も人らしい姿をほとんど見ない。
(このバカでかい宮殿に、人っていったい何人いるのよ?)
あまりに静かで、ここには自分一人しかいないのではないかという錯覚に陥ってしまいそうになる。誰もいない回廊を歩いていると、さくらは急に寂しくなり、すぐにこの中庭を抜けたくなった。
回廊の一番端に辿り着き、もと来た道とは違う第一の宮殿に戻る通路を探し当てた。そしてそこから戻ろうと思ったが、てっきりT字路で突き当りと思っていた壁に、少しずれてまだ真っ直ぐ通路が続いていることに気が付いた。
気になって覗いていると、通路はさらに細くなっていたが、ずっと奥に延びている。建物の一番端まで来たと思っていたのに、まだ先があるようだ。
(薄暗いなぁ・・・)
さくらは何となく薄気味悪さを感じた。それでいながら、どうしてもこの先が気になって仕方がない。一種の怖いもの見たさと、この小さな恐怖心に打ち勝ちたいという、子供じみた思いが、さくらの足を運ばせた。
この通路には窓がなく、入り口から入る光だけが頼りのため、奥に進むほどにどんどん暗くなっていた。恐る恐る足を踏み入れてみると、気のせいか若干空気がヒンヤリしている気がする。
さくらは薄暗い中をゆっくりゆっくり歩いた。どこまでも続きそうな、いつまでも終わらないような気がしてくる。まだだ、まだ・・・。
しかし、思いの外あっけなく突き当たりに着いてしまった。
短い冒険の終了に、何事も無かった安堵感と、暗闇を克服した満足感と同時に、何か物足りない、拍子抜けしたような感じを覚えた。
そのままUターンして、来た道を戻ろうとした時、壁に小さな木の扉があるのに気が付いた。閂が下りているだけで、鍵はかかっていない。恐怖心が薄れていた上に、まだ満ち足りない冒険心からか、何の躊躇もなくその扉を開けてしまった。すると、弱い光が入り、目の前が明るくなった。
そこは四方を高い壁に囲まれたほぼ正方形のとても小さな中庭だった。先ほどいた中庭に比べたら箱庭と言った方がいいほど小さい。
その小さいスペースにいくつもの大きな木が植えてあり、それらが、ただでさえ狭い空から降り注ぐ太陽の光を遮っていて、とても薄暗い。そしてここにも中央に小さな可愛らしい噴水が儲けてあった。それを挟むようにベンチが向かい合っておいてあり、端の方には月見台のような小さな台まであった。
明らかに今までの庭とは違い、ほとんど手入れがされていないようだ。そのせいだろうか、自然の状態に近く、薄暗いのになぜかとても親しみの持てる庭になっていた。地面の芝生が伸び放題だが、人がよく通る場所なのだろう、所々剥げて土が見え、細い道になっている。
さくらは月見台の近くにやってきた。木で組み立てられたとても簡素な物だった。登ってみようかと思ったが、何となくそれは躊躇われた。
月見台の周りを一周し、噴水の前にやってくると、中を覗き込んだ。水は湧き水のようで、とても澄んでいたが、噴水の中は藻が付着していて、長い間手入れをしていない事がわかる。
さくらは入って来た側と反対側の向かいの塀を見た。するとやはり同じくらいの小さな木の扉があるのが見えた。入り口の扉と同様、閂だけが下りて鍵はかかっていなかった。さくらは一瞬躊躇したが、その扉を開けてみる事にした。
開けてみると、長い通路が続いていた。とても天井も低く、まるでトンネルのようだった。窓なく真っ暗で、開けている扉から入る微かな光から、突き当たりに同じくらいの小さな扉があるのがうっすらと見えた。
さくらは先に行きたい衝動にかられた。しかし、あまりの暗さと狭さに足が進まない。もし閉じ込められたらどうしようと用心する自分と、さっきも扉を開け、思いがけない景色を発見し、こんなにも楽しめているではないかと鼓舞する自分がいた。
(きっと、この先も何かある!)
さくらは扉をギリギリまで開き、絶対に閉まらないように、大きな石で扉を固定した。そうする事で想像以上に、日の光が通路に届き、突き当りの扉がはっきり見えた。
(うん。これなら怖くない)
さくらは大きく深呼吸すると、トンネルのような通路に入っていった。天井が低く、幅も狭いトンネルは、入り口を全開に開いていても、自分の体で入っている光を遮ってしまい、結局かなり暗くなってしまった。
さくらは両手を両端の壁に手をつけながら、ゆっくりゆっくり慎重に前に進んでいき、とうとう真っ暗になったと思ったときに扉に突き当たった。手探りで閂を外し、急いで扉を開けた。するとサーっと光が入ってきた。
端から端までブラブラと歩いてみたり、中央のベンチで休んでみたり、池の中にある人口の滝に無理やり近づいてみたり、中央を横切ってみたり、子供のように歩き回った。
一日二日もするとそれに飽き、今度は第一の宮殿と第二の宮殿との間の中庭が気になり始めた。さくらは庭園の端から中庭に続く道を見つけ出し、そっちを探索してみることにした。
中庭は初めて見たときとは何か印象が違った。第一の宮殿と第二の宮殿を繋ぐ回廊に囲まれ、日の光が降り注ぎ、とても気持ちがいい。手入れされた草花や芝生、美しく張り巡らされたタイルが日に反射してキラキラしている。
だが、やはり四方を建物で囲まれているせいだろうか、とても静かで物悲しい。それにこんなに広いのに人が一人も居ないことも気になった。そういえば第一の宮殿の庭園も人らしい姿をほとんど見ない。
(このバカでかい宮殿に、人っていったい何人いるのよ?)
あまりに静かで、ここには自分一人しかいないのではないかという錯覚に陥ってしまいそうになる。誰もいない回廊を歩いていると、さくらは急に寂しくなり、すぐにこの中庭を抜けたくなった。
回廊の一番端に辿り着き、もと来た道とは違う第一の宮殿に戻る通路を探し当てた。そしてそこから戻ろうと思ったが、てっきりT字路で突き当りと思っていた壁に、少しずれてまだ真っ直ぐ通路が続いていることに気が付いた。
気になって覗いていると、通路はさらに細くなっていたが、ずっと奥に延びている。建物の一番端まで来たと思っていたのに、まだ先があるようだ。
(薄暗いなぁ・・・)
さくらは何となく薄気味悪さを感じた。それでいながら、どうしてもこの先が気になって仕方がない。一種の怖いもの見たさと、この小さな恐怖心に打ち勝ちたいという、子供じみた思いが、さくらの足を運ばせた。
この通路には窓がなく、入り口から入る光だけが頼りのため、奥に進むほどにどんどん暗くなっていた。恐る恐る足を踏み入れてみると、気のせいか若干空気がヒンヤリしている気がする。
さくらは薄暗い中をゆっくりゆっくり歩いた。どこまでも続きそうな、いつまでも終わらないような気がしてくる。まだだ、まだ・・・。
しかし、思いの外あっけなく突き当たりに着いてしまった。
短い冒険の終了に、何事も無かった安堵感と、暗闇を克服した満足感と同時に、何か物足りない、拍子抜けしたような感じを覚えた。
そのままUターンして、来た道を戻ろうとした時、壁に小さな木の扉があるのに気が付いた。閂が下りているだけで、鍵はかかっていない。恐怖心が薄れていた上に、まだ満ち足りない冒険心からか、何の躊躇もなくその扉を開けてしまった。すると、弱い光が入り、目の前が明るくなった。
そこは四方を高い壁に囲まれたほぼ正方形のとても小さな中庭だった。先ほどいた中庭に比べたら箱庭と言った方がいいほど小さい。
その小さいスペースにいくつもの大きな木が植えてあり、それらが、ただでさえ狭い空から降り注ぐ太陽の光を遮っていて、とても薄暗い。そしてここにも中央に小さな可愛らしい噴水が儲けてあった。それを挟むようにベンチが向かい合っておいてあり、端の方には月見台のような小さな台まであった。
明らかに今までの庭とは違い、ほとんど手入れがされていないようだ。そのせいだろうか、自然の状態に近く、薄暗いのになぜかとても親しみの持てる庭になっていた。地面の芝生が伸び放題だが、人がよく通る場所なのだろう、所々剥げて土が見え、細い道になっている。
さくらは月見台の近くにやってきた。木で組み立てられたとても簡素な物だった。登ってみようかと思ったが、何となくそれは躊躇われた。
月見台の周りを一周し、噴水の前にやってくると、中を覗き込んだ。水は湧き水のようで、とても澄んでいたが、噴水の中は藻が付着していて、長い間手入れをしていない事がわかる。
さくらは入って来た側と反対側の向かいの塀を見た。するとやはり同じくらいの小さな木の扉があるのが見えた。入り口の扉と同様、閂だけが下りて鍵はかかっていなかった。さくらは一瞬躊躇したが、その扉を開けてみる事にした。
開けてみると、長い通路が続いていた。とても天井も低く、まるでトンネルのようだった。窓なく真っ暗で、開けている扉から入る微かな光から、突き当たりに同じくらいの小さな扉があるのがうっすらと見えた。
さくらは先に行きたい衝動にかられた。しかし、あまりの暗さと狭さに足が進まない。もし閉じ込められたらどうしようと用心する自分と、さっきも扉を開け、思いがけない景色を発見し、こんなにも楽しめているではないかと鼓舞する自分がいた。
(きっと、この先も何かある!)
さくらは扉をギリギリまで開き、絶対に閉まらないように、大きな石で扉を固定した。そうする事で想像以上に、日の光が通路に届き、突き当りの扉がはっきり見えた。
(うん。これなら怖くない)
さくらは大きく深呼吸すると、トンネルのような通路に入っていった。天井が低く、幅も狭いトンネルは、入り口を全開に開いていても、自分の体で入っている光を遮ってしまい、結局かなり暗くなってしまった。
さくらは両手を両端の壁に手をつけながら、ゆっくりゆっくり慎重に前に進んでいき、とうとう真っ暗になったと思ったときに扉に突き当たった。手探りで閂を外し、急いで扉を開けた。するとサーっと光が入ってきた。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
12
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる