感情喪失少女

夢李の逃走作戦

何も知りたくない。話さなくていい。

｢……夢李？？なぁ、なんで泣いてるの……？｣
何でなのか分からなかった。
というか、彼女が何故ここに居るのか自体理解出来なかったのだ。
｢わか……んないよっ……だって……しら…ないもん…｣
顔をぐちゃぐちゃにしながら言葉を紡ぐ。
｢私…ねっ……病院…戻…りたく…ないよっ…！｣
｢夢李……僕は…どうすべきか…分かんねーよ…｣
｢どうすべきか分かんないじゃないっ！｣
彼女はそう言って僕に叫んだ。
｢悠崎くんが私をどうすべきかじゃなくて！
だから…悠崎くんは結局何もする気が無いんでしょ？良いんだよ、それで。でも、何もする気が無いなら私の事知らなかった事にして。私はあんな所戻りたくないの！｣
夢李が感情的に物を言うのは非常に稀な事だ。
｢なんで戻りたくねーの？理由言ったら？｣
｢やだよ。馬鹿にするのは目に見えてんのよ。｣
何故か夢李は絶対言おうとしない。
……僕は自分の中でひとつの答え出した。
｢……言わなくていいよ。｣
｢…………えっ？？……｣
｢ぼくは何も知りたくない。
だから、話さなくて良いよ。｣
｢……ほんと？？……｣
｢うん。ただ、ひとつ条件がある。｣
｢えっ……？？｣
｢……僕に夢李の逃走の手助けをさせてほしい。｣
｢え……何言ってるの？？｣
彼女は意味がわからないと言うように首を傾げる。
｢取り敢えず夢李の家にGoだよ！｣
そう笑って僕は夢李の腕を引いた。
｢え？ちょっ、あの！？待ってて？！｣
焦る彼女に僕は問う。
｢ん？どうした？なんか問題ある？｣
｢問題あるって……問題ありありでしょ！？｣
｢あ～、病院から逃げ出したって事？｣
｢それ以外何があるのよ？！｣
｢僕が説得するから大丈夫！｣
そう笑う僕に彼女は“もう知らないからね…”と夢李はほんのり優しく微笑んでくれた。