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第115話 わっけーの身の上話
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わっけー。その本名は『脇田恵子』という。
底抜けの明るさで、抜群の能力を持つ彼女は、負けず嫌いである。
そんな彼女が栞に突っ掛かっていくのは、初めて見た時の直感だった。こいつは自分以上の化け物だ。わっけーは栞にそう感じたのだった。
わっけーの両親はごくごく普通の一般人だ。父親は三人兄弟の一番下で、その兄の一人がご近所に住んでいたのである。わっけーは幼い頃からそのおじさんともよく遊んでいたのだ。
わっけーは生まれた頃から、天才と称するにふさわしいくらいの能力を持っていた。幼い頃からもそれはいかんなく発揮された。
物静かな事が多い天才系にしては、どうしてこうも明るく元気でぶっ飛んだキャラになったのか。その理由は幼い頃の環境にあった。
両親がお笑い系が好きだった事が原因である。テレビを一緒に見ていて明るく元気な方が受けがいいと幼いなりに学んだわっけーは、それに準じて明るく活発な子どもへと成長していった。
その結果があの大迷惑な性格である。
天才とは時に妙な失敗をするのである。
幼稚園の頃にはすでにこの性格だったらしく、それはそれで疎まれたらしいが、その一方でそれなりに友だちも居たので改める事はなかった。
その中で、現在も付き合いがあるのは真彩と理恵の二人だけである。特に理恵の方は性格がおとなしくて引っ込み思案なので、明るくて元気で自分を主張できるわっけーに憧れているのである。真彩の方は親が警察官とあって、わっけーの暴走を正義感から止めるのが役目になっていた。こうして不思議な友人関係ができ上がったのである。
一方で、理恵の父親であるレオンとわっけーのおじさんとの関係も、こうした中で築かれていった。家族ぐるみで付き合う事があったので、その中でレオンとおじさんは顔を合わせたのである。
レオンは頭の切れる人物で、尊大で強引な性格なのだが、こういった家族ぐるみの付き合いの中ではいい父親を演じていた。そして、その中でわっけーのおじさんに近付いたのである。いい駒にできると、レオンの直感がそう告げたのだろう。
元々気前がいい上に押しに弱いおじさんは、レオンの甘言に乗ってしまったのが運の尽きだった。
レオンとよく話をするようになってから、おじさんの様子は変わってしまった。わっけーはそれを敏感に感じ取っていたのだ。しかし、まだ幼かったわっけーにはどうする事もできなかった。携帯すらも持たせてもらえないし、少ないお小遣いでは手の打ちようがない。それジレンマは、わっけーの性格をより大迷惑な方向へと突き動かしていったのだ。
言ってしまえば、わっけーのあの大声と底なしの明るさは寂しさの裏返しなのである。
小学生の高学年に入ると、ようやくわっけーも自分用の文明の利器を手にする事ができた。そうなると、わっけーの天才的な頭脳派一気に暴走を始める。
とにかく、その心は様子がおかしくなった優しいおじさんへと常に向いていた。だからこそ、彼に何が起こったのかをはっきりとさせたかったのだ。ともすれば、両親よりもわっけーによくしてくれたおじさんなのである。子ども心にそう思うのは自然な流れなのだった。
しかし、わっけーのその思いはなかなか叶えられなかった。
それというのも、おじさんがほとんど遊んでくれなくなったのである。たまに会って見せる笑顔も、どこか貼り付けたような雰囲気を醸し出していた。おじさんは子ども相手なら分からないだろうと思っていたのだが、わっけーは思っている以上に聡かったのだ。
直接会って話してくれないのなら、こっそりと調べるしかない。そう結論づけたわっけーは行動していた。普段ははいつも通りの騒がしさで振る舞い、家に帰るとこそこそとおじ周りの調査に乗り出していたのだ。その行動力はすさまじいの一言に尽きる。
だが、そんな彼女の努力もむなしく、おじさんは街から忽然と姿を消した。最後に会った時は、ちょうど美術準備室に少女が隠されていた事が分かった数日前の事。その時の様子も、何かに怯えたように震えていたのを、わっけーは今もしっかりと覚えている。あれだけ明るかったおじさんの変貌っぷりに、さすがのわっけーも言葉がなかった。
その直後にあの焼死体が発見されたというニュースだ。わっけーは直感ですぐに分かった。信じたくはないけれど、そうとしか思えなかったのだ。わっけーはその時に父親から奪い取った新聞を、破り捨てん勢いで強く握りしめたほどだった。
その時から、わっけーは復讐に燃え始めた。確証が持てないものの、りぃぱぱであるレオンが犯人だろうと即刻決めつけていた。なにせ、おじさんがおかしくなったのはレオンと付き合うようになってからだからだ。
そこでわっけーが目を付けたのが、栞たちである。
現役中学生である自分には限度がある。だったら、大人の力を借りてみるのはどうなのか。しかし、散々あれだけウザ絡みをしたがゆえに、今さらどう切り出せばいいのか悩むわっけーである。
理恵にしても、さすがに父親に関する事を聞くわけにもいかない。本当のわっけーは空気だって読めるのだ。
そして、悩みに悩んだ結果、とある人物に目を付けたのだった。
底抜けの明るさで、抜群の能力を持つ彼女は、負けず嫌いである。
そんな彼女が栞に突っ掛かっていくのは、初めて見た時の直感だった。こいつは自分以上の化け物だ。わっけーは栞にそう感じたのだった。
わっけーの両親はごくごく普通の一般人だ。父親は三人兄弟の一番下で、その兄の一人がご近所に住んでいたのである。わっけーは幼い頃からそのおじさんともよく遊んでいたのだ。
わっけーは生まれた頃から、天才と称するにふさわしいくらいの能力を持っていた。幼い頃からもそれはいかんなく発揮された。
物静かな事が多い天才系にしては、どうしてこうも明るく元気でぶっ飛んだキャラになったのか。その理由は幼い頃の環境にあった。
両親がお笑い系が好きだった事が原因である。テレビを一緒に見ていて明るく元気な方が受けがいいと幼いなりに学んだわっけーは、それに準じて明るく活発な子どもへと成長していった。
その結果があの大迷惑な性格である。
天才とは時に妙な失敗をするのである。
幼稚園の頃にはすでにこの性格だったらしく、それはそれで疎まれたらしいが、その一方でそれなりに友だちも居たので改める事はなかった。
その中で、現在も付き合いがあるのは真彩と理恵の二人だけである。特に理恵の方は性格がおとなしくて引っ込み思案なので、明るくて元気で自分を主張できるわっけーに憧れているのである。真彩の方は親が警察官とあって、わっけーの暴走を正義感から止めるのが役目になっていた。こうして不思議な友人関係ができ上がったのである。
一方で、理恵の父親であるレオンとわっけーのおじさんとの関係も、こうした中で築かれていった。家族ぐるみで付き合う事があったので、その中でレオンとおじさんは顔を合わせたのである。
レオンは頭の切れる人物で、尊大で強引な性格なのだが、こういった家族ぐるみの付き合いの中ではいい父親を演じていた。そして、その中でわっけーのおじさんに近付いたのである。いい駒にできると、レオンの直感がそう告げたのだろう。
元々気前がいい上に押しに弱いおじさんは、レオンの甘言に乗ってしまったのが運の尽きだった。
レオンとよく話をするようになってから、おじさんの様子は変わってしまった。わっけーはそれを敏感に感じ取っていたのだ。しかし、まだ幼かったわっけーにはどうする事もできなかった。携帯すらも持たせてもらえないし、少ないお小遣いでは手の打ちようがない。それジレンマは、わっけーの性格をより大迷惑な方向へと突き動かしていったのだ。
言ってしまえば、わっけーのあの大声と底なしの明るさは寂しさの裏返しなのである。
小学生の高学年に入ると、ようやくわっけーも自分用の文明の利器を手にする事ができた。そうなると、わっけーの天才的な頭脳派一気に暴走を始める。
とにかく、その心は様子がおかしくなった優しいおじさんへと常に向いていた。だからこそ、彼に何が起こったのかをはっきりとさせたかったのだ。ともすれば、両親よりもわっけーによくしてくれたおじさんなのである。子ども心にそう思うのは自然な流れなのだった。
しかし、わっけーのその思いはなかなか叶えられなかった。
それというのも、おじさんがほとんど遊んでくれなくなったのである。たまに会って見せる笑顔も、どこか貼り付けたような雰囲気を醸し出していた。おじさんは子ども相手なら分からないだろうと思っていたのだが、わっけーは思っている以上に聡かったのだ。
直接会って話してくれないのなら、こっそりと調べるしかない。そう結論づけたわっけーは行動していた。普段ははいつも通りの騒がしさで振る舞い、家に帰るとこそこそとおじ周りの調査に乗り出していたのだ。その行動力はすさまじいの一言に尽きる。
だが、そんな彼女の努力もむなしく、おじさんは街から忽然と姿を消した。最後に会った時は、ちょうど美術準備室に少女が隠されていた事が分かった数日前の事。その時の様子も、何かに怯えたように震えていたのを、わっけーは今もしっかりと覚えている。あれだけ明るかったおじさんの変貌っぷりに、さすがのわっけーも言葉がなかった。
その直後にあの焼死体が発見されたというニュースだ。わっけーは直感ですぐに分かった。信じたくはないけれど、そうとしか思えなかったのだ。わっけーはその時に父親から奪い取った新聞を、破り捨てん勢いで強く握りしめたほどだった。
その時から、わっけーは復讐に燃え始めた。確証が持てないものの、りぃぱぱであるレオンが犯人だろうと即刻決めつけていた。なにせ、おじさんがおかしくなったのはレオンと付き合うようになってからだからだ。
そこでわっけーが目を付けたのが、栞たちである。
現役中学生である自分には限度がある。だったら、大人の力を借りてみるのはどうなのか。しかし、散々あれだけウザ絡みをしたがゆえに、今さらどう切り出せばいいのか悩むわっけーである。
理恵にしても、さすがに父親に関する事を聞くわけにもいかない。本当のわっけーは空気だって読めるのだ。
そして、悩みに悩んだ結果、とある人物に目を付けたのだった。
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