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26章 建国祭
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オーウィルディアのいる場所から少し離れたところに転移陣が展開された。その転移陣はオーウィルディアが知る転移陣とは少し違い、幾重に陣が重なりとても複雑な陣が形成されていた。その転移陣だけでも並みの人物が転移してくるとは思えない程のものであった。
転移陣から現れた者にオーウィルディアは内心、申し訳ない気持ちと安堵の気持ちが占めていた。姪であるシェリーミディアに頼らなければならないことに。いや、正確にはシェリーと共に行動をしているカイルの力を頼りたかったのだ。
「シェリーちゃん。無理を言ってごめんなさいね」
大柄で厳つい鎧をまとい、それも片手に身の丈を超える大きな槍を持ってオネェ言葉を話すオーウィルディアには、己の視覚と聴覚の不具合を疑ってしまうほどの、違和感を感じてしまう。
「いいえ」
シェリーは空を見上げながら答えるも、その空は雲に覆われた空であって、なにも変哲もない空だった。オーウィルディアは確か上空に次元の悪魔が出現したと言っていなかっただろうか。
「オーウィルディア様。その肝心の次元の悪魔が見当たりませんが?」
シェリーは挨拶よりも先に、呼び出された原因の所在を聞いた。オーウィルディアの内容から一刻を争う感じだったにも関わらず、公都全土をマップ機能で見ているシェリーのスキルでは引っかかってこない。
「落ちて来た次元の悪魔から順番にディスタに公都の周辺に飛ばしてもらったのよ。流石に公都の上空では戦えないわ。今は兄上とディスタ二人で何とかしてもらっているけど、二人が相手にできない次元の悪魔は一族の者たちで押さえてもらっている状況ね」
上空に次元の悪魔が居ないのは、風竜ディスタが被害を最小限に抑えるために、上空から落ちていくる次元の悪魔を公都の外側に吹き飛ばしたようだ。
「それでオーウィルディア様はここで何をされているのですか?」
シェリーはこの緊急事態に公都にとどまっているオーウィルディアに何をしているのかと、非難するような視線を向けて問う。いや、いつも通りの無表情が余計に言葉に非難的な意味合いが込められている気にさせられるのだ。
「私はナディア様にお伺いを立てていたのよ。ナオフミに頼りたかったのに、ビアンカと子どもたちを連れて公都を出て行っちゃったからね」
神殿に来ているということは、そういうことだったのだろう。シェリーの側に居れば神など気まぐれに顕れては去っていく存在だと勘違いしそうだが、神殿で神に祈り神の神言に耳を傾ける。これが普通の人と神との在り方だ。
「それでナディア様は何と?」
「それがね『あー勇者くんね。あのいけ好かないヤツの加護を得たものに頼るのはやめなさい。だから、今直ぐにシェリーちゃんに助けてって言えば来てくれるわよ』と言われてしまったのよ」
何が“だから”なのかわからないが、ルークの安全が確保された今であるのであれば、シェリーも動いてくれるだろうという、女神ナディアの神威だ。
それにしても、何かと白き神を否定する言葉が出てくる。女神ナディアは一族の中でも一番白き神に翻弄された、血族の娘の番を嫌っているのだろう。
「わかりました。私はどちらの方に向かえばよろしいでしょうか?」
シェリーは次元の悪魔を確実に倒せる存在が3人いるのでれば、ミゲルロディアとディスタが居ない方向とオーウィルディアが向かおうとしている方向以外から公都を守ろうと言った。
「それでは、南側をお願いしたいわ。公都より南側には五キロメルほど離れたところに、南東側に町が、南西側に村があるのよ。だからあまり大技を使わないでね」
オーウィルディアはシェリーに大技を使うなと釘を刺したが、シェリー自身の戦い方は至ってシンプル。相手を殴るか刀で斬り伏すのどちらかだ。オーウィルディアが心配するほどの、大技は持っては居ない。
若しくはシェリーの周りの者たちに釘を刺したのだろうか。
だが、障害物が無くても五キロメルという距離を巻き込んだ攻撃はそうそうできるものではない。
いや、オーウィルディアは知っているのだ。シェリーが使っていた転移陣は有り得ないほどの広範囲を巻き込んだ攻撃をする人物が使っていた転移陣だったと。
その人物が使っていた転移陣を使っているのであれば、オーウィルディアとしては一言注意を促す必要があったのだろう。
ここは公都であり、周りには町や村があるのだから、力加減を忘れないようにと。
オーウィルディアの最後の言葉をシェリーは無表情のまま聞き流す。要は南側にいる次元の悪魔を倒して、そこから公都を一周するように他の場所の助太刀に行けばいいのだと。
「じゃ!先に行ってぶっ飛ばしてくる!」
一番に動き出したのはオルクスだった。今のオルクスに次元の悪魔を伏す力があるかは微妙なとことだというのに、既にその姿は無く、その後をリオンが『抜け駆けはさせないぞ』と言って追いかけて行った。そこはオルクスの行動を諫めるところではないのだろうか。
以前突っ込んで行って返り討ちに遭ったのは誰だと。
転移陣から現れた者にオーウィルディアは内心、申し訳ない気持ちと安堵の気持ちが占めていた。姪であるシェリーミディアに頼らなければならないことに。いや、正確にはシェリーと共に行動をしているカイルの力を頼りたかったのだ。
「シェリーちゃん。無理を言ってごめんなさいね」
大柄で厳つい鎧をまとい、それも片手に身の丈を超える大きな槍を持ってオネェ言葉を話すオーウィルディアには、己の視覚と聴覚の不具合を疑ってしまうほどの、違和感を感じてしまう。
「いいえ」
シェリーは空を見上げながら答えるも、その空は雲に覆われた空であって、なにも変哲もない空だった。オーウィルディアは確か上空に次元の悪魔が出現したと言っていなかっただろうか。
「オーウィルディア様。その肝心の次元の悪魔が見当たりませんが?」
シェリーは挨拶よりも先に、呼び出された原因の所在を聞いた。オーウィルディアの内容から一刻を争う感じだったにも関わらず、公都全土をマップ機能で見ているシェリーのスキルでは引っかかってこない。
「落ちて来た次元の悪魔から順番にディスタに公都の周辺に飛ばしてもらったのよ。流石に公都の上空では戦えないわ。今は兄上とディスタ二人で何とかしてもらっているけど、二人が相手にできない次元の悪魔は一族の者たちで押さえてもらっている状況ね」
上空に次元の悪魔が居ないのは、風竜ディスタが被害を最小限に抑えるために、上空から落ちていくる次元の悪魔を公都の外側に吹き飛ばしたようだ。
「それでオーウィルディア様はここで何をされているのですか?」
シェリーはこの緊急事態に公都にとどまっているオーウィルディアに何をしているのかと、非難するような視線を向けて問う。いや、いつも通りの無表情が余計に言葉に非難的な意味合いが込められている気にさせられるのだ。
「私はナディア様にお伺いを立てていたのよ。ナオフミに頼りたかったのに、ビアンカと子どもたちを連れて公都を出て行っちゃったからね」
神殿に来ているということは、そういうことだったのだろう。シェリーの側に居れば神など気まぐれに顕れては去っていく存在だと勘違いしそうだが、神殿で神に祈り神の神言に耳を傾ける。これが普通の人と神との在り方だ。
「それでナディア様は何と?」
「それがね『あー勇者くんね。あのいけ好かないヤツの加護を得たものに頼るのはやめなさい。だから、今直ぐにシェリーちゃんに助けてって言えば来てくれるわよ』と言われてしまったのよ」
何が“だから”なのかわからないが、ルークの安全が確保された今であるのであれば、シェリーも動いてくれるだろうという、女神ナディアの神威だ。
それにしても、何かと白き神を否定する言葉が出てくる。女神ナディアは一族の中でも一番白き神に翻弄された、血族の娘の番を嫌っているのだろう。
「わかりました。私はどちらの方に向かえばよろしいでしょうか?」
シェリーは次元の悪魔を確実に倒せる存在が3人いるのでれば、ミゲルロディアとディスタが居ない方向とオーウィルディアが向かおうとしている方向以外から公都を守ろうと言った。
「それでは、南側をお願いしたいわ。公都より南側には五キロメルほど離れたところに、南東側に町が、南西側に村があるのよ。だからあまり大技を使わないでね」
オーウィルディアはシェリーに大技を使うなと釘を刺したが、シェリー自身の戦い方は至ってシンプル。相手を殴るか刀で斬り伏すのどちらかだ。オーウィルディアが心配するほどの、大技は持っては居ない。
若しくはシェリーの周りの者たちに釘を刺したのだろうか。
だが、障害物が無くても五キロメルという距離を巻き込んだ攻撃はそうそうできるものではない。
いや、オーウィルディアは知っているのだ。シェリーが使っていた転移陣は有り得ないほどの広範囲を巻き込んだ攻撃をする人物が使っていた転移陣だったと。
その人物が使っていた転移陣を使っているのであれば、オーウィルディアとしては一言注意を促す必要があったのだろう。
ここは公都であり、周りには町や村があるのだから、力加減を忘れないようにと。
オーウィルディアの最後の言葉をシェリーは無表情のまま聞き流す。要は南側にいる次元の悪魔を倒して、そこから公都を一周するように他の場所の助太刀に行けばいいのだと。
「じゃ!先に行ってぶっ飛ばしてくる!」
一番に動き出したのはオルクスだった。今のオルクスに次元の悪魔を伏す力があるかは微妙なとことだというのに、既にその姿は無く、その後をリオンが『抜け駆けはさせないぞ』と言って追いかけて行った。そこはオルクスの行動を諫めるところではないのだろうか。
以前突っ込んで行って返り討ちに遭ったのは誰だと。
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