勇者の幼なじみに転生してしまった〜幼女並みのステータス?!絶対に生き抜いてやる!〜

白雲八鈴

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71 あれで良い

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「姫、この先で戦っている者がいるようで、ブチのめしてまいろうぞ」

 まいらなくていいです。何か色々ぶち撒けそうなので。

「シンセイさん。冒険者には色々ルールがあるそうなので、関わり合わなくていいと思います」

「姫。吾のことはシンセイと呼び捨てでと申しております」

「私は姫という名ではないですよ」

 このやり取りは何度繰り返したか。

「シンセイ殿。基本的に助けを求められない限り、手を出す必要ない」

「そういうものか、ならそのまま進む事にしようぞ」

 少し進むと私の耳にも金属がぶつかる甲高い音と、人の声が聞こえてきた。薄暗い道を抜けると、広めの空間に出た。そこには4人の人影と獣型の魔物の姿が見えた。
 私にはどういう状況かわからないが、その冒険者達の邪魔にならないように端の方を歩いて進んで行く。その時にジュウロウザは私の外套のフードを深く被らせた。それじゃ、前が見えないのだけど。

 ん?なんだが、走ってくる足音が複数聞こえる。
 そして、その足音が過ぎ去って行き際に『悪く思うなよ』という声が聞こえた。何のことだろうと首を傾げていると、ジュウロウザの舌打ちが聞こえた。

「いやはやなんとも、これは如何なものか」

 シンセイの笑いを噛み殺したような声が聞こえてきた。

「っ『火炎龍破』」

 げ!その技は!
 私は外套のフードを上げてジュウロウザを見上げる。

「キトウさん!こんな限られた空間でt····」

 最後まで私は言葉に出来なかった。私の体にものすごい勢いで移動することで起きる後方への重力がかかり、言葉にできなかったのだ。

 後方で地響きが響く程の爆音が響いた。
 『火炎龍破』ジュウロウザの技の一つで、火炎が龍のように螺旋状に周囲を燃やしながら上昇していく技だ。あんな狭い空間で使おうものなら狭い通路まで炎が蹂躙してしまうことだろう。

 進むスピードが緩くなり、私の呼吸も普通にできるようになったところで、ジュウロウザを睨みつける。

「キトウさん。どういうことですか!あんな狭い空間で使うなんて、自殺行為じゃないですか!」

「モナ殿、あれで良かったんだ」

 良くないよ!

「姫。あれで良いですぞ」

 シンセイまで!

 その後も何事もなく進んでいった。時々遭遇する魔物は大抵シンセイの杖の一撃で事切れるので、ジュウロウザの危険極まりない技を使う必要はなかった。10階層ごとにいる中ボスもシンセイの杖の一撃で仕留められた。
 その杖、何気にすごいんだけど。

 20階層を過ぎると、冒険者に遭遇することもなくなり、25階層で一晩泊まることにした。
 25階層には魔物が出現しない部屋が一箇所あるのだ。ゲームでは回復できる光るサークルがあるのだけど、現実的にはそんなものは存在しなかった。
 やはりゲームはゲームだったということか。

 その何もない30帖程の部屋の隅に拡張機能が施されたテントを張ってもらい、私はさっさと中に入る。今日一日ほとんどジュウロウザに抱えられていたのだ。少しぐらい自分の足で歩くと言っても危ないからと歩かせてもらえず、なんだか異様に疲れてしまった。何故だろう?

 3人分の食事を用意し、食べられる状態にはなったが、ジュウロウザとシンセイが中に入ってこないどうしたのだろう。
 仕方がないのでテントの外に出て、二人を探すと部屋の中央で何かを話していた。

「どうかしましたか?食事が出来たのですが、食べませんか?」

 私が声を掛けると二人は顔を上げ、こちらにやってきた。

「モナ殿。何やら部屋の中央におかしな気配がするので、シンセイ殿と話していたのだが、よくわからないのだ」

「姫。怪しいので、ここではないところで一晩過ごしませぬか?」

 部屋の中央に怪しい気配?うーん?私が知っているのは回復する光るサークルが在るっていうだけで·····ん?最初っからあった?

 私はテント以外何もない部屋を見渡す。ゲームと同じだ。部屋の中央まで行って、本来光るサークルがあった床を見る。

 5芒星が石の床に刻まれていた。そして、5つの小さな窪み。ダンジョン内に散らばっている呪文を集めて唱える?
 何か魔術属性の文言だったなぁ。なんだっけ?
 ああ、思い出した。村で魔術の勉強をしていたとき聞いたことがあるって思ったのは、ゲームで聞いた事があったからだ。

「『最初に生まれたのは火だった』?」

 すると床の窪みが光、赤い石が窪みに顕れた。

「『次に生まれたのは水だった』」

 青い石が顕れ窪みにはまる。

「『火と水が風を起こし』」

 緑の石が窪みにはまる。

「『風が大地を作り出す』」

 緑の石が顕れ

「『そして、世界は光に満ち溢れた』」

 白い石が顕れ全ての窪みに石で埋まった。

「『光がと同時に闇が生まれ世界を調律した』」

 すると、突然部屋に光が満ち溢れ、目が開けられない状態に陥ってしまった。
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