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17 武器仕様は駄目
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私の心労が!!くっ、ここでさよならだと思っていたのに!
「私、いつ魔王が空から降ってくるか怯えているのですが?」
「モナ殿はスライムにも勝てないから、護衛して欲しいといわれたんだが?」
スライムぐらいなら勝てる!これでもLv.20まで上げたんだからね!リアンを扱き使ったけど······。
「ス、スライムは武器があればなんとかなる」
「他の魔物は?」
「うっ·····無理です」
無理。無理ですよ!私のクズステータスを嘗めんなよ。
クラッシャーのジュウロウザと共に行動をしなければならないのは、仕方がないことなのだろうか。
ええ、わかってますよ。一人で王都に行こうっていうのが、無謀っていうことに。
「はぁ。わかりました。護衛お願いします。再度いいますが、私のステータスはクズなので、細心の注意を払ってくださいね」
「モナ殿。自分自身をそのように卑下することはない。こうやって、俺が穏やかに過ごせるのはモナ殿のお陰なんだから」
いや、確かにLUKは∞だ。しかし、それぐらいしか良いところはない。
そうして、武器屋の前にたどり着いた。中はゴチャゴチャと色んな武器が陳列されている。しかし、私の用がある物はただ一つ。
「騎獣の調教用のムチをください」
「え?」
「おう、どういう騎獣だ?」
私の言葉に疑問を抱いたのはもちろんジュウロウザだ。武器を購入すると言って、攻撃力が途轍もなく皆無に近い調教用のムチだったのだから。
しかし、店の厳つい親父からどういう騎獣かと問われれば、勇者を撃退する物と言いたいところを我慢して
「馬車用の長めの物で」
「今はコレしかないがいいか?」
カウンターに置かれたものは、普通の革製の長いムチだった。棘もなく、金属繊維が入っているわけでもない、普通のムチ。
手にとって振るってみる。
見切り品で樽に突っ込まれた槍の一本に巻きつき、そのまま壁に向かって振れば槍が壁に『ドスッ』という音とともに突き刺さった。普通にいい感じだ。
「これでお願いします。お幾らですか?」
「お嬢さん。武器が欲しいならもっと良い物があるぞ」
残念ながらの武器仕様になると全くもって扱えなくなるのだ。
「これがいいです。キトウさん、槍を抜いて元に戻してもらえますか?」
そう言って私は金貨一枚を差し出す。先程、母からもらったお小遣いだ。
「お嬢さん。普通はこんな店で金貨を見せるもんじゃない」
こんな店?冒険者ギルドから紹介された店だから、悪い店じゃないと思うけど?
「調教用のムチ代と壁の修理代です」
「あ、いや。こっちとしては有り難いんだが」
店の親父は困った顔をしながら、後ろをチラチラ見ている。何っと思って振り返ってもジュウロウザがいるだけだ。首を傾げてしまう。
何故か親父にため息をつかれてしまった。そして、貰い過ぎだからと言って、色々おまけを付けてくれた。
腰にムチを付けるホルダーもだ。調教用のムチなので、普通はセット売りでは無いはずなのにおかしいな。
「兄さん。お嬢さんをしっかり見張っておきなよ」
店から出るときに親父からそんな声をかけられた。失敬な!
そして、他の必要な物を購入して、路線馬車の停車駅に行く。王都に行く馬車のところにいる御者に声をかけた。
「王都に行く馬車はここですか?」
「ん?あ、そうだ。料金は····」
御者の人は私を見て言葉を止めてしまった。ああ、料金ね。二人分の1万Gを差し出す。
·····受け取ってくれない。なぜに?小銀貨5枚で合っているはず。
その受け取ってくれない小銀貨5枚をジュウロウザが受け取り、御者の人の手に握らせた。
そして、後ろの客車の方に行くようにジュウロウザに促された。いったいあの人はどうしたのだろう?
客車の馬車はいつも使っている荷馬車と比べられないぐらいに大きかった。左右両端に座席があり、数人が席に座っていた。ぎゅうぎゅうに詰めれば横一列に10人は座れるだろうが、今いるのは老夫婦と一人の女性と一番奥で大きな荷物を持った外套を着た人物だ。フードを被っているため、性別は分からない。
私とジュウロウザは右側の入口付近に腰を下ろした。もちろん、クラッシャーがいつ勃発しても逃げられるようにだ。
出発するまで、まだ時間があるようなので、遅くなってしまったお昼を取る。朝から用意していたサンドイッチだ。お弁当の一つをジュウロウザにも渡す。
中身は厚焼きの卵サンドと照り焼きチキンサンド。厚焼き卵に、手作りのケチャップがよく合う自信作を一口食べる。
美味しい!卵の甘みにケチャップの酸味が調和している。自画自賛だ。
次に手に取ったのが、収穫祭の時に余った野鳥の肉をもらったので、それを自家製の醤油と砂糖、酒で漬け込んで作った照り焼きチキンだ。これも自家製で作ったマヨネーズでサンドした絶品だ。美味しい!
·····斜め上から視線を感じる。仰ぎ見ればジュウロウザから物欲しそうな目が向けられていた。
「私、いつ魔王が空から降ってくるか怯えているのですが?」
「モナ殿はスライムにも勝てないから、護衛して欲しいといわれたんだが?」
スライムぐらいなら勝てる!これでもLv.20まで上げたんだからね!リアンを扱き使ったけど······。
「ス、スライムは武器があればなんとかなる」
「他の魔物は?」
「うっ·····無理です」
無理。無理ですよ!私のクズステータスを嘗めんなよ。
クラッシャーのジュウロウザと共に行動をしなければならないのは、仕方がないことなのだろうか。
ええ、わかってますよ。一人で王都に行こうっていうのが、無謀っていうことに。
「はぁ。わかりました。護衛お願いします。再度いいますが、私のステータスはクズなので、細心の注意を払ってくださいね」
「モナ殿。自分自身をそのように卑下することはない。こうやって、俺が穏やかに過ごせるのはモナ殿のお陰なんだから」
いや、確かにLUKは∞だ。しかし、それぐらいしか良いところはない。
そうして、武器屋の前にたどり着いた。中はゴチャゴチャと色んな武器が陳列されている。しかし、私の用がある物はただ一つ。
「騎獣の調教用のムチをください」
「え?」
「おう、どういう騎獣だ?」
私の言葉に疑問を抱いたのはもちろんジュウロウザだ。武器を購入すると言って、攻撃力が途轍もなく皆無に近い調教用のムチだったのだから。
しかし、店の厳つい親父からどういう騎獣かと問われれば、勇者を撃退する物と言いたいところを我慢して
「馬車用の長めの物で」
「今はコレしかないがいいか?」
カウンターに置かれたものは、普通の革製の長いムチだった。棘もなく、金属繊維が入っているわけでもない、普通のムチ。
手にとって振るってみる。
見切り品で樽に突っ込まれた槍の一本に巻きつき、そのまま壁に向かって振れば槍が壁に『ドスッ』という音とともに突き刺さった。普通にいい感じだ。
「これでお願いします。お幾らですか?」
「お嬢さん。武器が欲しいならもっと良い物があるぞ」
残念ながらの武器仕様になると全くもって扱えなくなるのだ。
「これがいいです。キトウさん、槍を抜いて元に戻してもらえますか?」
そう言って私は金貨一枚を差し出す。先程、母からもらったお小遣いだ。
「お嬢さん。普通はこんな店で金貨を見せるもんじゃない」
こんな店?冒険者ギルドから紹介された店だから、悪い店じゃないと思うけど?
「調教用のムチ代と壁の修理代です」
「あ、いや。こっちとしては有り難いんだが」
店の親父は困った顔をしながら、後ろをチラチラ見ている。何っと思って振り返ってもジュウロウザがいるだけだ。首を傾げてしまう。
何故か親父にため息をつかれてしまった。そして、貰い過ぎだからと言って、色々おまけを付けてくれた。
腰にムチを付けるホルダーもだ。調教用のムチなので、普通はセット売りでは無いはずなのにおかしいな。
「兄さん。お嬢さんをしっかり見張っておきなよ」
店から出るときに親父からそんな声をかけられた。失敬な!
そして、他の必要な物を購入して、路線馬車の停車駅に行く。王都に行く馬車のところにいる御者に声をかけた。
「王都に行く馬車はここですか?」
「ん?あ、そうだ。料金は····」
御者の人は私を見て言葉を止めてしまった。ああ、料金ね。二人分の1万Gを差し出す。
·····受け取ってくれない。なぜに?小銀貨5枚で合っているはず。
その受け取ってくれない小銀貨5枚をジュウロウザが受け取り、御者の人の手に握らせた。
そして、後ろの客車の方に行くようにジュウロウザに促された。いったいあの人はどうしたのだろう?
客車の馬車はいつも使っている荷馬車と比べられないぐらいに大きかった。左右両端に座席があり、数人が席に座っていた。ぎゅうぎゅうに詰めれば横一列に10人は座れるだろうが、今いるのは老夫婦と一人の女性と一番奥で大きな荷物を持った外套を着た人物だ。フードを被っているため、性別は分からない。
私とジュウロウザは右側の入口付近に腰を下ろした。もちろん、クラッシャーがいつ勃発しても逃げられるようにだ。
出発するまで、まだ時間があるようなので、遅くなってしまったお昼を取る。朝から用意していたサンドイッチだ。お弁当の一つをジュウロウザにも渡す。
中身は厚焼きの卵サンドと照り焼きチキンサンド。厚焼き卵に、手作りのケチャップがよく合う自信作を一口食べる。
美味しい!卵の甘みにケチャップの酸味が調和している。自画自賛だ。
次に手に取ったのが、収穫祭の時に余った野鳥の肉をもらったので、それを自家製の醤油と砂糖、酒で漬け込んで作った照り焼きチキンだ。これも自家製で作ったマヨネーズでサンドした絶品だ。美味しい!
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