異世界聖女召喚(仮)

如月 桜

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20.やっぱり小娘には限界があります。

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 翌日に向かった川は、確かにきれいな水が流れていた。
 しかし、この川から水を引くとなると、自分ひとりの力では無理だということを改めて思い知った。
 その日のうちに、私はまた、出かける準備をした。
【本当にいいのね】
 ノアの背に乗り、しっかりと防寒装備を整えている私へと聞いてくるセイ。
「うん。だって、私ひとりじゃ、やっぱり無理なんだもん」
 所詮記憶は19歳の小娘のもの。
 おいしいご飯の作り方は調味料の作り方を知っていたとしても、住みやすい家を作ることすらできない小娘だ。
【まずはエルフでいいのか】
 ノアが聞いてくると、私は強くうなずいた。
「行こう」






 精霊界を渡り、ノアは山の中へとでた。
 少しも走らないうちに、人の気配がした。
【そろそろだな】
 そういうとノアは足を緩めた。
 とすとす、と体の大きさに見合わない足音を立てながら木々の間を進むと彼らの姿をとらえることができた。
 まず目についたのは槍や弓を持った男の姿だった。深く帽子をかぶり、耳元を隠しているため人なのか、エルフなのか、一目でわからないようにしているようだ。
「なにものだ」
 静かに声を上げるのは、若者なのだろうか・・・・・・。
 エルフの年って見た目ではわからないんだよねぇ・・・・・・。
 私の身体は、一応、私の魂と同じ年齢らしいのだけど、若干、前世の記憶よりも若く見えるんだよねぇ・・・・・・。
 っと、それどころじゃなかった。
【我は闇を統べるもの、名をノワール。そなた等の長と話をしたくて参った】
 当初の予定通り、ノアがまず彼らへと声をかける。
 その間、私はというと、ノアの背中にまたがったまま口を開かない、というのが約束となっている。
 ついでに言うと、ノアとセイにこれがいい、と言って渡された足首まで隠れるフード付きのローブをまとっていて、もちろん、フードを目深く被っているので、顔も鼻と口元しか見えないというね・・・・・・。
 ちなみに、いつものワンピースで行こうとしたら、だめよっ!!!と、セイに言われ、セイのアイテムボックスから出てきた当初この世界に召喚されたときに来ていた白色のひらひらしている服を着せられました。
 寒くないように、とセイが体の周りの気温を調整してくれる魔法をかけてくれたから寒くないけど・・・・・・ていうか、私、自分でかけれるよ、って言ったら、こっちのほうがいいのよん、とこれまたウィンク付きで言われてしまった。
 と、そうこうしている間にどうやらさっきのエルフの一人が彼らをまとめているリーダーらしきエルフを呼んできたらしい。
 少しだけ年老いているような印象は見受けられたが、それでも、まだ、40代ぐらいに見えるという。
 若いなぁって思いながら見てると、そのエルフはすぐさま地に足をつけ、そして、大きく頭を下ろした。
 彼のその態度は、一瞬彼らへと波紋のように動揺を広げ、それから、一人、また一人と、彼らはノアの前に膝をつき、頭を垂らした。
「神の御使い様でいらっしゃるとお見受けいたします。本日は、我らにどの様なご用件で訪れられたのでしょうか」
【我の用ではない。我は、我の背に乗りし巫女の用で参った】
 ふん、と鼻息荒くノアがいうと、彼は顔を上げ、そして、ノアの背にまたがる私のほうを見上げた。
【そなたらもすでに知っておろう。人族が勇者召喚をしたと】
「風の噂にて聞いております」
【この者は、その召喚の儀の際、神の意思により異界よりこの地に参った巫女であらせられる】
「では、先日の浄化は」
【左様。こちらにおわす巫女により、この世界を覆いつくす“禍”は祓われた】
 鷹揚にして、仰々しくいうノアの科白に、彼らはまた頭を垂らした。今度は、先ほどよりもずっと深く、そう、地に額をこすりつけるのではなかろうかというぐらいの勢いで。






――――ちょっと、ノア。仰々しく言い過ぎ!!






 さすがに、彼らの対応にノアへとテレパシーで訴えれば、黙ってろ、と目線で言われました。
【巫女は憂いておる。この地を覆いつくした“禍”に、そして、“禍”を生み出した我らに】
 まったく憂いていませんからね!!!だから、「おお」とか声を上げたり、涙を流したりとかしないでください!!!
【しかし、神の使わせた巫女は、我らに機会をくださると、寛大な御心を持っておられた】
 またもや「おぉ!」とか声があがったし・・・・・・。
 あぁもう、勝手にしてください。
 私は、町っていうか村?せめて村規模の住みかがほしいんですよ!!
【巫女は我らがまた、神のご意志のままに、皆が平等に隔てなく暮らしてゆくための機会をと申しておられる。そこで、我はまず、巫女と同じくエルフの血を引くそなたらを巫女が望む地へと赴かせることにした】
 うわぁ、それって、なんていう強制拉致・・・・・・。
【巫女は憂いておる。同じ種であるそなたらが逃げ隠れして生き続けていることに・・・・・・二度と逃げ隠れせず生きて行ける世界に行きたいと思わぬか】
 一応問いかけですね。一応!!!
 わずかにがやがやという音があたりに響く。
 しかし、少しも時間をおかない間に、一人の声が上がった。
「長、行きましょうっ」
 声を上げたのは、後ろのほうで膝をつき、頭を垂れていた女の子だ。
「そうですよ、長っ!!行きましょう!!!」
「この場所には、どこにも、安住の地はないのだから」
「行こう!」
「行きましょうっ!」
 つぎつぎと上がる彼らの声に、ノアは満足そうにうなずき、それから、長と呼ばれた彼のほうを見下ろした。
【一族の者らはこう願って居るが、そなたはどう思う】
「――――――――もし、巫女様が許してくださるというのでしたら、我らは巫女様についていきましょう」
 祈るように両手を胸の前で組むと彼は顔を上げ、そして私のほうを見上げた。






―――――これ、どうしたらいいの






――――笑顔でうなずいてやっとけ






 ノアに言われるがまま口元に笑みを浮かべ、うなずくと、彼らに歓声があがった。
【荷をまとめる時間が必要であろう】
「私どもは遊牧民と同じです。荷をまとめるのに数刻もあれば充分できましょう。安住の地へ赴けるというのであれば、一刻にて纏め上げます」
【―――――ふむ。ならば、荷がまとまるころに再度訪れるとするか。モモ、その間に獣人族のところへ行っておれ】
「―――――――――――私ひとりで?」
 ころりと、鈴を転がすような声が響くと、彼らにまたざわめきが響くが、まぁ、無視しよう。
 ていうか、声もかわいらしいんだよねぇ、この体・・・・・・。
【光のを呼ぶ。獣人族ならば、ここからそう離れてはおらぬからな】
「ノアはお留守番?」
【さすがに、少し目を離して居る間に人族に襲われてはかなわぬからの。ここは魔族領も近いから、早々人族は現れぬとは思うが、幼き子もおるようだからの。万全を期す必要があろう】
「ん、わかった」
【光のには連絡をしておるから、すぐに来るであろう】
【呼ばれたからきたわよ】
「セイ、はやい・・・・・・」
【はやいな・・・・・・】
 いった瞬間現れるとか、すごすぎですね。
【だって、順調に話が行ったら獣人族のところに行くかもって思うじゃない。待機してたのよ。ってことで、モモ、いらっしゃい。獣人族のところまで走るからね、しっかぁり、つかまっているのよ】
 ひょいっと、ノアの背からセイの背中の上へと移し返されると、セイは、またあとでね、と言って、ノアと、それから、ぽかぁんとしているエルフたちに別れを告げ、走り出した。
「そういえば、獣人族のところには、セイが一緒に行くんだね」
 てっきり、ノアが一緒に行くのかと思ってた、というと、セイは、笑った。
【本当なら、ノアは一緒に行きたいところなんだろうけどね、獣人族には、あたしの昔馴染みがいるのよ。あたしがいたほうが、話がスムーズに進むからね。だから、あたしが行くの】
「なるほどぉ」
【あと、モモ、ちょこぉっと、暑苦しい連中がいるかもしれないけど、我慢しなさいよ】
「へ?」
【困ったら左手の見せればたいていおとなしくなるからね】
「へ・・・・・・?」
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