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72話 もう戻れないのかな…
しおりを挟むティアは一瞬立ち止まり後ろを振り返って、孤児院を見た。
「おっと、騒がないでくださいよ。騒がれて見つかったらコトだ。こっちも誰も殺さなくて済むならそれが1番なんですから…
人の命はお互い大切にしたいものです。」
冷ややかな声で、私の肩を逃げないように強く掴みながら、男は言った。
ティアは騒ごうなんて毛頭考えていなかった。
こんなに大きな男たちに囲まれてはどうにもできないし、自分がついて行くことでみんなを守れるなら、それだけでよかった。
ただ、こんな夜中に忍んで誘拐しにくるような輩の言うことなんて信用できるはずもなく、
もしかしたら今回の人生はこのまま殺されるのかもしれないと思うと、
何周か過ごした人生の中で、初めて人との触れ合いを感じ、心を強くしてくれたこの場所をもう一度しっかりと目に焼き付けておきたかったのだ。
もしだめだったら…次もまた孤児院のみんなと仲良くなろう。きっと…
でも、リンド様はまた私を見つけてくださるかしら…
最後に会いたかったな。
私がいなくても、あの方ならまたお相手はいくらでも見つかるでしょうし、どうか、お幸せになってください。
短い間だったけど、私本当は…
…もうあなたのこと、とても大好きでした。
こんな気持ちになったことがないからわからないけど、たぶん…愛してました。
愛される喜びを教えてもらえて、私初めて幸せになれたんだと思います。
どうか、次もまたティアになるから、私を好きになって…
「さあっ」
後ろからグイグイ押されて無理矢理歩かされる。
目からは涙が溢れて、止まらなくなっていた。
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