２０３０年未来の旅

２章 暗黒時代・冬編

潜入捜査

彼女の頭に電極を繋げて、自分にも電極を繋げる。
膨大なコンピューターと超意識のニューロンの電気信号の情報に自分の意識と情報を組み込む。
コンピューターが映像化され、その世界に政人と山下はダウンロードし侵入する。
ニューロンからの膨大な電波信号を暴走し続けるシステム用の映像に作り替えている世界。
その後、二人の意識は転送された。
彼らはコンピューターの暴走し続ける超意識での彼女の存在意識の世界に行った。
それは彼らの本体の意識ではなくもう１つの仮想現実にインプットされた世界。

「起きろ」

政人は眠りからさめ、
制服の警備員が政人を起こした。

「ここは？」
「存在意識の中だ。私もそれは知っている」

システムの仮想現実の世界に侵入した政人に携帯で電話がはいる。
同じ捜査の連中からだ。

「まず仕事は何にしておく？年齢は？それと住所もいるな？
役所で特定の権限あるよう。歳は30歳。
君の住所は東京都の品川区のマンションの６階の３０６号室、
トイレは同じ階にある、皆が使う。エレベーターは１階からある」

たまに潜在意識が狂いかけているのか、道路が移動していく。
町は暗闇に包まれていた。
どうせ存在意識の中のプログラムじゃないか・・・と政人は思う。
でもこの世界に彼女は存在している。本体が死んでいるから、強制的に意識だけでられずに。
山下の言ったとおりだ、彼女の脳の意識は2次元の世界になっている。2次元の世界にくれば、これにシステムの管理があればシステムには絶対に勝てない。このままでは彼女の脳の意識は2次元の仮想現実の無限の世界から抜け出せなくなるぞ・・・。
政人と山下はシステムの中のエレベーターに乗り込む、
巨大な高層マンションのビルだ。
だが政人と山下を載せたエレベーターは移動途中で電源が落ちて、二人はエレベーターに閉じ込められる・・・。

「システムの世界にくると、システムに反すればこうなる恐怖だ・・・。携帯は故障しかけだ、そのうち携帯の電源も電池がなくなり、連絡がとれなくなる。住民も住んでいないから人間近ずかない。このエレベーターの扉は永遠に開かない・・・」
政人は暗闇の中呟く。

だが山下は、「この老人もそうよんでいたから、たくさんのものをアップデートしておいたよ」

山下はそう言って、懐の長いスパナを取り出して、エレベーターの天井を開けだした。

「こっちだ」

山下は天井を開けるのに成功して政人を呼ぶ、

「政人、階段を行こう」
「システムの中では仕事も雇ってくれない、
金を借りようにも、仕事がないと、返済証明がない理由で貸してはくれない。元々、システムの住民でないから親もいない。貯金があっても、リーマンショックで銀行は倒産だ。
餓死しかなくなる」
続けて、
「システムが全て管理しているからだよ・・・。今、そのシステムの知能指数は暴走している・・・」
山下は言う。

刻々と変化するシステムの大都市、
その6番街に彼女がひっそりいる事を政人は突き止めた。
建物の2階のベランダから、観葉植物を外に置いている人が目につく。
その建物に行き、彼女の部屋に着く。
彼女の部屋は薄暗い部屋で台所は洗っていない汚れた食器で満ちていて、
使っていない物で満ちていた。
部屋は政人の鼻をついた。
洗濯をしていない毛布や紙類、プラスチックでできた物が所せましとあり、
お世辞にも綺麗とは言えないゴミ屋敷の狭い部屋の足場をなくしている。
部屋は薄暗く、電気もまばらにしか通っていないようだ。
部屋には彼女の子供の頃の母が買ってくれた思い出のあるオルゴールが置いてあった。

「なんですか？」

暗がりの中、女がいた。
政人が手元の映像のホログラミング装置を消すと、
若い顔はおばあちゃんになった。

「言いにくいがきてほしい」
「美保」

山下は言った。

「誰？」
「俺だよ、山下だよ。君を迎えに来た」
「山下さん・・・」

山下は美保を抱きしめた。

「やっと君を救えるかもしれない。迎えに来たよ」

彼女の意識は狂っているに近かった。
彼女の神経や肉体はもう悲鳴をあげていて、
ベッドに横たわった。歳は70代だろうか、
山下の問いに彼女は泣いた。

「貴方を開放できるかもしれない。一緒に来てほしい」
「私はもう70代です」

彼女は沈黙した後、真剣な目つきで、

「システムに睨まれたら、私はこの世界の人間でなくなる・・・、
いっその事私を殺して」
「とにかく助かるかもしれないんだ」
「山下さん」

彼女は山下をもう一度抱きしめた。