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第2章、破滅に向かう世界。
第3話、城塞都市ウェストレイド②
しおりを挟む「……………ここ……は?」
気を失っていた俺は、意識が朦朧としていて呆然と見慣れない天井を見ていた。
何で自分がここで寝ているのか、そもそも魔力切れの経験が無かったからな。
後で聞いてから、そうなんだ。と理解する事になるし。
ただ、窓の外から聞こえる鳥の囀りと、窓から差し込む太陽の光を見て、朝なんだろうなぁ~と漠然に思っていた。
起き上がろうと体に力を込めた時、少し体に重さを感じた。
不思議に思い重みを感じた先を見ると、そこにはイスに座り、そのまま俺の足に上半身を倒して眠るリリムの姿が有った。
ずっと俺に付き添ってくれていたのかな?
疲れて眠るリリムを見て申し訳なく思う。
「リリム……ゴメンな。心配させたんだろうな……」
俺は寝息を静かに立てて未だに眠り続けるリリムの頭をそっと撫でて、小さな声で謝っていた。
「……ぅん?」
「あ。リリム、起こしちゃったな……ごめん」
「へぅ?マサムネ……さん……?」
寝ボケているのか、まだボーとして俺を見るリリム、段々と意識が覚醒してくると顔を真っ赤にさせて、バッと起き上がる。
「あぅ!?ご、ごめんなさいですぅ!」
アタフタして慌てるリリムを見て、何故かホッとする。
暫く落ち着くのを待ってから、リリムに声を掛ける。
「リリム、俺はどれくらい寝てた?」
「はい?あ、えっと、二日です……」
「二日も………」
俺は、まさか二日間も寝ていたとは思わず、少し驚いたが、その二日間リリムが付き添いで側に居てくれたんだろうと考えると、自分の事より、先ずはリリムに謝ろうと口を開く。
「リリム……俺が寝ている間、ずっと側に居てくれたのか?」
「は、はひ!?そ、そんにゃことわないでしゅよ!」
びといカミようを見て「ヤッパリ」と確信した俺は、リリムを見つめて話し出す。
「リリム…心配させちゃってゴメンな。あとありがとう」
と話すと、リリムは首が取れるんじゃないのか?って位に首を左右に振り
「だ、だいじょうぶれすぅぅぅ~!」
……大丈夫には見えなかった。
そんなこんなで30分後………
俺とリリムは部屋から出て朝食を食べに向かっていた。
ここは城塞都市「ウェストレイド」の宿屋だったらしい。
城塞都市の守備隊の好意で、この宿屋を紹介されて、今に至る。と言う訳だ。
ちなみに他のメンバーは、別の部屋に泊まっているらしく、この時間だと先に食堂に居るだろうと二日間なにも食べなかった俺の腹が豪快になったのを切っ掛けに朝飯と相成りました。
俺達が食堂に向かい二階から一階の食堂にと降りていた時、俺は随分と静かだなと感じていた。
時間的にも朝食の一番賑わっているハズ、ここを見た感じ結構大きな宿屋だと思っていたので、それなりに他の客もいると思っていたからだ。
それをリリムに言うと、この宿屋は俺達の為に貸切状態になっているとか………
モンスターを撃退してくれた俺達にせめてもの感謝として貸切状態にしてくれたらしい。
正直、俺は戦闘の記憶が途中からなかった。
だからモンスターを倒したお礼と言われても実感が無い。
何か他人事のように感じる。
「おはよう」
階段を降りると、そこは広い食堂スペースになっていて、50人以上は余裕で入りそうだ。
そんな中に数人の姿が見える。
良く見るとパーティーメンバーだった。
コウ、ハクヨウ、ゴルドーが既に食べ始めている。
ライオウとレツガは亜空間に居るらしいが……後で心配をかけた事を謝りに行こう。(レツガにだけ)
亜空間の出入りは、俺が入る人の魔力を登録すると登録された人は自由に出入り出来る様になる。
何故かライオウだけは、登録前に自由に出入りしてたけどね。
しかし、本当に何でもありだな、あのオッサン。
先ずは、コウとハクヨウに謝ってから席につく。
コウは、魔力切れを起こすと倒れる事は知っていたし、何より俺がモンスターを倒しまくった後にさっぱりした顔で倒れたから心配していなかったとか言っていた。
え?俺、そんなにストレス溜まってたの?
……ま、まぁ確かにスッキリした感じはある…かな?
それはそれとして、ハクヨウは俺と同じで魔力切れを起こした事が無いから、かなり慌てていたらしいけど。
そうか……ハクヨウが……まぁ、最近のイメージのイメージばっかり強く残ってたけど、何だかんだで一番始めに出来た仲間だしな。
まぁ、ちょっとだけ嬉しいかな。
ちょっとだけなんだからね!
リリムは、魔力切れを知ってたし経験もしてたけど、俺が『倒れた』事で頭が真っ白になって怪我をした訳じゃないのに回復魔法をそれこそ倒れるまでかけ続けて俺と一緒に運ばれたんだとか。
途中でリリムが「コウさん!それは言わないで下さい!」と顔を真っ赤にさせ顔を両手で隠してしまった。
そんな感じで賑やかに始まった朝食だった。
目の前にある焼き立てのパンに、ベーコンエッグ、そしてコンポタージュの様なスープ、中々のボリュームだな。
ベーコンは結構厚く切られていて歯応えもある。
ハクヨウはそれを三人前食べたとか……後で謝っておこうかな。
朝食を食べた俺達は、ギルドに行くために仕度を済まして宿屋を出る。
どうやら俺が目を覚ましたらギルドに来る様に、ここのギルドマスターに言われていたらしい。
宿屋のドアを開けた俺は、思わず息を飲んだ。
目の前に拡がる景色。
小高い丘に作られた都市なだけあり、壮大な大地が霞のかかる位の距離まで見通せる、まさに絶景と言える光景だった。
思わず息をのむ。
良く見ると、町の近くには戦いの痕跡が残っていて、それを見て戦った実感がわいてくる。
俺以外のメンバーも最初見た時は同じリアクションをとったらしい、俺は今日が初めてだったから俺一人だけボーッとしてたけど。
それから俺達は、町を見ながらギルドへと足を進めていった。
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