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138話 キースの想い

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俺は、武力を司るルドルフ公爵家長男

キース=ルドルフ

幼い頃から、

自分は最上級精霊で、精霊王に遣わされてキースという器に入れられた

ということはわかっていた。

しかし、

リンドのそばで協力してやれ

と言われただけで、他の事は何も知らされてはいなかった。

あの尊敬する我が精霊王様は、

退屈を持て余し、映像玉で人が翻弄される姿を見るのを楽しみにしているようなお方だった。

しかしそれにも飽きると、

案内人の姿を使い、ウロウロして、何か面白いことを求め彷徨っていた。

だから、

今回自分に対してヒントが少ないのも、

精霊王様にとっては、些末なイタズラの一貫で、

どうせ放って置いても、

これは全て精霊王様の遊ぶ盤上なのだから、

結末はうまくいくように出来ているのだろうと安心して、流れに身を任せていた。

案の定、リンドはちゃんとティアに出会った。

そんなわけで、特に心配もせず、

この器を楽しんで過ごしていればいいと思って育ってきた。

自分の器は、公爵家という家格の人物であったため、

色々なことを学び、他の公爵家との交流も欠かさず行っていた。

そんな中、不思議な感覚だったのだが、

最上級精霊はもともと愛を求めたり、恋したりもしないのだが、

器に入ってみると、人としての感情が育ち、恋心というものを抱くようになったのだ。

俺は元来、精霊界にいた頃から、強い者や自由な者が好ましいと思っていた。

その条件を1番に満たしていた存在が、今の精霊王様であり、

最上級精霊となって、精霊王様の存在を知った時には、

1番そばに置いて貰いたいと強く願い、

側近になるための修行に励んだものだ。

そして器に入ってから、同じように強くて自由な存在を見つけた…

それが、あのキティ、キャロライン=ホーネットだ。

キティはいつも公爵家の恥にならないようにと努力を重ね、

男よりも賢くなり、色々揶揄する奴もいたが、

ちっとも負けないどころか、食ってかかるような強いヤツだった。

そのうちキティは、自分よりもっと強く、尖った奴を好きになり始めた。

それが、つまり冷血公子のリンドというわけだ。

俺も強いのにな…

と最初は嫉妬していたが、

俺が、キティにどうしても優しくしてしまうのがいけなかった。

そんな男はあいつにとってはただの軟弱者に過ぎない。

まぁ、リンドはいい男だし、仕方ないと思っていた。

しかし、あいつが18歳の時、

その日出会った女の子を、突然その日のうちに好きになって、婚約者にしてしまった。

そういうことなら、キティを俺に振り向かせ、いずれ結婚を…と思っていたが、

なんと、リンドがあんなにベタ惚れだった婚約者を捨てたと思ったら

最近になってキティに結婚の申し込みをしたというんだから驚いた。

まぁ、本当はあの婚約者を大事に思っていたのは、中に入っていた精霊リンドなのであって、

それが精霊界へ戻ったのは知っていたから、

そんな成り行きも、それもそうかと納得したけど…

しかし、また精霊リンドが戻ってきて、キティを振るとか、さすがにめちゃくちゃだろ?

そりゃキティも怒るよなぁ?

でも今のリンドは、何を言おうと、

どうせあのリズティアのことしか考えていないのはわかってるし。

キティが俺を選ぶなら、幸せにしてやるのになぁ

はぁ…馬鹿な女…



———キースはそう思いながら、ユークリウス公爵家を後にした。
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