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25章-4 冬期休暇-悪魔という存在
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シェリーは目の前の状況に目を据わらせていた。東京という大都市を模した場所に、3メルはあろうかと思われる巨大な黒い球体。それが歪に中から何かが出てこようと蠢いている。
見た目はもう特撮と言っていい状態だ。
「出てくる寸前みたいだね」
赤いテレビ塔を模した背景の下で、この場の雰囲気とは合わない者たちが4人、黒い球体の前に立っていた。カイルは既に大剣を抜き構えている。
ナーガのユールクスは顎を撫ぜながら、フムと唸って黒い球体を観察している。その後ろには同じくナーガのスイがユールクスを盾にするように隠れている。
シェリーはというと、この情景に嫌気が差していた。だから、目を細めてこの黒い球体を見ている。
「確かに何も違和感を感じぬ。実際に目の前にあっても信じられない」
ユールクスはこの状況に理解はできるが、自分の能力と目の前にある異物の存在の差に不快感を感じているようだ。
その観察している黒い球体から突如として手が生えた。いや、黒い皮膚に青い血管が這うように見える紋様の腕が突き出てきたのだ。
そこから押し出るようにもう一本の腕が出てくる。
「どうします?」
シェリーはこの状況下でユールクスに尋ねた。こちらで対処していいのか。ユールクスが始末するのかと。
いや、今すぐ始末するのか。それとも、中身を確認してから始末するのかと。
「これは我が手を下そう。ラースには魔核の浄化を頼みたい。残りの4つも配下に始末させている」
いつの間にかユールクスは配下の者に悪魔の揺り籠の処理を命じていたようだ。しかし、ユールクスの部下と言ってもシェリーはスイ以外のモノたちがユールクスの側にいるところを見たことがないので、頷くしかない。
そして、ユールクスの言葉を聞いたカイルは構えていた剣を鞘に戻す。
同じくらいユールクスの言葉を聞いていた。シェリーが頷いたと同時に黒き殻から、黒き存在が出てきた。
「うぷっ。気分悪りー」
その存在は殻から外に出て黒いアスファルトの地面にしゃがみ込んでうずくまってしまった。
出てきた早々死にかけなのだろうか。
「あー。あ?」
黒い存在はシェリー達の存在に気が付き、顔を上げた。漆黒の髪に闇を塗り込めたような皮膚。その皮膚の上を血管のように這う青い紋様。そして、シェリーたちを見る目は血のように真っ赤だった。
「人族と憎き竜人はわかるけど。あんたたち何者?」
しゃがみ込んだままの黒き存在がユールクスとスイに視線を向けて疑問を口にした。この者の言葉は理解できる言葉だった。
しかし、ユールクスもスイもその質問には答えない。答える意味がないのだ。このまま死すべき存在に名乗ることなど無駄なことだと。
「まぁー、いいけど」
そう言って黒き存在は立ち上がった。そして、次の瞬間その姿がブレて消え去った。シェリーはすぐさま常時展開しているマップ視線を向けるが、マップには黒い丸がシェリーたちの側にいることには変わらない。
次いで爆音が空を模した天井で鳴り響いた。
「もしかして逃げたのか!」
ユールクスが天井に視線を向け、手の平を上に掲げた。そして、ぐしゃりと手を握り込む。
暫し待つと、ユールクスは大きくため息を吐き、腕を下ろした。
「逃げられた」
「逃げられた?!」
シェリーは驚いたように声を上げた。ユールクスのダンジョンの中で、それもダンジョンマスターであるユールクスを目の前にして逃げ切れるとは、普通は思えない。
「我が知る完全体の悪魔はすべて好戦的だったので、あやつも向かってくるものばかり思っていたが、まさか逃げるとは」
ユールクスは再び大きく溜息を吐いた。
確かに、完全体の悪魔の姿が消えてから、少し間があったのは事実。そして、爆音でユールクスが気づき、何かしらの攻撃を加えていたと思えるが、初動動作が遅れたことは否めない。
いや、そもそも油断をしていたのだ。姿は異形であったが、その態度は人間臭いと言っていいものだった。
そう、オリバーの記憶から再現された悪魔も、ユールクスのダンジョンで再現された悪魔も、その目には全てを否定する色を映していた。
そして、人をさげすみ暴力で全てを壊そうをする狂気。
だから、余りにも人間臭い態度に油断していたのだ。この悪魔は出来損ないだと。
「ユールクスさん。逃げられたなんて嘘ですよね」
シェリーは信じられないと、もう一度確認する。絶好の機会を逃すなんてありえないということだ。
「開けられた縦穴を閉じて、外と階層の間で閉じ込めようとしたが、閉じた穴を再び破壊して出ていってしまった」
「見つけた瞬間、たたき切ればよかったね」
その時は、剣を構えていたカイルが言う。
「いや、あれは我が知っている悪魔ではなかった。何というか、魔人と呼ばれる存在と似ている気がした」
ユールクスは青い晴れ渡った偽物の空を見上げながら言葉を漏らしたのだった。
_________
待っていなかったかもしれませんが、おまたせしました。
連日4時起きで色々書いていたのが、祟ったのかひじょーに眠たいです。誤字脱字の取りこぼしは後日訂正します。
見た目はもう特撮と言っていい状態だ。
「出てくる寸前みたいだね」
赤いテレビ塔を模した背景の下で、この場の雰囲気とは合わない者たちが4人、黒い球体の前に立っていた。カイルは既に大剣を抜き構えている。
ナーガのユールクスは顎を撫ぜながら、フムと唸って黒い球体を観察している。その後ろには同じくナーガのスイがユールクスを盾にするように隠れている。
シェリーはというと、この情景に嫌気が差していた。だから、目を細めてこの黒い球体を見ている。
「確かに何も違和感を感じぬ。実際に目の前にあっても信じられない」
ユールクスはこの状況に理解はできるが、自分の能力と目の前にある異物の存在の差に不快感を感じているようだ。
その観察している黒い球体から突如として手が生えた。いや、黒い皮膚に青い血管が這うように見える紋様の腕が突き出てきたのだ。
そこから押し出るようにもう一本の腕が出てくる。
「どうします?」
シェリーはこの状況下でユールクスに尋ねた。こちらで対処していいのか。ユールクスが始末するのかと。
いや、今すぐ始末するのか。それとも、中身を確認してから始末するのかと。
「これは我が手を下そう。ラースには魔核の浄化を頼みたい。残りの4つも配下に始末させている」
いつの間にかユールクスは配下の者に悪魔の揺り籠の処理を命じていたようだ。しかし、ユールクスの部下と言ってもシェリーはスイ以外のモノたちがユールクスの側にいるところを見たことがないので、頷くしかない。
そして、ユールクスの言葉を聞いたカイルは構えていた剣を鞘に戻す。
同じくらいユールクスの言葉を聞いていた。シェリーが頷いたと同時に黒き殻から、黒き存在が出てきた。
「うぷっ。気分悪りー」
その存在は殻から外に出て黒いアスファルトの地面にしゃがみ込んでうずくまってしまった。
出てきた早々死にかけなのだろうか。
「あー。あ?」
黒い存在はシェリー達の存在に気が付き、顔を上げた。漆黒の髪に闇を塗り込めたような皮膚。その皮膚の上を血管のように這う青い紋様。そして、シェリーたちを見る目は血のように真っ赤だった。
「人族と憎き竜人はわかるけど。あんたたち何者?」
しゃがみ込んだままの黒き存在がユールクスとスイに視線を向けて疑問を口にした。この者の言葉は理解できる言葉だった。
しかし、ユールクスもスイもその質問には答えない。答える意味がないのだ。このまま死すべき存在に名乗ることなど無駄なことだと。
「まぁー、いいけど」
そう言って黒き存在は立ち上がった。そして、次の瞬間その姿がブレて消え去った。シェリーはすぐさま常時展開しているマップ視線を向けるが、マップには黒い丸がシェリーたちの側にいることには変わらない。
次いで爆音が空を模した天井で鳴り響いた。
「もしかして逃げたのか!」
ユールクスが天井に視線を向け、手の平を上に掲げた。そして、ぐしゃりと手を握り込む。
暫し待つと、ユールクスは大きくため息を吐き、腕を下ろした。
「逃げられた」
「逃げられた?!」
シェリーは驚いたように声を上げた。ユールクスのダンジョンの中で、それもダンジョンマスターであるユールクスを目の前にして逃げ切れるとは、普通は思えない。
「我が知る完全体の悪魔はすべて好戦的だったので、あやつも向かってくるものばかり思っていたが、まさか逃げるとは」
ユールクスは再び大きく溜息を吐いた。
確かに、完全体の悪魔の姿が消えてから、少し間があったのは事実。そして、爆音でユールクスが気づき、何かしらの攻撃を加えていたと思えるが、初動動作が遅れたことは否めない。
いや、そもそも油断をしていたのだ。姿は異形であったが、その態度は人間臭いと言っていいものだった。
そう、オリバーの記憶から再現された悪魔も、ユールクスのダンジョンで再現された悪魔も、その目には全てを否定する色を映していた。
そして、人をさげすみ暴力で全てを壊そうをする狂気。
だから、余りにも人間臭い態度に油断していたのだ。この悪魔は出来損ないだと。
「ユールクスさん。逃げられたなんて嘘ですよね」
シェリーは信じられないと、もう一度確認する。絶好の機会を逃すなんてありえないということだ。
「開けられた縦穴を閉じて、外と階層の間で閉じ込めようとしたが、閉じた穴を再び破壊して出ていってしまった」
「見つけた瞬間、たたき切ればよかったね」
その時は、剣を構えていたカイルが言う。
「いや、あれは我が知っている悪魔ではなかった。何というか、魔人と呼ばれる存在と似ている気がした」
ユールクスは青い晴れ渡った偽物の空を見上げながら言葉を漏らしたのだった。
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待っていなかったかもしれませんが、おまたせしました。
連日4時起きで色々書いていたのが、祟ったのかひじょーに眠たいです。誤字脱字の取りこぼしは後日訂正します。
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