【完結】転生令嬢はハッピーエンドを目指します！

166話 クロードの話

「私の国は、君たちも知っての通り気候変動が激しい。」

クロードは上を向いて、自国のことを思いだしながら話し出した。

「そのせいで作物は育たず、いつも国民は飢餓に苛まれ、

栄養が足りない国民たちの間には病が蔓延し、

子どもたちも学ぶどころじゃない。

そのために新しい何かを生み出す国力は乏しく、

国外と貿易できる材料もない…

国内での生産も、外貨の獲得もできないとあって、

国は荒廃する一方だ。

それなのに、私の父である王は、

国を憂いはしても、国民の税を減らすことなく、

また立て直すことも考えない。

これでは、この国はいずれ何もしなくても、

いや、何もしないからこそ、全滅してしまうと思ったよ。

私は第一王子として生まれた限りは、いずれ国王になる身、

なんとかこの国を立て直し、

国民の飢餓を防ぎ、

病の蔓延を止めて、

子どもたちには教育を施し、　

作物以外の何かを生み出せる人材を育てたいと考えた。

そのためには、金になるものを探し出し、

まずは国を潤わせないとならない。

何かできることはないかと探っていた時、

たまたま視察に赴いた我が国の町で、

こんな気候の中でも繁茂している自生の植物を見つけた。

しかし、地元の人間に聞けば、それは毒草で、

食べた者はみんな死んでしまったという。

しかし、毒草は量さえ間違えなければ薬になる場合が多い。

私は持ち帰り、研究機関に調べさせた。

すると、一定の量であれば多幸感を得て、元気が出る物だとわかった。

元気のない国にはちょうどいいと思い、大事な国民に広める前に、私は自分の体で実験した。

私には下に弟が2人いるから死んでも問題ないしね。

そしたら、確かに幸せな気分にはなったが、

その後中毒症状に悩まされるようになってしまった。

売れるとは思ったが、同時に危険も感じたよ。

だから、私は国民同士の商売で使わせるのではなく、国外に売り込むことにした。

国外で売るための拠点として、

貴族の中で借金を抱えて没落しそうな者を狙った。

分け前をやると言ったら２つ返事でホイホイ協力したよ。

それから、そいつらに、欲しがる奴を紹介させた。

ギャンブルや愛人に溺れて、

家のことも国のことも思わないどうしようもない奴らばかりを紹介させたから、

罪悪感は少なかった。

しかし、そいつらは、

この薬を買う金がなくなると手下を使って強盗などの犯罪を犯すようになってきた。

私は他国を荒らしたいわけじゃない。

だから、使っても使ってもなくならないほどの金を持っている奴を狙うことにした。

それが、今回はホーネット公爵家だったというわけだ。

しかし、やはりさすが、王家と国を守る筆頭の公爵。

余りに強い自制心で、どんなに揺さぶっても交渉は全く進まなかった。

だから、ちょっと令嬢をお借りしたのさ。

別に私は誰も殺したいわけじゃない。

だから無事に返しただろう？


それから…ティアのことは、本当に愛してしまっただけだよ。

国のことばかり考えて、

今までろくに遊んでこなかった自分にとっては、

こんな歳になって、初めて知った恋だった。

あの子は私の国のことをよく知っていてくれて、憂いもしてくれた。

王妃にするのはティアしかいないと思ったんだよ。

それに、君があの純粋な子を不倫相手にしようと目論んでいると思ったら許せなくなって、

急いで連れて帰ろうとした。

…まぁ、そんなわけだ。




私はどんな理由があるにせよ、

薬物を売り捌き、令嬢たちを誘拐したことに代わりはない。

…自分が犯罪者だとわかっている。

煮るなり焼くなり好きにしろ。

さっきも言ったが、私がいなくなっても王位を継げる者は他にもいる。

気にせず殺すといい。

別にあの父なら怒りもしない。」

諦めたように悲しく微笑んでクロードは言った。