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113 魔に囚われた人
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転生前のエルドラードとの邂逅の記憶は封じられていたみたいだけど、モナとしての私はなんとなく覚えていたのだろう。
物心ついたころは何もわからなかった。リアンも普通だったと思う。
ただ、腕の骨が折られるという事件が起きたときだ。リアンは『ごめんね。大丈夫?』と言いながら、笑っていたのだ。口を三日月のように歪ませ笑っていたのだ。
その時、思った。ああ、これはわざとだと。
普通の子供は折られた痛さに耐えきれず、リアンの心配そうな声は聞こえても人の顔を確認するほどの余裕は無いはずだ。
だから、ゲームのモナはリアンは自分に優しさを向けてくれていると思ったのだろう。
そして、リアンは時々私を痛めつけて笑っている姿をみせた。それはいつも人が居ないところで、不可抗力だったというシチュエーションを作り出すのだ。
だから、私はリアンからちょっかいを掛けられないようにやることを与えた。修行という名の無茶振りの訓練だ。
どうせ、勇者として村の外に出ていくのだ。何れは必要なことだ。私に関心が向くから駄目であって、それを力をつけるという方向に向かせた。
これが大いに成功した。村の人達の強さに対する向上心もリアンに影響を及ぼしたのかもしれないが、リアンに肋骨にヒビを入れられるまで、大きな怪我をすることを避けされたのだ。
リアンは私をかわいい、かわいいと言って他の人の前では好意を示していたけど、それは困っている私を見て可愛いと、私が嫌な顔をして可愛いと口にしていたのだ。
そして、エルドラードとの邂逅の記憶を取り戻して、全てに納得がいった。リアンの好意は私への殺意だったと。
今、私の目の前にはあの時と同じように口を歪ませて笑っているリアンがいる。
実は私を突き刺した後のリアンの行動は、私の予想を口にしたのだ。
リアンのルナルナ攻撃は正に私への嫌がらせであったのだろう。モナがもしリアンに好意を持っていればルナに嫉妬することだっただろう。
しかし、私は苛つくだけで、ルナに嫉妬心を向けることはなかった。
だから今度は、私に私の所為でルナ死んだと思わせようとしたのだ。心優しいモナなら、あのひと目で死んでいると分るルナの姿を目にして、それに縋り付くリアンというシチュエーションに心を痛め、自分を責めたかもしれないが、私は心優しいモナじゃない!
リアンはルナを見殺しにして私への当てつけにしたのだろうと予想を立てたのだけど、当たっていたようだ。
リアンの歪んだ笑顔が全てを物語っていた。
「あは☆モナは凄いね。いつも、いつも、いつも、いつも、いつも俺を頼りにして、俺以外を見ないのに、モナはいろんな事をしょうと、いろんなことに興味を持って、俺以外の守護者を得た。すごいね。最後には女神の願いを叶えたって?それって何だったのかな?いつもいつもいつも聞いても答えてくれなかったのに、自ら守護者を得たら叶ったのかなぁ」
なんか、リアンが一回り大きくなった気がするんだけど?っていうか、その私は私じゃなくて女神の欠片の方だからね。それに女神が愛した神を自ら封じたと、そして、その神に会いたいなんて言えるはずはないでしょ。
「ふん。元々私の守護者になる気なんてなんて無かって癖によく言うよね」
「うん。無かったね☆」
また、大きくなった気がする。何が起こっている?
ジュウロウザは私を抱えながら、刀を抜いた。シンセイは戟をリアンに向けて構えた。
私はリアンを視る。
····
ryアぃnンンン
職sユゥゥゥゥ ユアァァァァ
え?ごめん読めないよ。名前と職種の時点で何が表記されているのか、わからなくなっている。
あれか、エルドラードが魂が歪んでいると言っていたやつか。え?これってどうすればいいのだろう。
「ねぇ☆モナ。願いが叶ったのなら死んでもいいよね。俺のために死んでくれる?」
嫌だよ。私が答える前にリアンの姿が消えた。
ジュウロウザが前方に刀を構えたかと思えば『ガキン!』という衝撃が空気を伝って響いてきた。リアンが···いや、キラキラの髪がくすんだ灰色になっており、青い澄んだ空の色をしていた目は黒く濁った者が剣を振り下ろしていた。
ジュウロウザが押されている?あの歩く災害と言っていいステータスを持つジュウロウザが?
その時リアンが後方にふっ飛ばされた。側に居たシンセイが繰り出した戟の突きによって飛ばされたようだ。
「将よ。これはちと分が悪いようであるぞ」
「ああ、何かはわからんが人ならざるものに成ったのだろう」
攻撃特化型のジュウロウザとシンセイがいても分が悪いってどういうこと?
「あれは魔人じゃ!一度だけ見たことがある。魔に囚われた人が魔に落ちた姿じゃ!」
博識のロリババアが言うのだ間違いはないのだろう。
「その時はどうしたのですか?」
「その時の聖女が己の生命と引き換えに封じたのじゃ」
えー!ここに聖女なんていないし、無理ゲーすぎる。それも封じるだけ?
風が横切ったと感じると同時に響く金属音。ふっ飛ばされたはずのリアンが剣を振り切った姿でいた。
どうしよう、これじゃ私がジュウロウザの邪魔をしている。でも、リアンが狙っているのは私。
考えろ、どうすればいい?そもそも魔人とはなんだ?ゲームではそのような者は出てこなかった。
魔人。魔に落ちた人。
物心ついたころは何もわからなかった。リアンも普通だったと思う。
ただ、腕の骨が折られるという事件が起きたときだ。リアンは『ごめんね。大丈夫?』と言いながら、笑っていたのだ。口を三日月のように歪ませ笑っていたのだ。
その時、思った。ああ、これはわざとだと。
普通の子供は折られた痛さに耐えきれず、リアンの心配そうな声は聞こえても人の顔を確認するほどの余裕は無いはずだ。
だから、ゲームのモナはリアンは自分に優しさを向けてくれていると思ったのだろう。
そして、リアンは時々私を痛めつけて笑っている姿をみせた。それはいつも人が居ないところで、不可抗力だったというシチュエーションを作り出すのだ。
だから、私はリアンからちょっかいを掛けられないようにやることを与えた。修行という名の無茶振りの訓練だ。
どうせ、勇者として村の外に出ていくのだ。何れは必要なことだ。私に関心が向くから駄目であって、それを力をつけるという方向に向かせた。
これが大いに成功した。村の人達の強さに対する向上心もリアンに影響を及ぼしたのかもしれないが、リアンに肋骨にヒビを入れられるまで、大きな怪我をすることを避けされたのだ。
リアンは私をかわいい、かわいいと言って他の人の前では好意を示していたけど、それは困っている私を見て可愛いと、私が嫌な顔をして可愛いと口にしていたのだ。
そして、エルドラードとの邂逅の記憶を取り戻して、全てに納得がいった。リアンの好意は私への殺意だったと。
今、私の目の前にはあの時と同じように口を歪ませて笑っているリアンがいる。
実は私を突き刺した後のリアンの行動は、私の予想を口にしたのだ。
リアンのルナルナ攻撃は正に私への嫌がらせであったのだろう。モナがもしリアンに好意を持っていればルナに嫉妬することだっただろう。
しかし、私は苛つくだけで、ルナに嫉妬心を向けることはなかった。
だから今度は、私に私の所為でルナ死んだと思わせようとしたのだ。心優しいモナなら、あのひと目で死んでいると分るルナの姿を目にして、それに縋り付くリアンというシチュエーションに心を痛め、自分を責めたかもしれないが、私は心優しいモナじゃない!
リアンはルナを見殺しにして私への当てつけにしたのだろうと予想を立てたのだけど、当たっていたようだ。
リアンの歪んだ笑顔が全てを物語っていた。
「あは☆モナは凄いね。いつも、いつも、いつも、いつも、いつも俺を頼りにして、俺以外を見ないのに、モナはいろんな事をしょうと、いろんなことに興味を持って、俺以外の守護者を得た。すごいね。最後には女神の願いを叶えたって?それって何だったのかな?いつもいつもいつも聞いても答えてくれなかったのに、自ら守護者を得たら叶ったのかなぁ」
なんか、リアンが一回り大きくなった気がするんだけど?っていうか、その私は私じゃなくて女神の欠片の方だからね。それに女神が愛した神を自ら封じたと、そして、その神に会いたいなんて言えるはずはないでしょ。
「ふん。元々私の守護者になる気なんてなんて無かって癖によく言うよね」
「うん。無かったね☆」
また、大きくなった気がする。何が起こっている?
ジュウロウザは私を抱えながら、刀を抜いた。シンセイは戟をリアンに向けて構えた。
私はリアンを視る。
····
ryアぃnンンン
職sユゥゥゥゥ ユアァァァァ
え?ごめん読めないよ。名前と職種の時点で何が表記されているのか、わからなくなっている。
あれか、エルドラードが魂が歪んでいると言っていたやつか。え?これってどうすればいいのだろう。
「ねぇ☆モナ。願いが叶ったのなら死んでもいいよね。俺のために死んでくれる?」
嫌だよ。私が答える前にリアンの姿が消えた。
ジュウロウザが前方に刀を構えたかと思えば『ガキン!』という衝撃が空気を伝って響いてきた。リアンが···いや、キラキラの髪がくすんだ灰色になっており、青い澄んだ空の色をしていた目は黒く濁った者が剣を振り下ろしていた。
ジュウロウザが押されている?あの歩く災害と言っていいステータスを持つジュウロウザが?
その時リアンが後方にふっ飛ばされた。側に居たシンセイが繰り出した戟の突きによって飛ばされたようだ。
「将よ。これはちと分が悪いようであるぞ」
「ああ、何かはわからんが人ならざるものに成ったのだろう」
攻撃特化型のジュウロウザとシンセイがいても分が悪いってどういうこと?
「あれは魔人じゃ!一度だけ見たことがある。魔に囚われた人が魔に落ちた姿じゃ!」
博識のロリババアが言うのだ間違いはないのだろう。
「その時はどうしたのですか?」
「その時の聖女が己の生命と引き換えに封じたのじゃ」
えー!ここに聖女なんていないし、無理ゲーすぎる。それも封じるだけ?
風が横切ったと感じると同時に響く金属音。ふっ飛ばされたはずのリアンが剣を振り切った姿でいた。
どうしよう、これじゃ私がジュウロウザの邪魔をしている。でも、リアンが狙っているのは私。
考えろ、どうすればいい?そもそも魔人とはなんだ?ゲームではそのような者は出てこなかった。
魔人。魔に落ちた人。
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