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第四章 精霊と呪い
後悔の帰路
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真夜中、馬車はシグルンの故郷ラップラントを目指し揺れていた。
ゲオルグは御者の隣に座り、馬車の中ではシグルンとヨハンナが隣同士腰かけていた。
シグルンは夜通しヨハンナの膝の上で震えて嗚咽を漏らした。
もう立派な大人だというのに、自制心の効かない子どものようだ。
ヨハンナのエプロンはシグルンの涙で湿った。
シグルンは初めて恋をした。
こんな醜い顔は恋とは無縁だと、ずっとそう思って生きてきた。
だが、顔は関係なかった。
恋とは勝手に落ちるものだった。
相手に受け入れられるか否かの問題だけで。
シグルンはアレクが顔を見て動揺したのを思い出すと、心が抉られるような絶望感を感じた。
アレクはきっと騙されたと思っただろう。
なんて酷い顔なんだと。
実際アレクがそう言ったわけではなかったが、経験則上シグルンの中ではそれが決まっていた。
被害妄想だがある意味事実に近い悲しみが、動かしがたい岩のようにシグルンの胸にのしかかる。
愛されなくてもいい。
だが、アレクには嫌われたくなかった。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。
シグルンを乗せた馬車は少しずつ王都から離れ、シグルンの恋もまた終わってしまったというのに、シグルンは諦めよりも悲しみの気持ちがどんどん膨れ上がっていった。
シグルンは胸の痛みを抑えて、短く息を吐いた。
身体は震え、引き攣った呼吸に合わせて何度も横隔膜が上下する。
「奥様……いえ、失礼しました。シグルン様、もうお休みなってください」
シグルンの耳元にヨハンナの優しく気遣わしげな言葉が振り降りた。
シグルンは嗚咽を止めて聞き入る。
まるで雨粒が地面に吸い込まれるように、自然と耳に入ってきたのだ。
そして、それはまるで魔法の呪文のようなものでもあった。
シグルンの身体の震えは収まり、ゆっくりと瞼が重くなっていく。
ヨハンナはシグルンの背中を優しく摩った。
シグルンは背中に感じた温もりを故郷にいるゾーイに重ね合わせながら、目を閉じた。
****
それからどれくらい眠っていただろうか。
シグルンは身体に違和感を覚えて目を開けた。
馬車の中でずっと同じ体勢で寝ていたのだ。
関節がきしきし言うのを感じながら、シグルンは身体を起こした。
隣にはヨハンナが座っており、シグルンに気付いたのか、おはようございますと話しかけてくる。
いつも鉄仮面のような厳しい顔をするヨハンナは、このときばかりは優しく微笑んでいた。
シグルンは思わず二度見して、やや遅れてから挨拶を返す。
一晩中泣き腫らしたせいか、シグルンは意外にも落ち着いていた。
もちろんアレクのことは今も好きだし、思い返せば泣けてくるのだが。
今はそれよりも人前で大泣きしてしまったことに、シグルンは冷静さを取り戻して、今さらながら居たたまれない。
「あ、あのヨハンナ、昨日はその……」
「私は何も見ていませんよ。まぁ、膝はお貸ししましたが」
気まずそうにおどおどするシグルンに、ヨハンナはいつもの無表情を取り戻し、首を丁寧に振った。
シグルンはそれがすぐに嘘だと分かったが、ヨハンナの優しさの含まれた言葉にほっと息をついた。
「今はどれくらいなのかしら?」
シグルンは話題を変えようと窓のカーテンを開けた。
窓から温かい陽の光が差し込み、シグルンは目を細める。
(どんなに辛いことがあっても、明日って必ずくるものね……)
シグルンは随分高いところにまで昇った太陽を見上げて、心とは正反対に晴れ渡った空が、今日ほど美しいと感じたことはなかった。恨めしいくらいに。
窓の外は長閑な風景が緩やかに続いている。
少し覗き込むようにして前を見れば、隣国を隔てる山脈も見えた。
まだ距離はあるが、ラップラントの国境ラインだ。
「そうですね。昨晩王都を出てから、大体半日以上といったところでしょうか? あともう少しで目的地に着くのではと思います」
「そんなに……いつの間に寝てしまったんですね」
シグルンはアレクとのやり取りはよく覚えていたが、例えばいつどうやって馬車に乗り込んだのか、などの細かい記憶が抜け落ちていた。
よほど錯乱状態だったのだろう。
それに一晩中泣いていたのだから、自分でも気付かない内にたくさん眠ってしまった。
「シグルン様、それよりも……食事にしましょう」
「え……?」
「お腹、空いてませんか?」
「す、空いてるわ」
シグルンはヨハンナの質問に顔を赤くして答えた。
身体は正直なもので、しっかりお腹がぐぅとだらしなく鳴る。
ヨハンナはこくりと頷くと、自分の側のカーテンを開けて窓を軽く叩いた。
馬車はゆっくりと停車し、今度はゲオルグが現れる。
「シ、シグルン様、おはようございます。あ、この時間はこんにちはですかね? 休めましたか?」
「あ、はい……こんにちは、ゲオルグさん。お、お陰様で……」
そう言えば、昨夜のアレクとのやり取りをゲオルグは見ていたに違いない。
シグルンは急に強張った笑顔で返した。
ゲオルグも気まずそうに目を泳がせていたが、どうやら昨日の件を詮索するつもりはないようだ。
「夜にはゾーイ様の元にも着きましょう。とりあえず少し行った先に教会があります。手前に芝生が広がっていますので、そこで野駆けにしましょうか」
ゲオルグは額を掻いて、にかっと笑った。
「こちらをよろしくお願いします」
徐にヨハンナが足元のバスケットからグラスを取り出し、ゲオルグに手渡した。
ゲオルグは軽く頷き、杖を振るって水の魔法を起こす。
魔法というものはいつ見ても不思議だった。
太陽の光に反射して虹色に輝くシャボン膜の中に、何もないもいうのにどこからともなく水が湧き出てくるのだ。
それでいて枠は重みで弾けたりしないのだから、尚のこと奇妙だった。
最終的にシャボン玉にグラスを近付ければ、パチンと割れてグラスに水が注がれた。
「シグルン様、どうぞ」
「あ…ありがとうございます」
シグルンはただ魔法に見惚れていただけたが、ゲオルグはシグルンが驚いたと勘違いしたのか、渋面を作った。
「あ、いえね、火と違って水は井戸があれば普段はそこから調達するんですが、ここ数日は水が汚れているようでして……魔法で水を出さなければいけない状態なんです」
「え……? 水が汚れて?」
シグルンは驚いて声が上擦った。
同時に貧民街の少女と母親の姿が脳裏に浮かぶ。
あのような貧しい場所は、水の出せる魔法使いはいない。
だから教会に頼り切りだったのだ。
「私も知らされたのはつい昨日のことです。それまでは貧民街を中心に確認されていたようですが、少しずつ王都に広まり、徐々に街の外にも広がっているようです。恐らくラップラントも例外ではないでしょう」
「原因は分からないのですか?」
「教会で調査中ですが未だに不明のままです。多くの魔法使いが水の供給に駆り出されていますが、なかなかどうして……足りませんなぁ。これでも王都は魔法使いは多い方でですが、地方はね」
「……そう、なんですね」
「この先にも教会がありますので、食事が済んだらそこで一度村の人たちに水を供給しようと思います。寄り道のようになってしまいますが、その後ラップラントに行きましょう」
「は……はい! だ、大丈夫ですよ」
シグルンは水の入ったグラスを受け取り、俯いた。
水面には皺だらけの不安げな顔をしたシグルンの顔が写っている。
まるで逃げたみたいだった。
何もかも現実から目を逸らして。
だけど、無力で醜い自分に何ができるというのだろうか。
故郷に帰ることが、後から後から自分を責めてくるような気がした。
シグルンは目を閉じて、水を飲み干した。
そんなつもりはなかったのに、鼻の頭がつんとして、目頭が熱くなった。
ゾーイのいるラップラントまでもうすぐだった。
ゲオルグは御者の隣に座り、馬車の中ではシグルンとヨハンナが隣同士腰かけていた。
シグルンは夜通しヨハンナの膝の上で震えて嗚咽を漏らした。
もう立派な大人だというのに、自制心の効かない子どものようだ。
ヨハンナのエプロンはシグルンの涙で湿った。
シグルンは初めて恋をした。
こんな醜い顔は恋とは無縁だと、ずっとそう思って生きてきた。
だが、顔は関係なかった。
恋とは勝手に落ちるものだった。
相手に受け入れられるか否かの問題だけで。
シグルンはアレクが顔を見て動揺したのを思い出すと、心が抉られるような絶望感を感じた。
アレクはきっと騙されたと思っただろう。
なんて酷い顔なんだと。
実際アレクがそう言ったわけではなかったが、経験則上シグルンの中ではそれが決まっていた。
被害妄想だがある意味事実に近い悲しみが、動かしがたい岩のようにシグルンの胸にのしかかる。
愛されなくてもいい。
だが、アレクには嫌われたくなかった。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。
シグルンを乗せた馬車は少しずつ王都から離れ、シグルンの恋もまた終わってしまったというのに、シグルンは諦めよりも悲しみの気持ちがどんどん膨れ上がっていった。
シグルンは胸の痛みを抑えて、短く息を吐いた。
身体は震え、引き攣った呼吸に合わせて何度も横隔膜が上下する。
「奥様……いえ、失礼しました。シグルン様、もうお休みなってください」
シグルンの耳元にヨハンナの優しく気遣わしげな言葉が振り降りた。
シグルンは嗚咽を止めて聞き入る。
まるで雨粒が地面に吸い込まれるように、自然と耳に入ってきたのだ。
そして、それはまるで魔法の呪文のようなものでもあった。
シグルンの身体の震えは収まり、ゆっくりと瞼が重くなっていく。
ヨハンナはシグルンの背中を優しく摩った。
シグルンは背中に感じた温もりを故郷にいるゾーイに重ね合わせながら、目を閉じた。
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それからどれくらい眠っていただろうか。
シグルンは身体に違和感を覚えて目を開けた。
馬車の中でずっと同じ体勢で寝ていたのだ。
関節がきしきし言うのを感じながら、シグルンは身体を起こした。
隣にはヨハンナが座っており、シグルンに気付いたのか、おはようございますと話しかけてくる。
いつも鉄仮面のような厳しい顔をするヨハンナは、このときばかりは優しく微笑んでいた。
シグルンは思わず二度見して、やや遅れてから挨拶を返す。
一晩中泣き腫らしたせいか、シグルンは意外にも落ち着いていた。
もちろんアレクのことは今も好きだし、思い返せば泣けてくるのだが。
今はそれよりも人前で大泣きしてしまったことに、シグルンは冷静さを取り戻して、今さらながら居たたまれない。
「あ、あのヨハンナ、昨日はその……」
「私は何も見ていませんよ。まぁ、膝はお貸ししましたが」
気まずそうにおどおどするシグルンに、ヨハンナはいつもの無表情を取り戻し、首を丁寧に振った。
シグルンはそれがすぐに嘘だと分かったが、ヨハンナの優しさの含まれた言葉にほっと息をついた。
「今はどれくらいなのかしら?」
シグルンは話題を変えようと窓のカーテンを開けた。
窓から温かい陽の光が差し込み、シグルンは目を細める。
(どんなに辛いことがあっても、明日って必ずくるものね……)
シグルンは随分高いところにまで昇った太陽を見上げて、心とは正反対に晴れ渡った空が、今日ほど美しいと感じたことはなかった。恨めしいくらいに。
窓の外は長閑な風景が緩やかに続いている。
少し覗き込むようにして前を見れば、隣国を隔てる山脈も見えた。
まだ距離はあるが、ラップラントの国境ラインだ。
「そうですね。昨晩王都を出てから、大体半日以上といったところでしょうか? あともう少しで目的地に着くのではと思います」
「そんなに……いつの間に寝てしまったんですね」
シグルンはアレクとのやり取りはよく覚えていたが、例えばいつどうやって馬車に乗り込んだのか、などの細かい記憶が抜け落ちていた。
よほど錯乱状態だったのだろう。
それに一晩中泣いていたのだから、自分でも気付かない内にたくさん眠ってしまった。
「シグルン様、それよりも……食事にしましょう」
「え……?」
「お腹、空いてませんか?」
「す、空いてるわ」
シグルンはヨハンナの質問に顔を赤くして答えた。
身体は正直なもので、しっかりお腹がぐぅとだらしなく鳴る。
ヨハンナはこくりと頷くと、自分の側のカーテンを開けて窓を軽く叩いた。
馬車はゆっくりと停車し、今度はゲオルグが現れる。
「シ、シグルン様、おはようございます。あ、この時間はこんにちはですかね? 休めましたか?」
「あ、はい……こんにちは、ゲオルグさん。お、お陰様で……」
そう言えば、昨夜のアレクとのやり取りをゲオルグは見ていたに違いない。
シグルンは急に強張った笑顔で返した。
ゲオルグも気まずそうに目を泳がせていたが、どうやら昨日の件を詮索するつもりはないようだ。
「夜にはゾーイ様の元にも着きましょう。とりあえず少し行った先に教会があります。手前に芝生が広がっていますので、そこで野駆けにしましょうか」
ゲオルグは額を掻いて、にかっと笑った。
「こちらをよろしくお願いします」
徐にヨハンナが足元のバスケットからグラスを取り出し、ゲオルグに手渡した。
ゲオルグは軽く頷き、杖を振るって水の魔法を起こす。
魔法というものはいつ見ても不思議だった。
太陽の光に反射して虹色に輝くシャボン膜の中に、何もないもいうのにどこからともなく水が湧き出てくるのだ。
それでいて枠は重みで弾けたりしないのだから、尚のこと奇妙だった。
最終的にシャボン玉にグラスを近付ければ、パチンと割れてグラスに水が注がれた。
「シグルン様、どうぞ」
「あ…ありがとうございます」
シグルンはただ魔法に見惚れていただけたが、ゲオルグはシグルンが驚いたと勘違いしたのか、渋面を作った。
「あ、いえね、火と違って水は井戸があれば普段はそこから調達するんですが、ここ数日は水が汚れているようでして……魔法で水を出さなければいけない状態なんです」
「え……? 水が汚れて?」
シグルンは驚いて声が上擦った。
同時に貧民街の少女と母親の姿が脳裏に浮かぶ。
あのような貧しい場所は、水の出せる魔法使いはいない。
だから教会に頼り切りだったのだ。
「私も知らされたのはつい昨日のことです。それまでは貧民街を中心に確認されていたようですが、少しずつ王都に広まり、徐々に街の外にも広がっているようです。恐らくラップラントも例外ではないでしょう」
「原因は分からないのですか?」
「教会で調査中ですが未だに不明のままです。多くの魔法使いが水の供給に駆り出されていますが、なかなかどうして……足りませんなぁ。これでも王都は魔法使いは多い方でですが、地方はね」
「……そう、なんですね」
「この先にも教会がありますので、食事が済んだらそこで一度村の人たちに水を供給しようと思います。寄り道のようになってしまいますが、その後ラップラントに行きましょう」
「は……はい! だ、大丈夫ですよ」
シグルンは水の入ったグラスを受け取り、俯いた。
水面には皺だらけの不安げな顔をしたシグルンの顔が写っている。
まるで逃げたみたいだった。
何もかも現実から目を逸らして。
だけど、無力で醜い自分に何ができるというのだろうか。
故郷に帰ることが、後から後から自分を責めてくるような気がした。
シグルンは目を閉じて、水を飲み干した。
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