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第二王子
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「我が国の偉大なる小さな太陽にご挨拶申し上げます」
「ああ。それで、私と踊ってくれるか」
手を差し出しマーガレットに微笑む。
「はい。私で良ければ喜んでお相手させていただきます」
元々ゴンフレナには近づく予定だった。
向こうから来てくれるなら、それを利用しない手はない。
それでも、あの時の恐怖を思い出して手が震える。
その手を取り二人は中央で先程とは違う曲で踊り始める。
さっきよりテンポが速く明るい曲で盛り上がり始める。
マーガレットがヘリオトロープの傍を離れるとチャンスだと思った女性達がダンスに誘うがただ微笑むだけで何も言わずその場を離れマーガレット達を見つめる。
「久しぶりだね。また踊れる日がくるとは思わなかった」
「ええ、私もそう思ってました」
「妹が本当に失礼な事をした。何度謝っても許されることではない」
顔を歪ませ、申し訳なさそうな顔をする。
「私は気にしていません。ですので、どうか謝らないでください」
本当にマーガレットは気にしていない。
寧ろ感謝していた。
社交界は苦手で嫌いだった。
人の不幸を捜し、人を陥れるのを楽しむ、嘘と打算が入り混じったパーティーなど行きたくなどなかった。
それに、パーティーのためだけに美しいドレスと宝石を身に纏うのも好きではなかった。
無駄な時間を過ごすくらいなら領民の為に何かしてる方が幸せだった。
「ありがとう。君は優しいな。いや、優しすぎる。そのせいで、君が不幸にならないか心配だ」
ゴンフレナは心の底からマーガレットを心配して言った言葉だったが、それがマーガレットの心を酷く傷つけることになった。
「心配ていただき感謝します。ですが、大丈夫です」
必死に強張っていきそうになるのを耐え笑いかける。
「(心配?誰が?誰を?一体どの口が言うのかしら。私を不幸に落とした一人でもある人物が)」
ここがパーティー会場でなかったら、誰も人がいなかったら、間違いなくマーガレットは発狂していた。
一刻も早くこの手から解放されたかったがマーガレットの思いに反して曲は中々終わらなかった。
「マーガレット。言うのが遅くなったが、とても綺麗だ。よく似合っている」
ゴンフレナが笑うと女性達から歓声の声が漏れ、男性達は驚きを隠せなかった。
それもそうだろう。
ゴンフレナは笑わないことで有名で、どれだけ美しい女性が誘惑しても靡くことなどなかった。
そこが素敵だと好意を寄せるものは多々いる。
それなのに、誰も笑わせることができなかったのにマーガレットがそれを成した。
その笑顔を独り占めしている。
ある者は羨み、ある者は珍しいこともあるなと感心し、ある者はどうしてと嘆き、ある者はその笑みを向けられる者を憎んだ。
「……ありがとうございます」
これを言われたのがマーガレットでなければ幸せに感じ心が満たれただろう。
だが、マーガレットの心に響くどころかどんどん冷たく荒んでいった。
二人の心境は真逆だったが、見ている人達にはそれは、それは美しい光景に見えた。
ヘリオトロープの時は輝いて見えたが、今は薔薇の花が舞っているように見えた。
これは夢なのではないかと勘違いしてしまうほど幻想的だった。
曲が終わるとマーガレットはお辞儀をし「殿下と踊れて光栄でした。ありがとうございます」と言うとヘリオトロープの元へと戻る。
ゴンフレナはまだマーガレットと話したかったが、何故か声をかけることが出来ず後ろ姿を見つめることしかできなかった。
どうしようもない不安が押し寄せてきた。
何がそんなに不安なのかわからない。
でも、どんなに手を伸ばしてもマーガレットに触れることができない気がした。
今の今まで手を触れていたというのに。
ゴンフレナがその場に立ち尽くしていると好意を寄せている者達が次は私と踊ってくださいと押し寄せてくる。
王子としてあと何人かと踊らないといけなかったがそんな気分になれず、少し外すと従者に言って庭に出る。
女性達はまたか、とマーガレットだけ相手されたことに憤りを感じる。
久しぶりに来たと思ったら何て生意気な態度なのか、と。
当の本人は睨まれていだが、それどころではなかった。
殺したい程憎い相手、アネモネ・シルバーライスを見つけたからだ。
最初の人生ではアネモネはこのパーティーに参加はしておらず二度目では何故か参加していた。
三度目の今は前回よりも一年早く回帰した。
一年早いこのパーティーに参加するかは賭けに近かったが参加していた。
やはり、この王宮パーティーでアネモネは何かしたのだろうと確信する。
ただ疑問や不審に思うことは多々あったがそれを考えるのは後回しにし、まずはアネモネがしようとしていることを止めることにした。
だが、それが何かはわからないのでアネモネから目を離すわけにはいかない。
そう思ってアネモネばかり見ていたせいでか、自分のところにシレネ達が近づいて来てるのに気がつかなかった。
声をかけられ漸く面倒くさい事に巻き込まれたのだと察した。
「お久しぶりですね。公爵令嬢。とても可愛らしいく成長されましたね」
シレネが取り巻きを引き連れ近づいてくる。
馬鹿にしたようにニヤニヤと笑っている。
可愛らしく成長、その言葉の真意は「子供のまま大人にも慣れない。背伸びするしかなくて可哀想な子」と言っているのだ。
シレネ達はマーガレットのドレスが素敵だと認めているが、胸元はあいてなく隠されている。
逆にシレネ達は胸元が見えるドレス。
大人っぽいと女性が憧れるドレス。
胸が大きくないと着れないドレス。
マーガレットは胸を隠しているので見せる胸がないのだろうと馬鹿にされているのだ。
「はい、お久しぶりです。侯爵夫人。侯爵様はお元気ですか」
最後の一言で取り巻き達の顔色は変わり、シレネは顔を真っ赤にする。
シレネが現国王の弟、もう一つの公爵家の当主の愛人だということは有名な話。
未婚女性が愛人になる事はできない為、体が不自由で年寄り、あまり金もなく逆らわない男を選んで結婚しただけ。
夫婦関係なんて結婚したときからそんなものはない。
それは誰もが知っていること。
結婚したくてしたわけではなく、シレネにとっては消してしまいたい出来事。
ただ結婚しなければこの地位を手に入れる事はできなかった為我慢しただけ。
だから、もしこの事で馬鹿にしてくるものがいたら貴族だろうと使用人だろうと容赦なく痛めつけ逆らえないようにした。
いくら、社交界から遠ざっていたからといって許される言葉ではない。
勿論これがマーガレットでなければの話だ。
そして、このパーティーが王宮主催のものでなければシレネは間違いなくマーガレットをぶっていただろう。
「ええ、元気だと思いますよ」
引きつりそうな顔でそう返すのがやっとだった。
「そうですか。それはよかったです」
笑顔でそう返す。
二人のやり取りを見ていた周りの貴族達はマーガレットの悪意ない言葉でシレネのプライドがズタズタになっていくのが面白くてつい失笑してしまう。
ただ一つ貴族達は誤解していた。
マーガレットはわざとシレネのプライドが傷つく事を言ったのだ。
「ああ。それで、私と踊ってくれるか」
手を差し出しマーガレットに微笑む。
「はい。私で良ければ喜んでお相手させていただきます」
元々ゴンフレナには近づく予定だった。
向こうから来てくれるなら、それを利用しない手はない。
それでも、あの時の恐怖を思い出して手が震える。
その手を取り二人は中央で先程とは違う曲で踊り始める。
さっきよりテンポが速く明るい曲で盛り上がり始める。
マーガレットがヘリオトロープの傍を離れるとチャンスだと思った女性達がダンスに誘うがただ微笑むだけで何も言わずその場を離れマーガレット達を見つめる。
「久しぶりだね。また踊れる日がくるとは思わなかった」
「ええ、私もそう思ってました」
「妹が本当に失礼な事をした。何度謝っても許されることではない」
顔を歪ませ、申し訳なさそうな顔をする。
「私は気にしていません。ですので、どうか謝らないでください」
本当にマーガレットは気にしていない。
寧ろ感謝していた。
社交界は苦手で嫌いだった。
人の不幸を捜し、人を陥れるのを楽しむ、嘘と打算が入り混じったパーティーなど行きたくなどなかった。
それに、パーティーのためだけに美しいドレスと宝石を身に纏うのも好きではなかった。
無駄な時間を過ごすくらいなら領民の為に何かしてる方が幸せだった。
「ありがとう。君は優しいな。いや、優しすぎる。そのせいで、君が不幸にならないか心配だ」
ゴンフレナは心の底からマーガレットを心配して言った言葉だったが、それがマーガレットの心を酷く傷つけることになった。
「心配ていただき感謝します。ですが、大丈夫です」
必死に強張っていきそうになるのを耐え笑いかける。
「(心配?誰が?誰を?一体どの口が言うのかしら。私を不幸に落とした一人でもある人物が)」
ここがパーティー会場でなかったら、誰も人がいなかったら、間違いなくマーガレットは発狂していた。
一刻も早くこの手から解放されたかったがマーガレットの思いに反して曲は中々終わらなかった。
「マーガレット。言うのが遅くなったが、とても綺麗だ。よく似合っている」
ゴンフレナが笑うと女性達から歓声の声が漏れ、男性達は驚きを隠せなかった。
それもそうだろう。
ゴンフレナは笑わないことで有名で、どれだけ美しい女性が誘惑しても靡くことなどなかった。
そこが素敵だと好意を寄せるものは多々いる。
それなのに、誰も笑わせることができなかったのにマーガレットがそれを成した。
その笑顔を独り占めしている。
ある者は羨み、ある者は珍しいこともあるなと感心し、ある者はどうしてと嘆き、ある者はその笑みを向けられる者を憎んだ。
「……ありがとうございます」
これを言われたのがマーガレットでなければ幸せに感じ心が満たれただろう。
だが、マーガレットの心に響くどころかどんどん冷たく荒んでいった。
二人の心境は真逆だったが、見ている人達にはそれは、それは美しい光景に見えた。
ヘリオトロープの時は輝いて見えたが、今は薔薇の花が舞っているように見えた。
これは夢なのではないかと勘違いしてしまうほど幻想的だった。
曲が終わるとマーガレットはお辞儀をし「殿下と踊れて光栄でした。ありがとうございます」と言うとヘリオトロープの元へと戻る。
ゴンフレナはまだマーガレットと話したかったが、何故か声をかけることが出来ず後ろ姿を見つめることしかできなかった。
どうしようもない不安が押し寄せてきた。
何がそんなに不安なのかわからない。
でも、どんなに手を伸ばしてもマーガレットに触れることができない気がした。
今の今まで手を触れていたというのに。
ゴンフレナがその場に立ち尽くしていると好意を寄せている者達が次は私と踊ってくださいと押し寄せてくる。
王子としてあと何人かと踊らないといけなかったがそんな気分になれず、少し外すと従者に言って庭に出る。
女性達はまたか、とマーガレットだけ相手されたことに憤りを感じる。
久しぶりに来たと思ったら何て生意気な態度なのか、と。
当の本人は睨まれていだが、それどころではなかった。
殺したい程憎い相手、アネモネ・シルバーライスを見つけたからだ。
最初の人生ではアネモネはこのパーティーに参加はしておらず二度目では何故か参加していた。
三度目の今は前回よりも一年早く回帰した。
一年早いこのパーティーに参加するかは賭けに近かったが参加していた。
やはり、この王宮パーティーでアネモネは何かしたのだろうと確信する。
ただ疑問や不審に思うことは多々あったがそれを考えるのは後回しにし、まずはアネモネがしようとしていることを止めることにした。
だが、それが何かはわからないのでアネモネから目を離すわけにはいかない。
そう思ってアネモネばかり見ていたせいでか、自分のところにシレネ達が近づいて来てるのに気がつかなかった。
声をかけられ漸く面倒くさい事に巻き込まれたのだと察した。
「お久しぶりですね。公爵令嬢。とても可愛らしいく成長されましたね」
シレネが取り巻きを引き連れ近づいてくる。
馬鹿にしたようにニヤニヤと笑っている。
可愛らしく成長、その言葉の真意は「子供のまま大人にも慣れない。背伸びするしかなくて可哀想な子」と言っているのだ。
シレネ達はマーガレットのドレスが素敵だと認めているが、胸元はあいてなく隠されている。
逆にシレネ達は胸元が見えるドレス。
大人っぽいと女性が憧れるドレス。
胸が大きくないと着れないドレス。
マーガレットは胸を隠しているので見せる胸がないのだろうと馬鹿にされているのだ。
「はい、お久しぶりです。侯爵夫人。侯爵様はお元気ですか」
最後の一言で取り巻き達の顔色は変わり、シレネは顔を真っ赤にする。
シレネが現国王の弟、もう一つの公爵家の当主の愛人だということは有名な話。
未婚女性が愛人になる事はできない為、体が不自由で年寄り、あまり金もなく逆らわない男を選んで結婚しただけ。
夫婦関係なんて結婚したときからそんなものはない。
それは誰もが知っていること。
結婚したくてしたわけではなく、シレネにとっては消してしまいたい出来事。
ただ結婚しなければこの地位を手に入れる事はできなかった為我慢しただけ。
だから、もしこの事で馬鹿にしてくるものがいたら貴族だろうと使用人だろうと容赦なく痛めつけ逆らえないようにした。
いくら、社交界から遠ざっていたからといって許される言葉ではない。
勿論これがマーガレットでなければの話だ。
そして、このパーティーが王宮主催のものでなければシレネは間違いなくマーガレットをぶっていただろう。
「ええ、元気だと思いますよ」
引きつりそうな顔でそう返すのがやっとだった。
「そうですか。それはよかったです」
笑顔でそう返す。
二人のやり取りを見ていた周りの貴族達はマーガレットの悪意ない言葉でシレネのプライドがズタズタになっていくのが面白くてつい失笑してしまう。
ただ一つ貴族達は誤解していた。
マーガレットはわざとシレネのプライドが傷つく事を言ったのだ。
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