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◎1話目
しおりを挟む暖かな木漏れ日が揺れている。
真夏の様にうだる暑さは無いし、真冬のような凍える寒さに苛立ちを持つこともない季節。
そんな春の穏やかさを感じる窓辺では、似つかわしくない騒音が響き渡っていた。
ーーガッシャーン
「ッ.....ボルケ様、申し訳ありま、」
震える声で若い女の従業員が頭を下げ続ける。
「貴様、ワタシに対する侮辱行為!!赦されないヨ!!」
「申し訳ありません...ッ!申し訳ありません!」
割れた皿が辺りに散らばり、地団駄を踏む豚のような足がさらに破片を砕いていく。
こいつの名は『チャン=ボルケ』
様々な事業へと手を伸ばし、表向きは膨大な資産を抱え込むやり手の事業家となっているが、実際のところ数多の借金を抱えるハリボテの金持ち様。
噂じゃ、借金の使い道はもっぱら趣味へと使われているらしい。
「今夜、ワタシの部屋に来るヨ。直々にシツケするネ」
「そ、れは....」
どうやら随分と良い趣味をお持ちの様だ。
怒り収まらぬ状態のボルケは、崩れ落ちた従業員にホテルのキーを投げ捨てて、入り口付近に立つこちらへ向かってくる。
「フンッ、どいつもこいつも役立たず.......おぉ?」
「どうぞ、お召し物を。」
一礼し、慣れた動作でコートを羽織らせる。
興奮状態での帰り支度は、寸分のミスも更なる怒りへ引金になる。
極力怒りに触れないように自らの作法の知識をなぞりながら、右腕を通し、背中に回したところでこちらを向いている目と視線が合った。
「....」
「名は?」
「....サラ=ランゲージで御座います」
「ホゥ、ホゥ、ホーゥ!!」
「ッ、」
左腕を回し終えたところで、汗ばんだ手で内股をヌルリと撫でられる。
一瞬顔に青筋が立ちそうになるも、静かに深呼吸をして平然を装う。
するとボルケは、随分と気を良くしたのか数回上下に指を滑らせながら、まるで善意かのように告げる。
「サラ、お前も気を付けるんだヨ。ワタシの躾は徹底的だからネ!でも、お前には少しだけサービスしてあげても良いヨ、フゴッ」
その言葉に返すことなく、頭を下げて真っ黄色の悪趣味なオープンカーが一刻も早く去ってくれる事を祈った。
.... To be continued.
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