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社交界 復帰
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「神官ヘリオトロープ・クラーク様、マーガレット・ブローディ公爵令嬢のご到着です」
執事の言葉にその場にいた全員が耳を疑った。
マーガレット・ブローディア。
そう言ったのか、と。
全員が階段の方を見る。
あれだけ騒がしかった会場が静寂に包まれる。
あまりの美しさに目を奪われ声を失ったからだ。
マーガレットとヘリオトロープがゆっくりと階段を降り真っ直ぐ国王の元へ向かう。
二人の道を作るように貴族達は真ん中を開け端による。
ヘリオトロープにエスコートされるマーガレットはまるで王族のように見えた。
「我が国の偉大なる太陽と月、お二人にマーガレット・ブローディアとヘリオトロープ・クラークがご挨拶申し上げます」
マーガレットが代表として挨拶しお辞儀するとヘリオトロープも二人にお辞儀をする。
国王は優しい瞳でマーガレットを見つめ、ロベリアは拳を強く握りしめ引きつりそうな顔を何とか耐え笑みを浮かべる。
「顔を上げなさい」
国王の言葉で二人は顔を上げる。
「二人共よく来てくれた。二人共楽しんでくれ」
「はい」
「マーガレット、本当によく来てくれた。ありがとう」
「国王陛下の心遣いに感謝いたします」
ロベリアの方を見ずマーガレットはもう一度お辞儀をしその場から離れる。
国王はマーガレットがまた社交界に出てくれたことを心の底から嬉しく思う。
ロベリアは国王がマーガレットに言った言葉が許せず「今のはどういうつもりですか」と小声で話しかける。
国王はロベリアの声が聞こえていたが無視した。
いや、無視したというよりいない者として扱った。
ロベリアはそんな国王の態度に余計に腹を立てるが、ここで騒いだら王妃としての責任問題を問わられ権限を剥奪されるか最悪その座を降ろされる可能性があるため大人しくしていた。
「おい、本当にあそこにいるのはブローディア公爵令嬢なのか?別人ではないか」
「美しい。あんなに美しい人は初めて見た」
「宝石もドレスも素晴らしいが、それ以上に公爵令嬢が美しい」
その声が国王とロベリアの耳にも届き二人は別々の反応を示す。
「クラーク様、飲みますか?」
ワインを差し出す。
「はい、いただきます。ありがとうございます」
お礼を言いワインを一口飲む。
「クラーク様は人気ものですね」
女性達がクラークを見る目がハートになっている。
話しかけようとするも隣にマーガレットがずっといるので話しかけることもできない。
マーガレットはそんな女性達が自分を見る目に殺意がこもっているのに気づき居心地が悪く早々に帰りたくなる。
「そんなことありませんよ」
どちらかと言うとマーガレット様の方がそうなのでは、と思うもわざわざ言うことでもないかと思い口を閉じる。
「(そんなことあるのよね。こういう男を罪な男というのでしょうね)」
相手の好意を気づいているのかいないのかわからないが、微笑み一つで惚れされる。
今だってヘリオトロープがマーガレットに笑いかけただけで後ろから黄色い歓声が上がる。
マーガレットが答えに悩んでいると音楽が流れ始めた。
「マーガレット様。私と踊ってくださいませんか」
手を前に出しダンスに誘う。
「はい、喜んで」
二人が中央に向かうと視線が二人に集中する。
他にも踊る組はいたが全員が二人に釘づけになる。
曲に合わせて踊っているだけなのに何故か二人の周りだけ別世界になっているのだはないかと疑うくらい輝いていた。
音楽が終わり次の曲が流れるまで誰一人話すことなく二人の踊りをただ黙って見ていた。
曲が終わると二人は踊る場所から離れ休憩する。
「クラーク様、ダンス凄くお上手ですね」
神官なのであまり踊れないと思っていた。
神官もダンスの練習を日頃からしているのではないかと疑うくらいリードが上手く踊りやすかった。
マーガレットは元々ダンスは好きなので社交界に出れなくても家で時々マンクスフドに相手をさえ踊っていたので大した問題はなかった。
貴族達はマーガレット達が下手なダンスを披露するのだろうと期待していたのがそれを見事に打ち砕いた。
「本当ですか。人と踊るのは初めてなので自信はなかったのですが、そう言ってもらえて嬉しいです。ありがとうございます」
パートナーとしてパーティーに参加が決まってからダンスのことを勉強し、マンクスフドにレッスンをしてもらい何とか一通り踊れるようになった。
マーガレットに恥をかかせないよう頑張った甲斐があった。
「え!?今のが初めてだったんですか」
まさかの事実に驚きを隠せない。
「はい」
恥ずかしそうに返事をする。
あれだけ優雅に踊って女性達の視線を独り占めしていたのに。
信じられなかった。
マーガレットが話しかけようと口を開こうとするより先に後ろから「次は私と踊ってくれないか。マーガレット」と声をかけられる。
誰だと後ろを振り向くとそこにいたのは、最初の人生で処刑を命じた第二王子、ゴンフレナがいた。
ゴンフレナと目が合った瞬間、あの日の出来事を一瞬で全て思い出す。
カラントと出会った時と同じくらいの嫌悪感と吐き気が一気に襲ってくる。
今すぐこの場から立ち去りたいのを何とか我慢し耐える。
「(駄目よ。今ここで逃げたら全てが終わる。笑いなさい。貴方は何の為にここに来たの。大切な人達を二度と殺させない為に、守る為にここに来たのよ。マーガレット、大丈夫。あの男でも何とか大丈夫だったんだから、この男も大丈夫よ。だから笑うのよ)」
マーガレットは誰もが美しいと感じる完璧な笑みを浮かべ、ゴンフレナに挨拶した。
「我が国の偉大なる小さな太陽にご挨拶申し上げます」
執事の言葉にその場にいた全員が耳を疑った。
マーガレット・ブローディア。
そう言ったのか、と。
全員が階段の方を見る。
あれだけ騒がしかった会場が静寂に包まれる。
あまりの美しさに目を奪われ声を失ったからだ。
マーガレットとヘリオトロープがゆっくりと階段を降り真っ直ぐ国王の元へ向かう。
二人の道を作るように貴族達は真ん中を開け端による。
ヘリオトロープにエスコートされるマーガレットはまるで王族のように見えた。
「我が国の偉大なる太陽と月、お二人にマーガレット・ブローディアとヘリオトロープ・クラークがご挨拶申し上げます」
マーガレットが代表として挨拶しお辞儀するとヘリオトロープも二人にお辞儀をする。
国王は優しい瞳でマーガレットを見つめ、ロベリアは拳を強く握りしめ引きつりそうな顔を何とか耐え笑みを浮かべる。
「顔を上げなさい」
国王の言葉で二人は顔を上げる。
「二人共よく来てくれた。二人共楽しんでくれ」
「はい」
「マーガレット、本当によく来てくれた。ありがとう」
「国王陛下の心遣いに感謝いたします」
ロベリアの方を見ずマーガレットはもう一度お辞儀をしその場から離れる。
国王はマーガレットがまた社交界に出てくれたことを心の底から嬉しく思う。
ロベリアは国王がマーガレットに言った言葉が許せず「今のはどういうつもりですか」と小声で話しかける。
国王はロベリアの声が聞こえていたが無視した。
いや、無視したというよりいない者として扱った。
ロベリアはそんな国王の態度に余計に腹を立てるが、ここで騒いだら王妃としての責任問題を問わられ権限を剥奪されるか最悪その座を降ろされる可能性があるため大人しくしていた。
「おい、本当にあそこにいるのはブローディア公爵令嬢なのか?別人ではないか」
「美しい。あんなに美しい人は初めて見た」
「宝石もドレスも素晴らしいが、それ以上に公爵令嬢が美しい」
その声が国王とロベリアの耳にも届き二人は別々の反応を示す。
「クラーク様、飲みますか?」
ワインを差し出す。
「はい、いただきます。ありがとうございます」
お礼を言いワインを一口飲む。
「クラーク様は人気ものですね」
女性達がクラークを見る目がハートになっている。
話しかけようとするも隣にマーガレットがずっといるので話しかけることもできない。
マーガレットはそんな女性達が自分を見る目に殺意がこもっているのに気づき居心地が悪く早々に帰りたくなる。
「そんなことありませんよ」
どちらかと言うとマーガレット様の方がそうなのでは、と思うもわざわざ言うことでもないかと思い口を閉じる。
「(そんなことあるのよね。こういう男を罪な男というのでしょうね)」
相手の好意を気づいているのかいないのかわからないが、微笑み一つで惚れされる。
今だってヘリオトロープがマーガレットに笑いかけただけで後ろから黄色い歓声が上がる。
マーガレットが答えに悩んでいると音楽が流れ始めた。
「マーガレット様。私と踊ってくださいませんか」
手を前に出しダンスに誘う。
「はい、喜んで」
二人が中央に向かうと視線が二人に集中する。
他にも踊る組はいたが全員が二人に釘づけになる。
曲に合わせて踊っているだけなのに何故か二人の周りだけ別世界になっているのだはないかと疑うくらい輝いていた。
音楽が終わり次の曲が流れるまで誰一人話すことなく二人の踊りをただ黙って見ていた。
曲が終わると二人は踊る場所から離れ休憩する。
「クラーク様、ダンス凄くお上手ですね」
神官なのであまり踊れないと思っていた。
神官もダンスの練習を日頃からしているのではないかと疑うくらいリードが上手く踊りやすかった。
マーガレットは元々ダンスは好きなので社交界に出れなくても家で時々マンクスフドに相手をさえ踊っていたので大した問題はなかった。
貴族達はマーガレット達が下手なダンスを披露するのだろうと期待していたのがそれを見事に打ち砕いた。
「本当ですか。人と踊るのは初めてなので自信はなかったのですが、そう言ってもらえて嬉しいです。ありがとうございます」
パートナーとしてパーティーに参加が決まってからダンスのことを勉強し、マンクスフドにレッスンをしてもらい何とか一通り踊れるようになった。
マーガレットに恥をかかせないよう頑張った甲斐があった。
「え!?今のが初めてだったんですか」
まさかの事実に驚きを隠せない。
「はい」
恥ずかしそうに返事をする。
あれだけ優雅に踊って女性達の視線を独り占めしていたのに。
信じられなかった。
マーガレットが話しかけようと口を開こうとするより先に後ろから「次は私と踊ってくれないか。マーガレット」と声をかけられる。
誰だと後ろを振り向くとそこにいたのは、最初の人生で処刑を命じた第二王子、ゴンフレナがいた。
ゴンフレナと目が合った瞬間、あの日の出来事を一瞬で全て思い出す。
カラントと出会った時と同じくらいの嫌悪感と吐き気が一気に襲ってくる。
今すぐこの場から立ち去りたいのを何とか我慢し耐える。
「(駄目よ。今ここで逃げたら全てが終わる。笑いなさい。貴方は何の為にここに来たの。大切な人達を二度と殺させない為に、守る為にここに来たのよ。マーガレット、大丈夫。あの男でも何とか大丈夫だったんだから、この男も大丈夫よ。だから笑うのよ)」
マーガレットは誰もが美しいと感じる完璧な笑みを浮かべ、ゴンフレナに挨拶した。
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