言葉の暴力で世界最強! 消えたヒロインを追い求めて世界へ! 幼馴染に告白するつもりがなぜかモンスターに愛の告白を

二廻歩

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森の精霊風モンスター・モーリン

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船の旅二日目。
日差しも強くなく気候も穏やか。
まるで俺たちを祝福してるかのよう。

昨夜看病した爺さんは完全回復したらしくうるさいほど元気。
アトリも鼻歌を歌ってこちらも上機嫌。何かいいことあったけ? 
それで俺はと言うと船酔いがまだ。

「では良いところを紹介してやろう。とっておきの場所じゃ」
お爺さんの案内を受ける。
とにかく今は体調を戻すことが先決。
もうレベルアップしたので今後酔うことはないだろうが。
「こっちじゃついて参れ! 」
本当に元気な爺だ。こっちの気も知らないで。
まだ船酔いは治まってないんだぞ。

ついて来いと言われてついて行くのは間抜けぐらいな者。
「では参りましょうかご主人様」
アトリは元気一杯な上にご機嫌。本当に何か良いことあったの?
間抜けな二人は言われるままお爺さんの後へ。

「なあアトリ。ここはどの辺りだ? 」
始まりの港からさほどたっていない。
真っ暗だったので出港から十二時間ってところだろうか。
「ご主人様が分からないものをアトリなどが知りようもありません」
何だかんだ言い訳が得意な妖精さん。第三世界のスペシャリストではないらしい。
「お前は案内役だろうが? 」
アトリの正体を探る。

「アトリはご主人様の監視役であって案内役ではありません! 」
うわ…… 正直過ぎるよ。もっとオブラートに包まなくちゃ。
どうやらアトリには悪意はなさそうだ。
単なる命令されたロボットだからな。感情など無いのだろう。
「おいそこ! ブツブツ言うでない! 」
お爺さんが見せたいものがあると俺たちを引っ張り回す。

そこは自然豊かな森だった。
うおおお!
大自然に圧倒されているとモンスターらしき生物を捉える。
ついに第一モンスターに遭遇。
よしワードフォルダーから暴言カードを取り出し準備完了。

モーリンが姿を見せる。
モーリンはこの地域に生息するレアモンスター。
ただ消極的で目を合わせなければ攻撃を仕掛けてこない。
お爺さんが言うにはこのモーリンを捕えて食ってしまおうと言うことらしい。
何て大胆で残酷な爺なのだろう? とてもじゃないが賛成出来ない。

「あの…… 」
さすがに大人しいモンスターまで狩る必要はない。
ただ挨拶をして立ち去るのがマナーだろう。
「化け物め! 儂が成敗してやる! 」
そう言うと手際よく猟銃を組み立て三分後にはモーリンに銃を向ける。
何て野蛮な爺さんだろう? ついて行けない。

「ご主人様。どういたしましょう? 」
なぜか大人しく見守っていたアトリがそわそわしだした。
「止めた方がいいよね…… 」
「ではこの新しいワードフォルダーをお使いください」
こうして最新式の言葉の暴力を手に入れた。

さっそく試してみる。
適当なカードを選んで爺さんに向け発射。
その衝撃で猟銃は照準が狂う。
「何をする? せっかくの獲物をみすみす見逃すとは! 」
怒りに任せ銃口を向けるとんでもない爺さん。
これでは正夢になってしまう。

「ほらモーリン。今だ逃げるんだ! 」
モーリンは恐怖で震えていたがどうにか足が動くようになったらしい。
こちらに礼をすると行ってしまった。
「クソ! もう少しだと言うのに邪魔をしおって。どう言う了見じゃ? 」
もう発射寸前。理性で保ってるとは思うが爺さんだから我慢は出来ないだろう。
モンスター狩りを楽しむどうしようもない爺さん。
これではただの弱い者いじめ。

「ふざけるな! 」
「俺は間違ってない! アトリも何か言ってやってくれよ」
「お爺さん。ご主人様を許してあげてください」
なぜかアトリが謝る。
「俺は悪くない! 」
「何を抜かす? それなら儂だって悪くないわ! 
せっかくモーリン汁をご馳走してやろうとしたのに。もう知らん! 」
「まあまあお二人とも抑えて抑えて」
アトリの機転で口論は収まったがお爺さんを怒らせる。行ってしまった。
これはまずいことになったな?

「申し訳ございませんご主人様! 」
「アトリが謝ることじゃないよ。悪いのは全部あの爺さんなんだからさ」
それにしても明らかに人間の爺さんに言葉の暴力を浴びせたのに警告がない。
これは一体? 免除されたとでも?
 
アトリに問い質す。
「はい改良を重ねた結果たとえ人間に言葉の暴力を発しても警告はありません。
ですから次回から安心してお使いください」
おお新しい展開。さすがはアトリだ。

                  続く
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