感情喪失少女

紗霧 鈴

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夢李の逃走作戦

夢李の思い出の場所……

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……どうしよう……
勢いで逃げ出してしまった。
勢いと言っても理由無しに逃げだした訳では無い。
とはいえ、これで3度目。
ほら良く言うでしょ?あの……なんだっけ?
えーと……そうそう!仏の顔も三度までって。
一回目は病院の門……と言うか……そこを超えた所で捕まった。
二回目はたしか……病院の庭だったような…
自分でも曖昧でよく覚えていない。
そしてこれで三度目という事。
何故私がこんなに脱走を繰り返しているか。
1つ、病院食があまり好みの味でない。
2つ、やる事が無くて暇過ぎる。
3つ、……なんだか看護師さんや医者が怖い。
何故かって言うと何だかよく分からないけれど、問い詰めてくるのだ。昔のこと覚えてる?とか、昔病気だった?とか……
なんで、記憶喪失の私にそんな事聞くのかは分からない。
私は確か、病気なんてかかった事の無い元気が取り柄だったはず……
でもやっぱりちゃんとしたことは思い出せなくて…
だから、「え、えと…」とか「あの…」とか曖昧な言葉で濁した。
けど、そう言うと、「なんで思い出さないの!?」や、「ちゃんと考えなさいよっ?!」とかって怒られる。
こんなのを看護師さんや医者がするもんだから、怖いと……そう感じたのだ。
こんな感じで私は何度も馬鹿な行動を繰り返す。それが無駄なことと分かっていても…
そんな事を考えながら歩いていると私はある場所に来ていた。
「……??あ…れっ??……ここはっ…?」
そこは少し古い遊具が沢山並んでいる公園。
何故か見覚えがあるのは気のせい??
その公園に入り色んな遊具に触れてみる。
なにか“思い出せる”気がして……
少し錆び付いているブランコの鎖。
少し剥がれ落ちている滑り台のペンキ。
少し腐って汚れているベンチの木。
なんだか、全てが懐かしかった。
ふと、少し視線をずらした。
そこにあった砂場。
それを見て、とんでもなく泣きそうになった。
「……え?あれ??な…に…これ…??」
溢れ出したのは一粒の透明な雫。
その後もどんどん零れ落ちる。
涙……何故か涙が零れて止まらなかった。
涙を流したのなんて何年ぶりだろう。
そんな涙をごしごし擦って拭う。
「……夢李??」
「えっ……?」
涙の残る目で声のした方へ振り向く。
「……!?泣いて……んのか??」
口を開くと何もかも溢れ出しそうだった。
何もかも……思い出した。
思い出さなければ良かった、こんな過去なら。
どうして思い出してしまったの??
このタイミングで思い出した自分に問う。


私はこれからどうするべきなの……??


と……そう問うのだった……。
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