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39話 もうすぐ公爵邸

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ついに領地最奥の丘をあがり、目の前に聳え立つユークリウス公爵邸が眼前に近づいてくる。

リンドの父母、ユークリウス公爵様とそのご夫人とは初めてのご対面となるため、ティアはいよいよ緊張感が増してきて、

リンドの腰にまわした手に自然と力が入り、身を固くした。

「ふふ、ティア緊張してる?」

その変化に気づいたリンドが、前を向いたまま尋ねた。

「ええ、リンド様のお父様お母様にお会いするんですもの。私のようなものを受け入れて頂けるか、…不安です」

それもそのはず。自分の実の親からでさえ、まともに愛情を受けていない者が、どうして義理の父母となる者に愛されることができるだろう。いや、できるはずない。

そうとしか思えないティアは、到着前から勝手な憶測で1人むなしく、悲しい気持ちが湧いてきた。

でもこんなにしてくださるリンド様のためにも、なんとか仲良くなれるよう頑張らないと…

そう思えば思うほど緊張で固くなっていた。

「大丈夫だよ、ティア。あの人たちは聖力の公爵家だけあって、誰も傷つけたりしない。もちろんティアのこともね。

まぁそもそもティアを傷つけるようなことしようものなら、俺が黙ってないし。

それに、今まで俺はちょっと親から心配されてたからさ、ティアが来てくれることすごく喜んでたよ。

だから心配いらない。

でももし何かあったら俺の腕を掴めばいい。
そしたら必ずなんとかしてやるから。」

リンドはそういうと、手は手綱から離せないので、頬で頭をすりすりと撫でるようにし、落ち着かせようとしてくれた。

ティアはそんなリンドのおかげでとても安心して、覚悟を決めて前を向いた。

…親に心配されてたって、何をかしら

少し疑問も入り混じり、程よく緊張がほどけたティアだった。

そしてリンドに頬ですりすりされることが、いつの間にか嫌でなくなった自分に気づいていなかった…

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