【完結】転生令嬢はハッピーエンドを目指します！

167話 リンドの提案

リンドとキースは、

クロードの話を最後まで黙って聞いていた。

そして2人は顔を見合わせると同時に頷き、

またクロードに向き直る。

「そういうことか。

まぁ、だいたいそんなことだろうとは思ったがな。」

リンドはそう言うと、さらに続ける。

「お前が拠点にした男爵は捕まえたし、

そいつがお前に紹介した奴らも、

みんなもう捕縛済みだ。

そいつらはこっちの国で裁いて薬物も体から抜いておく。

あとはお前の処分だけだが、

こちらの国に二度と薬物を持ち込ませないよう約束させて、このまま返してもいいが、

それだとお前の国は何も変わらない。

だとしたら、またその薬物が、

別のルートを介するなどして、出回るのも時間の問題だ。

しかしお前を殺しても、そっちの国との火種になる可能性は大きい。

父王は何もしないと言ったが、そう思っているのはお前だけだろう。

賠償金ならまだいいが、戦争になんてなったらとんでもないからな。

だったら、どうするか…

内々に片付ける方法を考えた。

お前が受け入れるかは知らないが…

…お前は、このまま体調が戻れば国に戻してやる。

その時に、こちらの知力の公爵家から

そちらに宰相となりそうな人材と、

教育者の育成ができる人材を一緒に派遣してやるから、

そっちの国でどう政治をすればよくなるか、

宰相の教えを乞い、さらに教師の数をふやせ。

あとは、うちの聖力の光魔術師も派遣するから、

病を治す施設を各土地に設けろ。

そして、こちらで改良された気候の変化に強い作物の苗や種も送る。

それで食糧確保、治療、教育ができるようになるはずだ。

だから、その薬物の栽培はさっさとやめろ。

それをお前の指導のもとで10年かけてやってみて、

それでも国に復興の気配がなければ、お前が無能ということだ。

その時は今回の犯罪の賠償をガルティア王を通してお前の国に請求し、

最終的にそちらの国をこっちの国に吸収合併する。

誰も救えない民なら、ガルティアが救う。

それが嫌なら死にものぐるいで立て直せ。

そちらの国が平和になって、変なものを売りに来なくなれば、

こっちの国も平和になるんだからな。」

リンドは真面目な表情でそう言った。

クロードの頬には涙が静かに伝っていた。

「…そんなことを言ってくれたやつは、

…今まで誰一人いなかった…

薬物を売り捌く前は、

普通に食糧支援などを頼んでいたんだ。

豊かな国はたくさんあった。

しかし、取引材料のない、なんの魅力もない私の国を助けてくれる国などなかった…

…ありがとう…ありがとう……

国民が救える方法があるのだな…

助けられるんだな…あの飢餓と病いから…

ありがとう…」

クロードは目を閉じて、静かに泣いた。

「…言いたくはないが、

…これは元々ティアがお前の国と交渉したくて考えていたことだ。

お前が妃うんぬんの話でめちゃくちゃにしたがな。

礼を言うならティアに言えばいい。

…じゃあ、そういうことで、

お前が骨折と中毒症状全部すっきり治すまで、

悪いがここにいてもらう。

その間に今言ったものは手配しておこう。

じゃ、早く治して、さっさと帰れよ」

リンドは、クロードが受け入れたと察し、それだけ言うと、キースと共に部屋を後にした。

部屋を出る前、微かに後ろで

ありがとう

と聞こえた気がしたが振り返らなかった。

リンドは別に聖人ではない。

自分の国に降りかかる火の粉を払っただけだ。

リンドはそう思って、お礼の言葉は受け取らなかった。