108 / 122
手のひらの真実
しおりを挟む
我慢しきれず小駒さんが暴走。もう滅茶苦茶。悉く邪魔をする困った人。
これなら大人しくお部屋に籠ってくれた方がどれだけ助かったか。
そんなタマではないのは百も承知だが。
彼女に加え黒木までいるから手に負えない。二人とも縛り付けておくべきか?
現場が混乱しコントロールを失えば真犯人の思う壺。
それだけはどうしても避けなければならない。
相棒に合図を送る。
これで大人しくなるかと思いきや何を勘違いしたのか相棒はウィンクを返した。
おいおい! まさか本気じゃないよな?
ふう…… 暑くて堪らない。どうしてか暑くて暑くて堪らない。
汗が噴き出てくる。拭っても拭っても大量の汗が流れ出る。
真犯人は頑な。邪魔は入るし相棒はポンコツだし。
どうしてこうなった? 思っていた展開とこれほどまで違うものか?
今すぐにでもガイドさんの胸に飛び込みたい。
そんな衝動に駆られるがもちろん我慢だ。冷静にならなくては。
「では第四の事件の疑問。どうして千田さんはこんなにも簡単に殺されたのか。
皆さん不思議に思いませんか? はい黒木さん」
「俺? ああ確かに不思議だよな。仲間が次々殺されてるのになぜ不用意に開ける?
それとも鍵は真犯人の手の中だったのか? 」
意外にも冷静で鋭い指摘に驚く。
「それはあり得ません。現場に鍵が。少なくとも侵入は出来なかったかと。
もちろん十号室のマジシャンが真犯人なら突破できますがね。どうです? 」
「おいおい。こっちに振らないでくれよ」
今まで大人しく見守っていたマジシャンの慌てた表情。
「申し訳ありません。ですがあなたの潔白を証明しなければ次に進めない」
「もう探偵さんも困った人だ。いいでしょう協力しましょう。
確かに第四の事件はそうかもしれません。でも私には第三までの犯行が不可能。
それに一連の殺人事件には一切関わっておりません」
マジシャンは否定して見せる。だが話を聞いただけでは潔白とはならない。
「では手を見せてください」
マジシャンの彼は手を見られるのを極端に嫌う。それ故まだ疑いが晴れてない。
「まったく分かりましたよ。見せればいいんでしょう? では探偵さんこっちに」
観念したマジシャンはこっそり手の内を見せる。
指の一本一本をじっくり見て行く。
うーん。別段おかしな点は見られない。
「もういいだろ? これでも商売道具なんだからさ」
「ありがとうございます。きれいな手をされていました。細くしなやかで…… 」
「おい! それ以上は止めろ! 営業妨害だぞ! 」
常に冷静だったマジシャンが取り乱す。
少々疑わしいが素直に応じたことから問題ないでしょう。
「ちなみに共犯だとか? 」
「それもありません! ただ私も犯罪被害者の会のメンバー。
彼らを恨んでるかと問われればそちらの真犯人候補さんと同じ。
それ以上に恨んでいると言ってもいい。ですが私たちは自分が酷い目にあっただけ。
それ以上でもそれ以下でもありません。
今回だって副会長さんからの呼びかけがあって参加した。そうですよね副会長さん」
マジシャンは龍牙を巻き込む。
「はい。小駒さんも奈良さんも。皆さん大変苦労されました。
今回のツアーはそんな皆さんの苦しみを和らげるための慰安旅行」
「ああそうだ。お前が頼りないから俺がサポートしてた訳だがな」
龍牙に続き奈良も口を開く。
「ではお二人とも本当に一連の事件に何一つ関わってない? 」
「当然だろ! 俺はこいつのお守さ。だからいつも行動を共にしてきた。
こいつが逃げ出したり不審な行動を取ったりしたことはない。
まあただいつもおかしな動きをするから誤解されやすいがな」
「ではお二人とも手を見せてください」
「はい。別に構いませんが」
「そうだな。じっくり見てくれ! 」
確か龍牙は爪が割れて絆創膏を。
奈良は切り過ぎて深爪に。深爪は癖になるから早めに対処すべき。
念の為に絆創膏を剥がすがこれと言って不審な点はない。
奈良の深爪は見ているこちらが目を覆いたくなるほど。
「ご協力感謝します。どうやらあなた方ではなさそうですね」
続く
これなら大人しくお部屋に籠ってくれた方がどれだけ助かったか。
そんなタマではないのは百も承知だが。
彼女に加え黒木までいるから手に負えない。二人とも縛り付けておくべきか?
現場が混乱しコントロールを失えば真犯人の思う壺。
それだけはどうしても避けなければならない。
相棒に合図を送る。
これで大人しくなるかと思いきや何を勘違いしたのか相棒はウィンクを返した。
おいおい! まさか本気じゃないよな?
ふう…… 暑くて堪らない。どうしてか暑くて暑くて堪らない。
汗が噴き出てくる。拭っても拭っても大量の汗が流れ出る。
真犯人は頑な。邪魔は入るし相棒はポンコツだし。
どうしてこうなった? 思っていた展開とこれほどまで違うものか?
今すぐにでもガイドさんの胸に飛び込みたい。
そんな衝動に駆られるがもちろん我慢だ。冷静にならなくては。
「では第四の事件の疑問。どうして千田さんはこんなにも簡単に殺されたのか。
皆さん不思議に思いませんか? はい黒木さん」
「俺? ああ確かに不思議だよな。仲間が次々殺されてるのになぜ不用意に開ける?
それとも鍵は真犯人の手の中だったのか? 」
意外にも冷静で鋭い指摘に驚く。
「それはあり得ません。現場に鍵が。少なくとも侵入は出来なかったかと。
もちろん十号室のマジシャンが真犯人なら突破できますがね。どうです? 」
「おいおい。こっちに振らないでくれよ」
今まで大人しく見守っていたマジシャンの慌てた表情。
「申し訳ありません。ですがあなたの潔白を証明しなければ次に進めない」
「もう探偵さんも困った人だ。いいでしょう協力しましょう。
確かに第四の事件はそうかもしれません。でも私には第三までの犯行が不可能。
それに一連の殺人事件には一切関わっておりません」
マジシャンは否定して見せる。だが話を聞いただけでは潔白とはならない。
「では手を見せてください」
マジシャンの彼は手を見られるのを極端に嫌う。それ故まだ疑いが晴れてない。
「まったく分かりましたよ。見せればいいんでしょう? では探偵さんこっちに」
観念したマジシャンはこっそり手の内を見せる。
指の一本一本をじっくり見て行く。
うーん。別段おかしな点は見られない。
「もういいだろ? これでも商売道具なんだからさ」
「ありがとうございます。きれいな手をされていました。細くしなやかで…… 」
「おい! それ以上は止めろ! 営業妨害だぞ! 」
常に冷静だったマジシャンが取り乱す。
少々疑わしいが素直に応じたことから問題ないでしょう。
「ちなみに共犯だとか? 」
「それもありません! ただ私も犯罪被害者の会のメンバー。
彼らを恨んでるかと問われればそちらの真犯人候補さんと同じ。
それ以上に恨んでいると言ってもいい。ですが私たちは自分が酷い目にあっただけ。
それ以上でもそれ以下でもありません。
今回だって副会長さんからの呼びかけがあって参加した。そうですよね副会長さん」
マジシャンは龍牙を巻き込む。
「はい。小駒さんも奈良さんも。皆さん大変苦労されました。
今回のツアーはそんな皆さんの苦しみを和らげるための慰安旅行」
「ああそうだ。お前が頼りないから俺がサポートしてた訳だがな」
龍牙に続き奈良も口を開く。
「ではお二人とも本当に一連の事件に何一つ関わってない? 」
「当然だろ! 俺はこいつのお守さ。だからいつも行動を共にしてきた。
こいつが逃げ出したり不審な行動を取ったりしたことはない。
まあただいつもおかしな動きをするから誤解されやすいがな」
「ではお二人とも手を見せてください」
「はい。別に構いませんが」
「そうだな。じっくり見てくれ! 」
確か龍牙は爪が割れて絆創膏を。
奈良は切り過ぎて深爪に。深爪は癖になるから早めに対処すべき。
念の為に絆創膏を剥がすがこれと言って不審な点はない。
奈良の深爪は見ているこちらが目を覆いたくなるほど。
「ご協力感謝します。どうやらあなた方ではなさそうですね」
続く
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる