感情喪失少女

紗霧 鈴

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夢李の過去

私の傍には誰も居やしない。

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「あんたなんて!あんたなんて!要らない!要らないのよ!死ね!死になさい!消えて私の前に二度と姿を現さないで!」
そんな辛い言葉。
私の傍に居てくれる人なんてもう何処にも居ない。
私が幼い頃から母は毎日のように暴力を振るった。
父はそんな母から私を守ってくれた。
ある日父は言った。
「ママとは離婚する事になったんだ…どっちに行くかは夢李が決めなさい。」
勿論迷う事なんて無かった。
迷わず父について行くことを決めた。
けれど…父は亡くなった。
精神的ストレスだった。
私は分かっていた。
母が毎日のように私を殴るからきっと父もストレスが溜まっていたんだ。父は平和主義者だったから。そのせいで父は亡くなった。
母が父を……私の大事な家族を殺したのだ。
私はその日からかもしれない。
感情が消え去った。
殴られようが蹴られようが辛いとも痛いとも思わなくなった。
さすがにおかしいと言われ病院に連れていかれた。
“感情喪失病(かんじょうそうしつびょう)”って言う極稀な病気らしい。
日本での発症者は私を入れてたったの10人。
滅多に居ないのだ。
感情喪失病って言うのは感情が消え去る病気らしい。
感情喪失病は主に絶大的なショックやストレスから来る病気らしい。
治す方法はどれも正確なものは無いらしく、
突然朝起きたら治っていた・一度感情を爆発させたら治った・自分の思いに正直になれば治った・人に全て話したら涙が零れて止まらなくなったから治っている??など本当に様々でどれも正確なものは無い。
どれに当てはまるかは人によって違い、これ全て試しても治らない可能性があるらしい。
だから、私は珍しい病気の子として色々調べられる事になった。面倒。その一言だった。
感情を無くしたのは小一の時。
家ではとんでもないスパルタ教育を受け、暴力も暴言も当たり前になっていた。
体は痣や傷だらけだった為、皆は遠巻きに私を見てた。
分からなかった。暴力も暴言も当たり前なのに。
痣や傷が無い皆の方が私からすればおかしかった。
“何で皆そんな目で見るの??暴力も暴言も当然のことでしょう??私からすれば皆の方がおかしいよ。みんな愛されて…ずるいよ。”
その日からだった。
いじめが始まったのは。
小一の頃から苛められるなんて辛かった。
教科書は無くなり、上靴は捨てられ汚い水に浸かっている。こんなの……履けるわけない。
こんな日が続いたある日。
父が亡くなった。
私は何も言わなくなった。教科書が無くたって。上靴が捨てられてて取ったら画鋲が刺さっていたって。なんだか、どうでも良くなった。
こんなんにいちいち怒る自分が馬鹿らしくなってみんなを冷たい目で見るようになった。
“冷酷ブス女!” “汚いボロ雑巾女!”
なに言われたって平気。小学1年生から中学3年生までいじめを受けてたって大丈夫。
だって私は……


もう既に感情喪失病に悩まされていたから。

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