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新章 青色の智姫
第123話 頭の痛い問題
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二年次の学生生活もあまり問題なく過ぎていく。
シアンの周りで何かあったとしたら、ダイアに剣を教えて欲しいとせがまれたくらいだった。
あっという間に時間は過ぎていき、気が付けば前期末試験の時期を迎えていた。
今回の試験を前に、プルネが不安そうに頭を抱えていた。
「うう、座学の試験がうまくいくでしょうか……」
剣も魔法も腕前は上げたものの、座学に関してはいまいち自信が持てないプルネである。
「そんなに不安でしたら、勉強会くらいはして差し上げられますよ。ねえ、ブランチェスカ」
「はい、シアン様」
二年次になっても、三人は基本的には一緒に行動している。親世代のロゼリア、チェリシア、ペシエラの三人のような関係だ。
まあもっとも、あの三人は座学も剣も魔法もまったく問題のない三人ではあったが……。
とりあえず、試験を前に三人は家に集まって一緒に勉強をする約束をする。
翌日に勉強会を控えたシアンの元に、またあのお騒がせ猫がやって来た。
「はっはっはっはっ、ボクは来たよ」
「なんなのですか、ケットシー……」
テーブルで優雅に過ごすシアンは、ちらりと部屋に入ってきたケットシーに戸惑いの目を向ける。話はしたいから部屋に招き入れたのだが、やっぱり間違いだったかと思ったようだ。
侍女を務めるスミレも、露骨に嫌な顔をしている。昔からこの二人の関係性はこうなのだ。
「はっはっはっ、相変わらずひどいね、君たちは」
ケットシーはにやつきながら苦言を呈している。
「まぁいいや、君たちの耳に最初に入れておこうと思ったからここに来たんだが、その態度じゃ話はいいようだね。ペシエラくんたちに話に行くことにしよう」
「私たちが最初?」
ケットシーの言い分に、シアンの眉がぴくりと動く。
シアンの反応に、ケットシーはにやりと笑っている。
「ケットシー?」
スミレがケットシーの首元にペーパーナイフを突きつける。
「おっと、君がそこまでするとはどういうつもりかな? それにボクら幻獣は殺したって死なないことくらい知っているだろう?」
「シアン様への侮辱は許しませんよ?」
「おお、怖いなぁ……。すっかり従者が板についてきたね」
ケットシーはそう言いながら両手を上げてスミレからしっかりと離れていく。
「昔の君と違って隙だらけだな。こんな簡単に逃れられるとは、実力は落ちたかい?」
「うるさいですね。普通の侍女に何を求めているのですか」
露骨にケットシーに不快感を示すスミレ。本当に二人の仲は良くなさそうだ。
「まぁそんなことより、合宿はオニオール家に警戒しておくことだね」
「どのような情報なのですかね」
「ファントムには無理やり頼んで悪かったけど、そのかいがあったというものだ。実はね……」
ケットシーはシアンたちにこれまでの調査結果を話す。
「まぁ、それは本当ですか?」
「だね。おかげで、南のトパゼリアからの動きもつかめた。ファントムには感謝だよ」
驚くシアンたちに対して、ケットシーは相変わらずの笑顔である。
「でも、それでしたらお母様たちにも報告をなさいませんと……」
「うん、この後話させてもらうよ。アクアマリン子爵にも話をしておかなければならないし、いろいろと面倒だというものだよ。はっはっはっ」
面倒だという割には、笑っているケットシーである。むしろ楽しんでいないだろうか。
「でも、なぜ今頃になって動き出したのでしょうかね」
「そりゃそうさ。今ならまだ力をつけていない王子王女を狙えるんだよ? 国家を混乱させるのにはちょうどいい機会じゃないか」
ケットシーは物騒なことを笑顔で言ってのける。おかげでケットシーの方が物騒に思えてくるくらいだ。
「奴らも、パープリアの失敗から何も学んでいないわけじゃないみたいだからね」
腕を組んで人差し指を立てながら説明するケットシーは、どこかにやついた顔でシアンを見ている。
「知らないだろうけれど、あいつらは隣国という立場を利用してこちらの式典にも顔を出しているんだ。シアンくんたちのことも十分把握済みなのさ」
「なるほどですね。って、なにをそんなに楽しそうに笑っているのですか」
ケットシーの話に納得するシアンだが、その表情だけは許せなくて文句を言っている。
「なにって、ボクは傍観者だからね。君たちがどうやって回避をするのか、とても興味があるんだよ」
ケットシーはそういうと、部屋の外に向かって歩き出す。
「それじゃ、シルヴァノくんとペシエラくんにも報告しに行くことにするよ。君たちの活躍、実に楽しみにさせてもらうよ、はっはっはっはっ」
しっぽを揺らしながら、ぺったぺったとケットシーは歩いて去っていった。
ケットシーが去っていくと、シアンもスミレも疲れたように椅子に座り込んでしまう。
「あったま痛いですわ……」
「私もですよ……」
相変わらずつかみどころのないケットシーに、二人は話をしただけだというのに疲労感に襲われていたのだ。
「まったく他人事だと思って、あの幻獣は……」
「私に時の力さえあれば、仕返しくらいはできたでしょうに。封じられていて悔しく思ったのは何度目でしょうかね、全部ケットシー絡みですけど」
シアンは頭を抱え、スミレは歯ぎしりをしていた。
しかし、夏合宿でオニオール家が何かを仕掛けてくることが分かったのだ。とりあえずは期末試験を済ませて、それに向けて対処を考えることにする。ケットシーにやり返すのはその後だ。
シアンは気持ちを切り替えて、期末試験に向けての準備を始めるのだった。
シアンの周りで何かあったとしたら、ダイアに剣を教えて欲しいとせがまれたくらいだった。
あっという間に時間は過ぎていき、気が付けば前期末試験の時期を迎えていた。
今回の試験を前に、プルネが不安そうに頭を抱えていた。
「うう、座学の試験がうまくいくでしょうか……」
剣も魔法も腕前は上げたものの、座学に関してはいまいち自信が持てないプルネである。
「そんなに不安でしたら、勉強会くらいはして差し上げられますよ。ねえ、ブランチェスカ」
「はい、シアン様」
二年次になっても、三人は基本的には一緒に行動している。親世代のロゼリア、チェリシア、ペシエラの三人のような関係だ。
まあもっとも、あの三人は座学も剣も魔法もまったく問題のない三人ではあったが……。
とりあえず、試験を前に三人は家に集まって一緒に勉強をする約束をする。
翌日に勉強会を控えたシアンの元に、またあのお騒がせ猫がやって来た。
「はっはっはっはっ、ボクは来たよ」
「なんなのですか、ケットシー……」
テーブルで優雅に過ごすシアンは、ちらりと部屋に入ってきたケットシーに戸惑いの目を向ける。話はしたいから部屋に招き入れたのだが、やっぱり間違いだったかと思ったようだ。
侍女を務めるスミレも、露骨に嫌な顔をしている。昔からこの二人の関係性はこうなのだ。
「はっはっはっ、相変わらずひどいね、君たちは」
ケットシーはにやつきながら苦言を呈している。
「まぁいいや、君たちの耳に最初に入れておこうと思ったからここに来たんだが、その態度じゃ話はいいようだね。ペシエラくんたちに話に行くことにしよう」
「私たちが最初?」
ケットシーの言い分に、シアンの眉がぴくりと動く。
シアンの反応に、ケットシーはにやりと笑っている。
「ケットシー?」
スミレがケットシーの首元にペーパーナイフを突きつける。
「おっと、君がそこまでするとはどういうつもりかな? それにボクら幻獣は殺したって死なないことくらい知っているだろう?」
「シアン様への侮辱は許しませんよ?」
「おお、怖いなぁ……。すっかり従者が板についてきたね」
ケットシーはそう言いながら両手を上げてスミレからしっかりと離れていく。
「昔の君と違って隙だらけだな。こんな簡単に逃れられるとは、実力は落ちたかい?」
「うるさいですね。普通の侍女に何を求めているのですか」
露骨にケットシーに不快感を示すスミレ。本当に二人の仲は良くなさそうだ。
「まぁそんなことより、合宿はオニオール家に警戒しておくことだね」
「どのような情報なのですかね」
「ファントムには無理やり頼んで悪かったけど、そのかいがあったというものだ。実はね……」
ケットシーはシアンたちにこれまでの調査結果を話す。
「まぁ、それは本当ですか?」
「だね。おかげで、南のトパゼリアからの動きもつかめた。ファントムには感謝だよ」
驚くシアンたちに対して、ケットシーは相変わらずの笑顔である。
「でも、それでしたらお母様たちにも報告をなさいませんと……」
「うん、この後話させてもらうよ。アクアマリン子爵にも話をしておかなければならないし、いろいろと面倒だというものだよ。はっはっはっ」
面倒だという割には、笑っているケットシーである。むしろ楽しんでいないだろうか。
「でも、なぜ今頃になって動き出したのでしょうかね」
「そりゃそうさ。今ならまだ力をつけていない王子王女を狙えるんだよ? 国家を混乱させるのにはちょうどいい機会じゃないか」
ケットシーは物騒なことを笑顔で言ってのける。おかげでケットシーの方が物騒に思えてくるくらいだ。
「奴らも、パープリアの失敗から何も学んでいないわけじゃないみたいだからね」
腕を組んで人差し指を立てながら説明するケットシーは、どこかにやついた顔でシアンを見ている。
「知らないだろうけれど、あいつらは隣国という立場を利用してこちらの式典にも顔を出しているんだ。シアンくんたちのことも十分把握済みなのさ」
「なるほどですね。って、なにをそんなに楽しそうに笑っているのですか」
ケットシーの話に納得するシアンだが、その表情だけは許せなくて文句を言っている。
「なにって、ボクは傍観者だからね。君たちがどうやって回避をするのか、とても興味があるんだよ」
ケットシーはそういうと、部屋の外に向かって歩き出す。
「それじゃ、シルヴァノくんとペシエラくんにも報告しに行くことにするよ。君たちの活躍、実に楽しみにさせてもらうよ、はっはっはっはっ」
しっぽを揺らしながら、ぺったぺったとケットシーは歩いて去っていった。
ケットシーが去っていくと、シアンもスミレも疲れたように椅子に座り込んでしまう。
「あったま痛いですわ……」
「私もですよ……」
相変わらずつかみどころのないケットシーに、二人は話をしただけだというのに疲労感に襲われていたのだ。
「まったく他人事だと思って、あの幻獣は……」
「私に時の力さえあれば、仕返しくらいはできたでしょうに。封じられていて悔しく思ったのは何度目でしょうかね、全部ケットシー絡みですけど」
シアンは頭を抱え、スミレは歯ぎしりをしていた。
しかし、夏合宿でオニオール家が何かを仕掛けてくることが分かったのだ。とりあえずは期末試験を済ませて、それに向けて対処を考えることにする。ケットシーにやり返すのはその後だ。
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