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37 騎獣の名前
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馬竜は北東に向かって進んで行く。長閑にカポカポと進んでいく。時々、空から『メルーロ!メルーロ!』と何かよくわからない鳴き声が聞こえてくるぐらいで、平和だ。本当に鳴き声なのだろうか?
「今日はどこまで進みますか?ソートワですか?ヒュルケまで行きますか?」
私は地図を広げながら、ジュウロウザに聞く。ソートワは穀倉地帯が広がる長閑な町だ。ここは国民の半分を胃袋を満たす食物の生産を賄っているので、ここが魔物に襲われると、国の食糧事情が一気に悪化するのだ。
「モナ殿はどうしたい?」
「んー。やっぱりヒュルケまで·····」
いや、ちょっと待って。なんで魔物にこんな長閑な田舎町が襲われた?そのあと水の都ラウリーまで魔物の大群が進行してきて、そこで食い止めなければならないというイベントが発生した。
「あ!ダンジョンのスタンピードだ。その後、ダンジョンの攻略をしたんだった」
「モナ殿。できれば、わかる言葉で話してほしいのだが」
「うぇ?私、また違う言葉使ってました?」
ジュウロウザを伺い見ると、首を縦に振られた。無意識だ。私、無意識で話していた。気をつけないといけないな。
「で?何か気になる事があるのか?」
「ええ、途中で寄り道をしてもいいですか?確認がしたいだけなのですが、ソートワの森の近くにダンジョンができているかどうかという確認です。村も近いことですし、様子見だけでいいので」
「ダンジョンができている?」
あ····また、口が滑ってしまった。ダンジョンの確認がしたいと言えばよかった。ソートワの森にはダンジョンなんて存在はしてないのだ。だから、そのダンジョンは未発見のダンジョンであり、出来たばっかりで、ゲームでは10階層までしかないダンジョンだったのだ。
「ダ、ダンジョンの確認がしたいです」
「わかった。今日はソートワを目指そう」
ふぅー。詳しく聞かれなくって良かった。まぁ、秘密ですとしか答えないけど。
私は大まかに書かれた地図の一点を指し示した。ソートワの町に隣接している森だ。
「ここまでお願いします」
長閑な風景が流れていくなか、目的の森にたどり着いた。人手ははいっているようで、林道が森の中にあった。森の中には村の森でよく見かけるスライムや一角兎が跳ねている。
この森にダンジョンができているのだろうか。無いのであればそれに越したことはない。スタンピードが起こらず、村に被害が及ばなければそれでいい。
馬竜が通れる幅の道がなくなりかけたので、引き返そうかと口にしようとしたところで、気になる物があった。いや、正確には木だ。北の方角に真っ黒い幹の朽ちた木があった。それがとても気になったのだ。
「ジュウロウザさん。あそこまで行くことできます?」
私は北の方角にある木を指して言った。林道からはずれれば木々が鬱蒼と茂り、馬竜が行けるとは思えない。
「ああ、大丈夫だ」
そう言って、馬竜の手綱を引いた。そして、木々をなぎ倒しながら、馬竜が進んでいく。力押し!強引過ぎる!流石、黒○号!あ、名前決めてなかったな。後でいいか。
真っ黒い枯れているようにも、焼け焦げているようにも見える木の前まで来た。そして、その足元だ。ポッカリと大きく黒い口を開けた穴がある。
私はその穴を近くで見たくて、馬竜から降りようとするが、高すぎて降りることができない。購入した騎獣に自分で乗り降りできないのは問題あると思う。
「モナ殿はベルーイから降りないでここにいてくれ、俺が見てこよう」
ん?ベルーイ?
「ベルーイってこの騎獣の名前?」
「ソフィー殿が名前が付いてないと言ったら、そう呼んでいた。モナ殿を安全に運んで欲しいとベルーイに話しかけていたな」
ソフィー!なんて優しい妹なんだろう。心がほんわかしていると、ジュウロウザがベルーイから降りて、躊躇せずにポッカリと開いた縦穴に飛び込んでいった。
そこは一旦様子見で覗こうよ。
なんだか先程から、穴の中から断末魔の叫び声が聞こえてくる。ジュウロウザが戦っているのだけど、この穴の中はどうなっているの?すごく気になる。
どうにかして、ベルーイから降りれないかと画策をしていると、何かの大きな手が穴の縁を掴んだのが見えた。
え?あの手なに?人より断然大きいよ。その手は直ぐに穴の中に消えていった。怖っ!
そして、今度は人の手が穴の縁を掴んだ。思わず、ビクッとしてしまったが、ジュウロウザが出てきたことで、ホッとため息がでる。しかし、何かの体液にまみれている。
「キトウさん。こっちに来てもらえますか?」
「いや、しかし」
戸惑うように言葉を濁しているジュウロウザをベルーイの上から見下ろして言った。
「さっさと、来てください!」
_____________
補足
モナの無意識の日本語が普通の「」であらわしていますが、モナ視点ですので、モナ自身は普通だと思って話しています。ですので、普通の「」となっております。
「今日はどこまで進みますか?ソートワですか?ヒュルケまで行きますか?」
私は地図を広げながら、ジュウロウザに聞く。ソートワは穀倉地帯が広がる長閑な町だ。ここは国民の半分を胃袋を満たす食物の生産を賄っているので、ここが魔物に襲われると、国の食糧事情が一気に悪化するのだ。
「モナ殿はどうしたい?」
「んー。やっぱりヒュルケまで·····」
いや、ちょっと待って。なんで魔物にこんな長閑な田舎町が襲われた?そのあと水の都ラウリーまで魔物の大群が進行してきて、そこで食い止めなければならないというイベントが発生した。
「あ!ダンジョンのスタンピードだ。その後、ダンジョンの攻略をしたんだった」
「モナ殿。できれば、わかる言葉で話してほしいのだが」
「うぇ?私、また違う言葉使ってました?」
ジュウロウザを伺い見ると、首を縦に振られた。無意識だ。私、無意識で話していた。気をつけないといけないな。
「で?何か気になる事があるのか?」
「ええ、途中で寄り道をしてもいいですか?確認がしたいだけなのですが、ソートワの森の近くにダンジョンができているかどうかという確認です。村も近いことですし、様子見だけでいいので」
「ダンジョンができている?」
あ····また、口が滑ってしまった。ダンジョンの確認がしたいと言えばよかった。ソートワの森にはダンジョンなんて存在はしてないのだ。だから、そのダンジョンは未発見のダンジョンであり、出来たばっかりで、ゲームでは10階層までしかないダンジョンだったのだ。
「ダ、ダンジョンの確認がしたいです」
「わかった。今日はソートワを目指そう」
ふぅー。詳しく聞かれなくって良かった。まぁ、秘密ですとしか答えないけど。
私は大まかに書かれた地図の一点を指し示した。ソートワの町に隣接している森だ。
「ここまでお願いします」
長閑な風景が流れていくなか、目的の森にたどり着いた。人手ははいっているようで、林道が森の中にあった。森の中には村の森でよく見かけるスライムや一角兎が跳ねている。
この森にダンジョンができているのだろうか。無いのであればそれに越したことはない。スタンピードが起こらず、村に被害が及ばなければそれでいい。
馬竜が通れる幅の道がなくなりかけたので、引き返そうかと口にしようとしたところで、気になる物があった。いや、正確には木だ。北の方角に真っ黒い幹の朽ちた木があった。それがとても気になったのだ。
「ジュウロウザさん。あそこまで行くことできます?」
私は北の方角にある木を指して言った。林道からはずれれば木々が鬱蒼と茂り、馬竜が行けるとは思えない。
「ああ、大丈夫だ」
そう言って、馬竜の手綱を引いた。そして、木々をなぎ倒しながら、馬竜が進んでいく。力押し!強引過ぎる!流石、黒○号!あ、名前決めてなかったな。後でいいか。
真っ黒い枯れているようにも、焼け焦げているようにも見える木の前まで来た。そして、その足元だ。ポッカリと大きく黒い口を開けた穴がある。
私はその穴を近くで見たくて、馬竜から降りようとするが、高すぎて降りることができない。購入した騎獣に自分で乗り降りできないのは問題あると思う。
「モナ殿はベルーイから降りないでここにいてくれ、俺が見てこよう」
ん?ベルーイ?
「ベルーイってこの騎獣の名前?」
「ソフィー殿が名前が付いてないと言ったら、そう呼んでいた。モナ殿を安全に運んで欲しいとベルーイに話しかけていたな」
ソフィー!なんて優しい妹なんだろう。心がほんわかしていると、ジュウロウザがベルーイから降りて、躊躇せずにポッカリと開いた縦穴に飛び込んでいった。
そこは一旦様子見で覗こうよ。
なんだか先程から、穴の中から断末魔の叫び声が聞こえてくる。ジュウロウザが戦っているのだけど、この穴の中はどうなっているの?すごく気になる。
どうにかして、ベルーイから降りれないかと画策をしていると、何かの大きな手が穴の縁を掴んだのが見えた。
え?あの手なに?人より断然大きいよ。その手は直ぐに穴の中に消えていった。怖っ!
そして、今度は人の手が穴の縁を掴んだ。思わず、ビクッとしてしまったが、ジュウロウザが出てきたことで、ホッとため息がでる。しかし、何かの体液にまみれている。
「キトウさん。こっちに来てもらえますか?」
「いや、しかし」
戸惑うように言葉を濁しているジュウロウザをベルーイの上から見下ろして言った。
「さっさと、来てください!」
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補足
モナの無意識の日本語が普通の「」であらわしていますが、モナ視点ですので、モナ自身は普通だと思って話しています。ですので、普通の「」となっております。
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