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新章 青色の智姫
第188話 追い求めた地
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カイスの村に到着する女王たちは、あまりのにぎやかさに困惑していた。
「ここは、不毛の土地になっていたのでは……?」
「何年前の話をしているのかしら。ここはわたくしが七歳の時にはすでに土地の力を取り戻していますわよ」
「二十年以上前からだと? 信じられんない」
トパゼリアの女王たちが叫んでいる。
どうやらカイスの情報はトパゼリアまで届いていなかったようである。
カイスの村は、かつては確かに不毛の大地だった。
だが、この地を侵食していた瘴気が浄化され、解放された光と水の精霊によって水場が復活すると、まるで見違えるような状況になった。
さらには、チェリシアが作り出した土蔵によるハウス栽培が始まると、それまでの不毛不作が嘘のように改善していったのだ。
今ではアイヴォリーにおける一台農産地となっている。
これだけの変化があれば、トパゼリアの地にまでその情報は届いていそうなのだが、なぜか女王たちは知らなかった。まったくどういう事なのだろうか。
「事実は事実です。ではこちらへ参りましょうか」
ペシエラの指示で、カイスに到着した馬車は奇跡の湖、かつてのアトランティス帝国の帝都のあった場所へと向かう。
厄災の暗龍を倒すまでは、草の一本も生えていなかった場所だ。
ペシエラはこの場所について、あれこれと考えていたことがあった。
それというのは、逆行前の話だった。
あの時はまだチェリシアで、十歳の時に魔物氾濫にさらされた。
よくは覚えていないペシエラだが、あの前後で明らかに魔力量が変わったことは今でもはっきり覚えている。
逆行前と逆行後、同じタイミングで起きた魔物氾濫。だが、その後のカイスの状況には大きな差があった。
(ニーズヘッグを討伐したかどうか……。状況の差はそこなのでしょうね)
馬車で移動しながら、ペシエラはそのようなことを考えていた。
「そういえば、お姉様は静かですわね」
「うん? ああ、ごめんなさい。ちょっと考えごとをね」
「何かありまして?」
「うん、ほら、うちの領ってかなり広大でしょう? よく今まで無事に運営できてきたなって思ってね」
チェリシアの言葉に、ペシエラは目をぱちぱちと数度まばたきをする。
急にそんな話をするのでなぜかと思ったペシエラだったが、その視線の先を見てなんとなく察した。
「はあ、お姉様って本当にお人好しですわね。そうは簡単に参りませんわよ。ただでさえこの方たちは犯罪者、受け入れるわけには参りませんわ」
「……だよね~」
ペシエラが言えば、困り顔で反応するチェリシアである。
チェリシアはせっかくだし、この辺りをトパゼリアの人にあげようとか考えていただのである。
だが、それを実現するにはいろいろと問題がある。
まずトパゼリアの人間はアイヴォリー王国の人間ではないこと。
勝手な領地分割はできないし、そもそも現コーラル伯爵であるニーズヘッグの許可が必要だ。
同情するのは勝手だが、それを行うのはペシエラや国王であるシルヴァノなので、責任を押し付けられる形になる。ペシエラがおいそれを許可を出すわけがないのだ。
「無理なものは無理。それこそ、移民という形でしかこの地を踏ませるわけにはいきませんわよ。今回は単なる情けですわ」
ペシエラはそうチェリシアに告げると、納得した表情でチェリシアは黙り込んだ。
「アイヴォリーを壊滅させようとした妾たちに、情けをかけようというのか?」
「そうですわよ。なんのためにここまで連れてきたと思っていますの?」
女王の問い掛けに、ペシエラは真剣な表情で言葉を返す。
その表情を見た女王は、ペシエラの雰囲気にのまれてしまい、言葉を完全に失っていた。
その後、奇跡の湖にたどり着いたペシエラたちは、女王とその部下たちを馬車から降ろす。
「レイニ、いるのかしら」
「はいは~い、珍しい人たちを連れてきたね」
ペシエラに呼ばれて、レイニが姿を見せる。
ペシエラの後ろにいた女王たちを見て、レイニは腕を組んでにやついた顔を見せている。
「ふ~ん、そいつらはよく僕らの前に姿を見せられたものだね。とはいっても、そいつらには理解できないだろうけどね」
「あら、何かありまして?」
「アトランティスは僕ら妖精にもずいぶんと酷いことをしてくれたからね。あの時を知る妖精だったら、絶対に許さないだろうね。まあ、僕もそんな妖精の一人だけど」
レイニは女王たちに険しい表情を向けている。
「僕としては、君たちが完全に変わったという確証が欲しいね。そうでないなら、この地を足を踏み入れることは二度とできないと悟ることだよ」
チェリシアはレイニの反応に驚いていた。ここまで厳しい反応だとは思っていなかったようだ。
「……分かった。トパゼリアに戻ってしっかり話をさせてもらおう。妾たちが求めた地は蘇ったと伝えれば、態度の変わる者もいるだろう。その時には、正当な手段でアイヴォリーに使者を送らせてもらう」
そう話す女王の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
トパゼリアの民が追い求めてきたかつての地。その地に立ってことで女王たちの中には様々な気持ちがあふれていたのだろう。
チェリシアとペシエラはレイニと話をしながら、気の済むまでそっとしておいたのだった。
「ここは、不毛の土地になっていたのでは……?」
「何年前の話をしているのかしら。ここはわたくしが七歳の時にはすでに土地の力を取り戻していますわよ」
「二十年以上前からだと? 信じられんない」
トパゼリアの女王たちが叫んでいる。
どうやらカイスの情報はトパゼリアまで届いていなかったようである。
カイスの村は、かつては確かに不毛の大地だった。
だが、この地を侵食していた瘴気が浄化され、解放された光と水の精霊によって水場が復活すると、まるで見違えるような状況になった。
さらには、チェリシアが作り出した土蔵によるハウス栽培が始まると、それまでの不毛不作が嘘のように改善していったのだ。
今ではアイヴォリーにおける一台農産地となっている。
これだけの変化があれば、トパゼリアの地にまでその情報は届いていそうなのだが、なぜか女王たちは知らなかった。まったくどういう事なのだろうか。
「事実は事実です。ではこちらへ参りましょうか」
ペシエラの指示で、カイスに到着した馬車は奇跡の湖、かつてのアトランティス帝国の帝都のあった場所へと向かう。
厄災の暗龍を倒すまでは、草の一本も生えていなかった場所だ。
ペシエラはこの場所について、あれこれと考えていたことがあった。
それというのは、逆行前の話だった。
あの時はまだチェリシアで、十歳の時に魔物氾濫にさらされた。
よくは覚えていないペシエラだが、あの前後で明らかに魔力量が変わったことは今でもはっきり覚えている。
逆行前と逆行後、同じタイミングで起きた魔物氾濫。だが、その後のカイスの状況には大きな差があった。
(ニーズヘッグを討伐したかどうか……。状況の差はそこなのでしょうね)
馬車で移動しながら、ペシエラはそのようなことを考えていた。
「そういえば、お姉様は静かですわね」
「うん? ああ、ごめんなさい。ちょっと考えごとをね」
「何かありまして?」
「うん、ほら、うちの領ってかなり広大でしょう? よく今まで無事に運営できてきたなって思ってね」
チェリシアの言葉に、ペシエラは目をぱちぱちと数度まばたきをする。
急にそんな話をするのでなぜかと思ったペシエラだったが、その視線の先を見てなんとなく察した。
「はあ、お姉様って本当にお人好しですわね。そうは簡単に参りませんわよ。ただでさえこの方たちは犯罪者、受け入れるわけには参りませんわ」
「……だよね~」
ペシエラが言えば、困り顔で反応するチェリシアである。
チェリシアはせっかくだし、この辺りをトパゼリアの人にあげようとか考えていただのである。
だが、それを実現するにはいろいろと問題がある。
まずトパゼリアの人間はアイヴォリー王国の人間ではないこと。
勝手な領地分割はできないし、そもそも現コーラル伯爵であるニーズヘッグの許可が必要だ。
同情するのは勝手だが、それを行うのはペシエラや国王であるシルヴァノなので、責任を押し付けられる形になる。ペシエラがおいそれを許可を出すわけがないのだ。
「無理なものは無理。それこそ、移民という形でしかこの地を踏ませるわけにはいきませんわよ。今回は単なる情けですわ」
ペシエラはそうチェリシアに告げると、納得した表情でチェリシアは黙り込んだ。
「アイヴォリーを壊滅させようとした妾たちに、情けをかけようというのか?」
「そうですわよ。なんのためにここまで連れてきたと思っていますの?」
女王の問い掛けに、ペシエラは真剣な表情で言葉を返す。
その表情を見た女王は、ペシエラの雰囲気にのまれてしまい、言葉を完全に失っていた。
その後、奇跡の湖にたどり着いたペシエラたちは、女王とその部下たちを馬車から降ろす。
「レイニ、いるのかしら」
「はいは~い、珍しい人たちを連れてきたね」
ペシエラに呼ばれて、レイニが姿を見せる。
ペシエラの後ろにいた女王たちを見て、レイニは腕を組んでにやついた顔を見せている。
「ふ~ん、そいつらはよく僕らの前に姿を見せられたものだね。とはいっても、そいつらには理解できないだろうけどね」
「あら、何かありまして?」
「アトランティスは僕ら妖精にもずいぶんと酷いことをしてくれたからね。あの時を知る妖精だったら、絶対に許さないだろうね。まあ、僕もそんな妖精の一人だけど」
レイニは女王たちに険しい表情を向けている。
「僕としては、君たちが完全に変わったという確証が欲しいね。そうでないなら、この地を足を踏み入れることは二度とできないと悟ることだよ」
チェリシアはレイニの反応に驚いていた。ここまで厳しい反応だとは思っていなかったようだ。
「……分かった。トパゼリアに戻ってしっかり話をさせてもらおう。妾たちが求めた地は蘇ったと伝えれば、態度の変わる者もいるだろう。その時には、正当な手段でアイヴォリーに使者を送らせてもらう」
そう話す女王の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
トパゼリアの民が追い求めてきたかつての地。その地に立ってことで女王たちの中には様々な気持ちがあふれていたのだろう。
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