ひみつ探偵しおりちゃん

未羊

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第28話 解決、ドアの怪!

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 カーテンが閉められて薄暗い視聴覚室。
「観念して下さい、粒島先生!」
 飛田先生の声が響き渡る。このはっきりとした声に、粒島先生は完全に観念をして見上げかけた顔を再び床に伏せた。もはやそこに、掛けられる言葉などなかった。
「はぁ……、やっぱり内部犯だったわね」
 突然聞こえてきた声に、一斉に視聴覚室の入口に視線が集中する。そこには一人の生徒の姿が見える。スカートが見えるので女子生徒のようだ。
「まあ、痕跡やら犯行の仕方などを考えると、外部犯の線は最初から消えていたものね。ましてや、外部犯ならここには隠せないもの。……推理通りだったわね」
 視聴覚室入口に立っている女子生徒、それは栞だった。
「どうしたんだ、高石くん。姿は見せない約束だったんじゃないのか?」
「まぁ、推理通りだったからそうしようとも思ったんだけど、担任の教師が犯人だなんて聞いたら、出てこずにはいられないってものよ」
 交わされる会話に、粒島が反応する。
「高石、さん?」
 粒島は取り押さえられたまま、顔を上げて栞の方を見る。視線を向けられた栞の方はというと、冷たく軽蔑を含んだ眼差しで粒島を見ている。
「はあ、草利中学校を巡る噂の中に一応ありましたからね。視線の危ない教師っていうのが。誰の事かは書いてはありませんでしたが……」
 ゆっくりと歩いて中へと入って来た栞は、水崎警部の方へ近付いていく。そして、ある程度近付くと立ち止まって両手を腰に当てた。
「警部、LISEは見て下さいましたか? 私が立てた推理を送っておいたんですけど」
「ああ、確認させてもらったよ。そこの飛田先生と全く同じ推理だったから、正直驚いているよ」
「飛田先生?」
 水崎警部が慌ててする釈明を聞いて、水崎警部が視線を向ける先を見る栞。そこにあった姿を見て栞はとても驚いた。なにせそこには飛田先生が居たのだから。さすがにこれは栞も予想できていなかったようで、つい身構えてしまった。
「いやはや、現場検証の際にうろちょろしていたのは見ていましたが、まさか同じ推理にたどり着くとは思いませんでしたね」
 栞を前に、飛田先生はとても落ち着いている。そして、すぐに粒島に視線を落とす。
「私たち二人の推理が一致という事は、これは間違いない事なんでしょうね」
 どことなく侮蔑を含んだ飛田先生の言葉に、粒島はまったく身動きできないでいる。そこへ、栞が追い打ちをかける。
「まあ、どういう事があったか分からないけれど、そのトイレのドアからは粒島先生の指紋しか出ないでしょうね」
「ほぉ、それはなぜですか?」
 栞の言葉に、飛田先生が興味深く聞いてくる。
「念のためと思って、昨日カメラに気付いて対応した後に、両手にぞうきんを持ってトイレの扉は全部拭き取っておきましたからね。それが昨日の放課後の事なので、そこから新規に付く指紋は限られてます。それがましてや男性のもとのとなると……ね」
「おやおや、これは怖いですね」
 栞の言葉で完全にとどめを刺された粒島は、そのままおとなしく警察にしょっ引かれていったのだった。

 こうして、トイレの隠しカメラの一件は解決した。
 あとで警部から聞いた話では、すんなりと粒島は犯行を認めたそうだ。動機やら面倒な方法を取った事とかは、これからの供述待ちだそうだ。
「はぁ、しかしとんでもない事をやってくれてたわね」
 事件後の栞は、なぜか飛田先生と一緒に話をしていた。
「まったくですよ。私と彼とは小さい頃から付き合いだったのですが、まさかこのような事をしでかしてくれるとは正直驚いています」
「幼馴染みだったんですね」
「ええ、そうですよ」
 ここまで話をすると、そこでぷっつりと話が切れる。ちょっとしくったかなと栞は思った。
「それにしても、そうやって見ていると本当に普通の女子中学生にしか見えませんね。本当に南先生と同い年には見えませんよ」
 しばしの沈黙の後、飛田先生は栞を見ながらくすくすと笑っていた。
「悪かったですね、ちびで童顔で。私だって、好きでこの仕事受けたんじゃありませんよ。市民のためだと思ったからです」
 あまりに飛田先生が笑うので、ぷくーっと頬を膨らませて不機嫌になる栞。こういう行動がますます子どもっぽくて、本当に中学生のように見えてくる。
「おやおや、正義感だけでこの仕事に首を突っ込んだんですか。それはあまりにも無謀というものでは?」
 飛田先生が笑いを堪えながら、栞の言葉にツッコミを入れる。
「それはそうでしょうね。でも、私だって本来の学生時代にしっかり体も頭も鍛えましたからね。見た目が小さいからって馬鹿にしていると、痛い目を見ますよ」
「おお、それは頼もしいですね」
 栞がぎろりと睨めば、飛田先生は悪かったねというような仕草を取った。
「まあ、そういうわけで私の心配は不要です。むしろ心配なのは千夏の方ですよ」
 はぁっとため息を吐きながら栞は話を続ける。
「私の幼馴染みですけれどあの通りのお調子者で、この仕事を受けたのも教職員に憧れていたからとか言ってますからね。正直心配しかないですよ」
 くるりと栞は飛田先生を見る。
「正直、男性に任せるのはどうかと思いますけど、同じ教職員ですからしっかりと見てやって下さいね」
「はははっ、そう言われてしまっては仕方ありませんね。南先生に誘われて加担した身です。そこは頑張りますよ」
 栞の振りに、飛田先生はいい笑顔で答えていた。
 もう一度ため息を吐いた栞は、再度強く念を押して飛田先生と別れたのだった。
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