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ダイイングメッセージの謎
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ラストは第四の被害者。
九号室。千田の部屋。
ノックをしても反応がないので仕方なくガイドさんのマスターキーで開錠。
そこには信じられない光景が。
「おい! おい! 寝てるんじゃない! 」
相棒は気持ちよくお昼寝。
死体と一緒に寝そべるその神経が分からない。
図太いと言うかおおらかと言うか。言葉が見つからない。
「ふあああ…… どうしたの? 」
呑気に欠伸をする困った奴。
「何をやってる? お遊びじゃないんだぞ! 」
遺体の保存を終え眠りこけていた相棒を叩き起こす。
「あああ…… ごめん寝ちゃった。まあいいか」
「仕方ない奴だな。それで何か分かったか? 」
「死亡推定時刻は大雑把に夕食後から朝までの間。
これは犯行可能時刻とも一致するからほとんど意味ないよね。
まあ実際は目を離した隙に中に入ったと思う。そこで油断して殺害されたと」
相棒の読みは私の見解と大きく違わない。大体こんなものだろう。
「雑見のダイイングメッセージについては何か分かったか? 」
「うーん。解明にはもうちょっと時間が。こう言うのは専門家に任せた方がいいよ」
状況を理解してるくせに適当なことを言ってごまかそうとする。
「だからここには専門家はいない。お前しかいないんだ。頼むよ先生」
単純な相棒を煽てて真相解明を急かす。
この程度で解決できるならいくらだって。
「へへへ…… 困ったな。だったら一つ。『ドスグロ山』を繰り返してみて」
遊んでる時じゃないんだけどな。仕方がないか。
「『ドスグロ山』、『ドスグロ山』、『ドスグロ山』…… 」
「そうじゃなくてもっと早く。十回繰り返してみて」
「ドスグロ山。ドスグロ山…… 」
言われた通り十回繰り返す。
「どう? 」
「どうと言われても…… 」
意味不明。ただのごまかしの上に時間稼ぎじゃないか。無駄なことを。
「仕方ないな。ガイドさんやってみて」
「はい分かりました。ドスグロ山。ドスグロ山…… 」
素直に従う連続第一発見者の彼女。
疑うと言うことを知らないのだろうか?
「どう? 」
「はい、何となく」
「そうだよね。被害者の最後の言葉の意味が分かったでしょう? 」
「はい、何となく分かりました」
相棒に唆されガイドさんは頷くばかり。
「何が分かったって言うんだ? 」
「ごめん。まだ不確かだから確認してから話すよ」
勝手に話を閉じる。本当に困った奴だ。
「分かった。話せることを頼む」
「雑見は殺されるまでに時間があったから例のメッセージを残したと思う。
なぜ真犯人が気付かなかったか? それとも気づいたが意味不明なのでそのままに。
僕は後者だと思う。犯人は随分悩んだはずだ。それでも大丈夫と踏んだんだよ」
相棒はなおも続ける。
雑見によるダイイングメッセージの謎。
「密室で撲殺。なぜかダイイングメッセージが残されていた。
この意味不明な暗号は僕たちに向けたものに違いない」
自信たっぷりにそう断言する相棒。
「待ってくれ。暗号ってのは何となく分かるがドスグロ山だけでは何が何だか。
もう解いたと言うならもったいぶらずに教えてくれ」
「だからまだ無理だって。とにかく続けよう。
雑見が暗号を残したのは事実だがそれが簡単過ぎては犯人に隠滅されるよ。
だから敢えてドスグロ山にしたんだと思う」
ドスグロに一体どんな意味があると言うのか?
あるとしたら山の名前かまたはホテルについてだろうがまったく思いつかない。
「ダメだ。思いつかない」
「その前にさ。何でダイイングメッセージを残したと思う? 」
「それは最後の悪あがきかな」
「そう正解」
相棒はあっさり認める。
「正解ってどう言うことでしょう? 」
第一発見者のガイドさんも興味津々。
「犯人に気付かれずにどうしても犯人が誰か訴えたかった。
そもそも被害者の雑見の精神状態を考えると誰が犯人か自ずと分かってこない? 」
相棒はお得意の意味深発言で注意を惹きつけるがその推理が合ってる保障はない。
そもそも証拠もなく想像で決めつける傾向にある。
困ったもので手に負えない。注意するが決して聞きはしない。
雑見氏の心理を読むことが事件解決の近道。
そう言われても何の確証もない上に頭が回らない。
この手のことは相棒が専門。
私だってやってできないこともないがいつも優秀な助手がいたものだから……
すっかり腕が錆びついた。これも日頃の体たらくが招いたこと。
反省して済むような問題ではない。
相棒は口を噤んでしまう。
「知ってるなら教えてくれ! 今は一刻も早く事件を解決しないといけないんだ。
それが被害者の無念を晴らすことにも繋がるのだから」
説得にかかるが心変わりしたのか忘れてくれと言うのみで相手にしない。
何てマイペースな奴なのか。
「とにかく暗号を解けば分かるよ」
機嫌を損ねる前に別れることにした。
暗号は後回しにする。
続く
九号室。千田の部屋。
ノックをしても反応がないので仕方なくガイドさんのマスターキーで開錠。
そこには信じられない光景が。
「おい! おい! 寝てるんじゃない! 」
相棒は気持ちよくお昼寝。
死体と一緒に寝そべるその神経が分からない。
図太いと言うかおおらかと言うか。言葉が見つからない。
「ふあああ…… どうしたの? 」
呑気に欠伸をする困った奴。
「何をやってる? お遊びじゃないんだぞ! 」
遺体の保存を終え眠りこけていた相棒を叩き起こす。
「あああ…… ごめん寝ちゃった。まあいいか」
「仕方ない奴だな。それで何か分かったか? 」
「死亡推定時刻は大雑把に夕食後から朝までの間。
これは犯行可能時刻とも一致するからほとんど意味ないよね。
まあ実際は目を離した隙に中に入ったと思う。そこで油断して殺害されたと」
相棒の読みは私の見解と大きく違わない。大体こんなものだろう。
「雑見のダイイングメッセージについては何か分かったか? 」
「うーん。解明にはもうちょっと時間が。こう言うのは専門家に任せた方がいいよ」
状況を理解してるくせに適当なことを言ってごまかそうとする。
「だからここには専門家はいない。お前しかいないんだ。頼むよ先生」
単純な相棒を煽てて真相解明を急かす。
この程度で解決できるならいくらだって。
「へへへ…… 困ったな。だったら一つ。『ドスグロ山』を繰り返してみて」
遊んでる時じゃないんだけどな。仕方がないか。
「『ドスグロ山』、『ドスグロ山』、『ドスグロ山』…… 」
「そうじゃなくてもっと早く。十回繰り返してみて」
「ドスグロ山。ドスグロ山…… 」
言われた通り十回繰り返す。
「どう? 」
「どうと言われても…… 」
意味不明。ただのごまかしの上に時間稼ぎじゃないか。無駄なことを。
「仕方ないな。ガイドさんやってみて」
「はい分かりました。ドスグロ山。ドスグロ山…… 」
素直に従う連続第一発見者の彼女。
疑うと言うことを知らないのだろうか?
「どう? 」
「はい、何となく」
「そうだよね。被害者の最後の言葉の意味が分かったでしょう? 」
「はい、何となく分かりました」
相棒に唆されガイドさんは頷くばかり。
「何が分かったって言うんだ? 」
「ごめん。まだ不確かだから確認してから話すよ」
勝手に話を閉じる。本当に困った奴だ。
「分かった。話せることを頼む」
「雑見は殺されるまでに時間があったから例のメッセージを残したと思う。
なぜ真犯人が気付かなかったか? それとも気づいたが意味不明なのでそのままに。
僕は後者だと思う。犯人は随分悩んだはずだ。それでも大丈夫と踏んだんだよ」
相棒はなおも続ける。
雑見によるダイイングメッセージの謎。
「密室で撲殺。なぜかダイイングメッセージが残されていた。
この意味不明な暗号は僕たちに向けたものに違いない」
自信たっぷりにそう断言する相棒。
「待ってくれ。暗号ってのは何となく分かるがドスグロ山だけでは何が何だか。
もう解いたと言うならもったいぶらずに教えてくれ」
「だからまだ無理だって。とにかく続けよう。
雑見が暗号を残したのは事実だがそれが簡単過ぎては犯人に隠滅されるよ。
だから敢えてドスグロ山にしたんだと思う」
ドスグロに一体どんな意味があると言うのか?
あるとしたら山の名前かまたはホテルについてだろうがまったく思いつかない。
「ダメだ。思いつかない」
「その前にさ。何でダイイングメッセージを残したと思う? 」
「それは最後の悪あがきかな」
「そう正解」
相棒はあっさり認める。
「正解ってどう言うことでしょう? 」
第一発見者のガイドさんも興味津々。
「犯人に気付かれずにどうしても犯人が誰か訴えたかった。
そもそも被害者の雑見の精神状態を考えると誰が犯人か自ずと分かってこない? 」
相棒はお得意の意味深発言で注意を惹きつけるがその推理が合ってる保障はない。
そもそも証拠もなく想像で決めつける傾向にある。
困ったもので手に負えない。注意するが決して聞きはしない。
雑見氏の心理を読むことが事件解決の近道。
そう言われても何の確証もない上に頭が回らない。
この手のことは相棒が専門。
私だってやってできないこともないがいつも優秀な助手がいたものだから……
すっかり腕が錆びついた。これも日頃の体たらくが招いたこと。
反省して済むような問題ではない。
相棒は口を噤んでしまう。
「知ってるなら教えてくれ! 今は一刻も早く事件を解決しないといけないんだ。
それが被害者の無念を晴らすことにも繋がるのだから」
説得にかかるが心変わりしたのか忘れてくれと言うのみで相手にしない。
何てマイペースな奴なのか。
「とにかく暗号を解けば分かるよ」
機嫌を損ねる前に別れることにした。
暗号は後回しにする。
続く
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