61 / 122
ダイイングメッセージの謎
しおりを挟む
ラストは第四の被害者。
九号室。千田の部屋。
ノックをしても反応がないので仕方なくガイドさんのマスターキーで開錠。
そこには信じられない光景が。
「おい! おい! 寝てるんじゃない! 」
相棒は気持ちよくお昼寝。
死体と一緒に寝そべるその神経が分からない。
図太いと言うかおおらかと言うか。言葉が見つからない。
「ふあああ…… どうしたの? 」
呑気に欠伸をする困った奴。
「何をやってる? お遊びじゃないんだぞ! 」
遺体の保存を終え眠りこけていた相棒を叩き起こす。
「あああ…… ごめん寝ちゃった。まあいいか」
「仕方ない奴だな。それで何か分かったか? 」
「死亡推定時刻は大雑把に夕食後から朝までの間。
これは犯行可能時刻とも一致するからほとんど意味ないよね。
まあ実際は目を離した隙に中に入ったと思う。そこで油断して殺害されたと」
相棒の読みは私の見解と大きく違わない。大体こんなものだろう。
「雑見のダイイングメッセージについては何か分かったか? 」
「うーん。解明にはもうちょっと時間が。こう言うのは専門家に任せた方がいいよ」
状況を理解してるくせに適当なことを言ってごまかそうとする。
「だからここには専門家はいない。お前しかいないんだ。頼むよ先生」
単純な相棒を煽てて真相解明を急かす。
この程度で解決できるならいくらだって。
「へへへ…… 困ったな。だったら一つ。『ドスグロ山』を繰り返してみて」
遊んでる時じゃないんだけどな。仕方がないか。
「『ドスグロ山』、『ドスグロ山』、『ドスグロ山』…… 」
「そうじゃなくてもっと早く。十回繰り返してみて」
「ドスグロ山。ドスグロ山…… 」
言われた通り十回繰り返す。
「どう? 」
「どうと言われても…… 」
意味不明。ただのごまかしの上に時間稼ぎじゃないか。無駄なことを。
「仕方ないな。ガイドさんやってみて」
「はい分かりました。ドスグロ山。ドスグロ山…… 」
素直に従う連続第一発見者の彼女。
疑うと言うことを知らないのだろうか?
「どう? 」
「はい、何となく」
「そうだよね。被害者の最後の言葉の意味が分かったでしょう? 」
「はい、何となく分かりました」
相棒に唆されガイドさんは頷くばかり。
「何が分かったって言うんだ? 」
「ごめん。まだ不確かだから確認してから話すよ」
勝手に話を閉じる。本当に困った奴だ。
「分かった。話せることを頼む」
「雑見は殺されるまでに時間があったから例のメッセージを残したと思う。
なぜ真犯人が気付かなかったか? それとも気づいたが意味不明なのでそのままに。
僕は後者だと思う。犯人は随分悩んだはずだ。それでも大丈夫と踏んだんだよ」
相棒はなおも続ける。
雑見によるダイイングメッセージの謎。
「密室で撲殺。なぜかダイイングメッセージが残されていた。
この意味不明な暗号は僕たちに向けたものに違いない」
自信たっぷりにそう断言する相棒。
「待ってくれ。暗号ってのは何となく分かるがドスグロ山だけでは何が何だか。
もう解いたと言うならもったいぶらずに教えてくれ」
「だからまだ無理だって。とにかく続けよう。
雑見が暗号を残したのは事実だがそれが簡単過ぎては犯人に隠滅されるよ。
だから敢えてドスグロ山にしたんだと思う」
ドスグロに一体どんな意味があると言うのか?
あるとしたら山の名前かまたはホテルについてだろうがまったく思いつかない。
「ダメだ。思いつかない」
「その前にさ。何でダイイングメッセージを残したと思う? 」
「それは最後の悪あがきかな」
「そう正解」
相棒はあっさり認める。
「正解ってどう言うことでしょう? 」
第一発見者のガイドさんも興味津々。
「犯人に気付かれずにどうしても犯人が誰か訴えたかった。
そもそも被害者の雑見の精神状態を考えると誰が犯人か自ずと分かってこない? 」
相棒はお得意の意味深発言で注意を惹きつけるがその推理が合ってる保障はない。
そもそも証拠もなく想像で決めつける傾向にある。
困ったもので手に負えない。注意するが決して聞きはしない。
雑見氏の心理を読むことが事件解決の近道。
そう言われても何の確証もない上に頭が回らない。
この手のことは相棒が専門。
私だってやってできないこともないがいつも優秀な助手がいたものだから……
すっかり腕が錆びついた。これも日頃の体たらくが招いたこと。
反省して済むような問題ではない。
相棒は口を噤んでしまう。
「知ってるなら教えてくれ! 今は一刻も早く事件を解決しないといけないんだ。
それが被害者の無念を晴らすことにも繋がるのだから」
説得にかかるが心変わりしたのか忘れてくれと言うのみで相手にしない。
何てマイペースな奴なのか。
「とにかく暗号を解けば分かるよ」
機嫌を損ねる前に別れることにした。
暗号は後回しにする。
続く
九号室。千田の部屋。
ノックをしても反応がないので仕方なくガイドさんのマスターキーで開錠。
そこには信じられない光景が。
「おい! おい! 寝てるんじゃない! 」
相棒は気持ちよくお昼寝。
死体と一緒に寝そべるその神経が分からない。
図太いと言うかおおらかと言うか。言葉が見つからない。
「ふあああ…… どうしたの? 」
呑気に欠伸をする困った奴。
「何をやってる? お遊びじゃないんだぞ! 」
遺体の保存を終え眠りこけていた相棒を叩き起こす。
「あああ…… ごめん寝ちゃった。まあいいか」
「仕方ない奴だな。それで何か分かったか? 」
「死亡推定時刻は大雑把に夕食後から朝までの間。
これは犯行可能時刻とも一致するからほとんど意味ないよね。
まあ実際は目を離した隙に中に入ったと思う。そこで油断して殺害されたと」
相棒の読みは私の見解と大きく違わない。大体こんなものだろう。
「雑見のダイイングメッセージについては何か分かったか? 」
「うーん。解明にはもうちょっと時間が。こう言うのは専門家に任せた方がいいよ」
状況を理解してるくせに適当なことを言ってごまかそうとする。
「だからここには専門家はいない。お前しかいないんだ。頼むよ先生」
単純な相棒を煽てて真相解明を急かす。
この程度で解決できるならいくらだって。
「へへへ…… 困ったな。だったら一つ。『ドスグロ山』を繰り返してみて」
遊んでる時じゃないんだけどな。仕方がないか。
「『ドスグロ山』、『ドスグロ山』、『ドスグロ山』…… 」
「そうじゃなくてもっと早く。十回繰り返してみて」
「ドスグロ山。ドスグロ山…… 」
言われた通り十回繰り返す。
「どう? 」
「どうと言われても…… 」
意味不明。ただのごまかしの上に時間稼ぎじゃないか。無駄なことを。
「仕方ないな。ガイドさんやってみて」
「はい分かりました。ドスグロ山。ドスグロ山…… 」
素直に従う連続第一発見者の彼女。
疑うと言うことを知らないのだろうか?
「どう? 」
「はい、何となく」
「そうだよね。被害者の最後の言葉の意味が分かったでしょう? 」
「はい、何となく分かりました」
相棒に唆されガイドさんは頷くばかり。
「何が分かったって言うんだ? 」
「ごめん。まだ不確かだから確認してから話すよ」
勝手に話を閉じる。本当に困った奴だ。
「分かった。話せることを頼む」
「雑見は殺されるまでに時間があったから例のメッセージを残したと思う。
なぜ真犯人が気付かなかったか? それとも気づいたが意味不明なのでそのままに。
僕は後者だと思う。犯人は随分悩んだはずだ。それでも大丈夫と踏んだんだよ」
相棒はなおも続ける。
雑見によるダイイングメッセージの謎。
「密室で撲殺。なぜかダイイングメッセージが残されていた。
この意味不明な暗号は僕たちに向けたものに違いない」
自信たっぷりにそう断言する相棒。
「待ってくれ。暗号ってのは何となく分かるがドスグロ山だけでは何が何だか。
もう解いたと言うならもったいぶらずに教えてくれ」
「だからまだ無理だって。とにかく続けよう。
雑見が暗号を残したのは事実だがそれが簡単過ぎては犯人に隠滅されるよ。
だから敢えてドスグロ山にしたんだと思う」
ドスグロに一体どんな意味があると言うのか?
あるとしたら山の名前かまたはホテルについてだろうがまったく思いつかない。
「ダメだ。思いつかない」
「その前にさ。何でダイイングメッセージを残したと思う? 」
「それは最後の悪あがきかな」
「そう正解」
相棒はあっさり認める。
「正解ってどう言うことでしょう? 」
第一発見者のガイドさんも興味津々。
「犯人に気付かれずにどうしても犯人が誰か訴えたかった。
そもそも被害者の雑見の精神状態を考えると誰が犯人か自ずと分かってこない? 」
相棒はお得意の意味深発言で注意を惹きつけるがその推理が合ってる保障はない。
そもそも証拠もなく想像で決めつける傾向にある。
困ったもので手に負えない。注意するが決して聞きはしない。
雑見氏の心理を読むことが事件解決の近道。
そう言われても何の確証もない上に頭が回らない。
この手のことは相棒が専門。
私だってやってできないこともないがいつも優秀な助手がいたものだから……
すっかり腕が錆びついた。これも日頃の体たらくが招いたこと。
反省して済むような問題ではない。
相棒は口を噤んでしまう。
「知ってるなら教えてくれ! 今は一刻も早く事件を解決しないといけないんだ。
それが被害者の無念を晴らすことにも繋がるのだから」
説得にかかるが心変わりしたのか忘れてくれと言うのみで相手にしない。
何てマイペースな奴なのか。
「とにかく暗号を解けば分かるよ」
機嫌を損ねる前に別れることにした。
暗号は後回しにする。
続く
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる