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第八章 二年次
第199話 奔放な女
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「いやー、これうまいねぇ。あたい、こんなの食べた事ないわ」
ピザを頬張りながら、キャノルが騒いでいる。どうやら暗殺者はろくな食事が取れない職のようだ。
「キャノル、あなたも今は使用人なのですから、少しは振る舞いを改めて下さい」
「まあそうだねえ。そういう切り替えは得意だからさ、気にしないでほしいね。現にアクアマリンのとこに居た時はちゃんと使用人してただろ?」
けらけらと笑うキャノルに、シアンは頭が痛そうだった。挟まれたチェリシアがどう反応していいのか分からずに、黙々とピザを食べている。
「しかし、キャノルって結構腕が立ちそうなのに、今回結構なドジを踏みましたね」
ピザをひと切れ食べたところで、チェリシアはキャノルに尋ねてみた。
「ああ、アクアマリンでの召喚陣の隠蔽は上手くいってたんだけどな。二年連続で実家に帰ってきたシアンが邪魔に感じたんでね。なんかこそこそ調べ回ってたし、目障りに感じて消そうとしたんだ」
内容の割には笑顔で饒舌に喋っている。
「あたいは魔道具の魔力を感知はできないから、まさか服に防護魔法が掛かってるなんて思わなかったのさ。今回の失敗は全部そこが原因だね」
いや、本当に何でそんなに楽しそうに話すのだろうか。任務が失敗したなら汚点として嫌がりそうなものなのだが、キャノルはどうも違うようだ。
「失敗の一つや二つくらい、いちいち気にしていたら失敗を重ねるだけだからね。まあ、今回は普通なら処刑もんなんだろうが、あたいを雇って味方に引き込もうとは、あんたらは変わってるよ」
キャノルはピザのおかわりを食べている。
そこへ、突然扉が叩かれる音が響く。
「お姉様、いらっしゃるかしら」
どうやらペシエラのようである。
「ええ、居るわよ。入ってもいいわよ」
「そう、では失礼致しますわ」
チェリシアが許可を出すと、ペシエラはアイリスを伴って部屋に入ってきた。そして、ピザを頬張るキャノルを見て、
「……キャノルさん、なぜここに居るのですか」
アイリスが反応した。
「おや、その声はパープリアんとこのアイリスかい? 風の噂じゃ死んだって聞いたんだが、生きてたのか」
目を丸くしてアイリスを見るキャノル。
「アイリス、知り合い?」
突然の事に訳が分からず、ペシエラはアイリスに尋ねる。
「はい。十歳の頃くらいに、とある人物の暗殺の時にご一緒した暗殺者です。その人物は少女に異様な執着を示す人物で、私が囮となって釣られたところを仕留めるというものでした」
「うっわ、こっちでもロリコンって居るんだ……」
アイリスの説明を聞いて、チェリシアがドン引きしていた。
「あのクソジジイは、若い娘を理由をつけて集めて恨み買いまくってたからな。そん時のあたいも十四って若さなのに、無視しやがってさ。そら頭に来たさ」
キャノルがけらけらと笑っている。
「それにしても、キャノルさんがここに居るって事は、暗殺に失敗した口ですか」
「ぐっ、なんでそれを……」
アイリスに言い当てられたキャノルは、驚きでピザを詰まらせそうになった。
「私もそうだからですよ。今はチェリシア様とペシエラ様の専属侍女として働いてますが、シルヴァノ殿下の婚約者となったペシエラ様付の侍女となるべく、今は猛勉強中です」
「ははっ、あんたも大変だねぇ」
アイリスの事情聞いたキャノルは、紅茶を飲んで落ち着きを取り戻しながら、楽しそうに笑っている。
「ならなんだ。このチェリシアって子は専属が居なくなるのかい? なら、あたいが就こうか?」
「勝手に何を言っているのですか。そういう事はコーラル伯爵様に話を通してからです」
キャノルがノリで言うものだから、シアンが本気で怒っている。
「はいはい。まったく、お貴族様は融通が利かないねぇ」
「融通云々よりも当然です。好き勝手やって最後に困るのは、好き勝手した本人ですからね」
首を横に振って呆れるキャノルを、シアンは再度叱る。確かに面倒臭いと言えばそうだが、手順を踏むからこそ、後々のトラブルが防げるのだ。シアンも経験あるだけに、本気で怒っているのだ。
「ああそうだ。話変わるんだが、この調理窯の軽量化について、あたいに思い当たるものがあるんだ」
「それは本当なの?」
思い出したかのように言うキャノルに、チェリシアが食いつく。
「あぁ、あたいの使う暗器のいくつかにその素材を使ってる。その窯、ほとんどが鉄とかだろう? こいつは、結構軽くて持ち運びに便利なんだ」
キャノルがスカートから取り出した暗器を見て、チェリシアは驚きの声を上げる。
「チタン、アルミニウム合金?!」
チェリシアの鑑定魔法が、衝撃的な結果を表示していたのだ。
ピザを頬張りながら、キャノルが騒いでいる。どうやら暗殺者はろくな食事が取れない職のようだ。
「キャノル、あなたも今は使用人なのですから、少しは振る舞いを改めて下さい」
「まあそうだねえ。そういう切り替えは得意だからさ、気にしないでほしいね。現にアクアマリンのとこに居た時はちゃんと使用人してただろ?」
けらけらと笑うキャノルに、シアンは頭が痛そうだった。挟まれたチェリシアがどう反応していいのか分からずに、黙々とピザを食べている。
「しかし、キャノルって結構腕が立ちそうなのに、今回結構なドジを踏みましたね」
ピザをひと切れ食べたところで、チェリシアはキャノルに尋ねてみた。
「ああ、アクアマリンでの召喚陣の隠蔽は上手くいってたんだけどな。二年連続で実家に帰ってきたシアンが邪魔に感じたんでね。なんかこそこそ調べ回ってたし、目障りに感じて消そうとしたんだ」
内容の割には笑顔で饒舌に喋っている。
「あたいは魔道具の魔力を感知はできないから、まさか服に防護魔法が掛かってるなんて思わなかったのさ。今回の失敗は全部そこが原因だね」
いや、本当に何でそんなに楽しそうに話すのだろうか。任務が失敗したなら汚点として嫌がりそうなものなのだが、キャノルはどうも違うようだ。
「失敗の一つや二つくらい、いちいち気にしていたら失敗を重ねるだけだからね。まあ、今回は普通なら処刑もんなんだろうが、あたいを雇って味方に引き込もうとは、あんたらは変わってるよ」
キャノルはピザのおかわりを食べている。
そこへ、突然扉が叩かれる音が響く。
「お姉様、いらっしゃるかしら」
どうやらペシエラのようである。
「ええ、居るわよ。入ってもいいわよ」
「そう、では失礼致しますわ」
チェリシアが許可を出すと、ペシエラはアイリスを伴って部屋に入ってきた。そして、ピザを頬張るキャノルを見て、
「……キャノルさん、なぜここに居るのですか」
アイリスが反応した。
「おや、その声はパープリアんとこのアイリスかい? 風の噂じゃ死んだって聞いたんだが、生きてたのか」
目を丸くしてアイリスを見るキャノル。
「アイリス、知り合い?」
突然の事に訳が分からず、ペシエラはアイリスに尋ねる。
「はい。十歳の頃くらいに、とある人物の暗殺の時にご一緒した暗殺者です。その人物は少女に異様な執着を示す人物で、私が囮となって釣られたところを仕留めるというものでした」
「うっわ、こっちでもロリコンって居るんだ……」
アイリスの説明を聞いて、チェリシアがドン引きしていた。
「あのクソジジイは、若い娘を理由をつけて集めて恨み買いまくってたからな。そん時のあたいも十四って若さなのに、無視しやがってさ。そら頭に来たさ」
キャノルがけらけらと笑っている。
「それにしても、キャノルさんがここに居るって事は、暗殺に失敗した口ですか」
「ぐっ、なんでそれを……」
アイリスに言い当てられたキャノルは、驚きでピザを詰まらせそうになった。
「私もそうだからですよ。今はチェリシア様とペシエラ様の専属侍女として働いてますが、シルヴァノ殿下の婚約者となったペシエラ様付の侍女となるべく、今は猛勉強中です」
「ははっ、あんたも大変だねぇ」
アイリスの事情聞いたキャノルは、紅茶を飲んで落ち着きを取り戻しながら、楽しそうに笑っている。
「ならなんだ。このチェリシアって子は専属が居なくなるのかい? なら、あたいが就こうか?」
「勝手に何を言っているのですか。そういう事はコーラル伯爵様に話を通してからです」
キャノルがノリで言うものだから、シアンが本気で怒っている。
「はいはい。まったく、お貴族様は融通が利かないねぇ」
「融通云々よりも当然です。好き勝手やって最後に困るのは、好き勝手した本人ですからね」
首を横に振って呆れるキャノルを、シアンは再度叱る。確かに面倒臭いと言えばそうだが、手順を踏むからこそ、後々のトラブルが防げるのだ。シアンも経験あるだけに、本気で怒っているのだ。
「ああそうだ。話変わるんだが、この調理窯の軽量化について、あたいに思い当たるものがあるんだ」
「それは本当なの?」
思い出したかのように言うキャノルに、チェリシアが食いつく。
「あぁ、あたいの使う暗器のいくつかにその素材を使ってる。その窯、ほとんどが鉄とかだろう? こいつは、結構軽くて持ち運びに便利なんだ」
キャノルがスカートから取り出した暗器を見て、チェリシアは驚きの声を上げる。
「チタン、アルミニウム合金?!」
チェリシアの鑑定魔法が、衝撃的な結果を表示していたのだ。
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