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161話 モフ神様

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ドドッドドッドドッ

と、猛スピードで追いかけるリンドは、ついに馬車をとらえ、

並走して走りながら叫んだ!

「ティア!ティア‼︎起きろ‼︎ティア‼︎

くそっ、だめかっ」

このスピードだと前に立ちはだかって止めるには距離がいる。

しかし、この先のカーブの先は、ここからでは見えないが崖になっている。

御者がこの国の者ではないのか、土地勘がないのだろう。

このままこのスピードで突っ込むと間違いなく落ちる!

リンドは御者の方まで走ると、

「止まれ‼︎落ちるぞ‼︎止まれ‼︎」

御者は追っ手が来たという恐怖で、何も耳に入らないようだった。

リンドが並走するものだから、こわがって余計にスピードを上げて逃げようとする。

チッ

とリンドは舌打ちすると、

馬車の窓ギリギリのところに馬を並走させ、

ちょうど自分の馬が窓と同じ場所に来たタイミングで、

窓のそばにティアがいないのを確認すると、窓ガラスを剣で割り、すぐに剣を鞘へ戻す。

そのまま、馬の上に立ち上がったと思うと、すぐに馬車に飛び移り、窓枠にしがみついた。

振り落とされないようしっかりしがみつきながら、馬車のドアを蹴破り中に入る。

あまりのことにクロードはティアを守るように抱きかかえながら、固まっていた。

「馬車をとめさせろ!おい⁉︎聞いてるのか⁉︎」

リンドはクロードの胸ぐらを掴んで叫んだ。

だめだ、固まってる!

クロードを、座っていた座席の背もたれに叩きつけるようにして胸ぐらを離し、

リンドは固まるクロードからティアを奪って、そのまま抱え、ドアの前に立った。

「なっ!何をしている⁈ティアをどうする気だ⁈」

ティアを奪われ我に返ったクロードは、やっとのことで叫んだ。

「いいからお前も覚悟決めて降りろ!死ぬぞ?」

そう言うと、

リンドはいい具合にクッションになりそうな茂みがそばに差し掛かったタイミングで、

その茂みめがけて、ティアを包み込むように抱き締めながら、勢いよく飛び降りた。



ザザザザーッゴロゴロゴロゴロッ……


うまく茂みには入ったが、あまりに勢いが強く、

中々体が止まらない。

大木にぶつかりそうになり、ティアをギュッと抱きしめ、もうダメかと目を閉じた、その時…

モフッ

と、何か柔らかいものにぶつかって止まった。

しかも生温い…

リンドは閉じていた目をそっと開けると

そこには…

大きな獅子が大木の前に控えて、

自分たちの体を止めてくれていた。


「キースか…」

リンドはすぐにわかったので、ホッとした。

精霊姿のキースは、通常の動物サイズにしていたので、目立たず、ティアは眠っているし、見ているのはリンドだけだったから、これはセーフだ。

精霊界に帰らされることはないだろう。

すぐに人の姿に戻ると、

「すごいことになってたな!」

と不謹慎にも面白がって目がキラキラしていた。

そういうとこ、ほんと精霊王の側近って意味がわかるわ…

とリンドは呆れながら、

「助かった…ありがとな」

と本当に助かったのでお礼は言っておく。
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