最愛の彼女が浮気をしていたら~人によって千差万別の対応。彼の場合は……?~

こまの ととと

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第二話

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 浮気相手のシュウを送り出した後、私は二人で楽しんだ跡を消すために掃除機をかけたり、消臭スプレーを振りかけたりしていた。

 今の彼氏と出会って六年ほど。別に彼が嫌いなわけじゃないけど、最近マンネリ気味。
 私としては刺激が欲しいんだけど、奥手気味の彼とじゃなかなか難しくて。

 一人寂しさを感じた私はマッチングアプリに手を出し、今の浮気相手と出会った。
 自信家でグイグイとくる彼。最初は少し押され気味だったけど、今ではすっかり私の方が虜になってしまった。

 それに彼氏に隠れて浮気をするスリルがたまらない。すっかり癖になってしまった。しばらくはやめられそうにないかなぁ。

「あ~も~、なんでこんなにハマっちゃうかなぁ」

 彼氏には申し訳ないけど、浮気の彼の方が断然いい体してるのよね。


 掃除機をかけ終わり、最後に念押しの消臭スプレーを部屋中に振りかける。

「うん完璧!」

 あとはいつも通りの甲斐甲斐しい彼女に変身して愛しの彼氏様の帰りを待つだけ。

 こういう切り替えも癖になる。
 自分が出来る女としてステップアップしたという実感が沸くからだ。

「さて、朝ご飯作らなきゃ」

 シュウが食べた朝ご飯分の食器は既に綺麗に洗った後、キッチンペーパーでキッチリと水気を拭いて棚に戻してある。
 万が一にもバレる心配は無い。うん、やっぱり私は完璧だ。

 ガチャ。扉の開く音が聞こえた。

 ご飯を作る前に帰って来ちゃったらしい。ちょっと完璧じゃ無くなったな。

 彼はリビングに顔を出して来た。

「ただいまー」

「おかえり~。どう? 久しぶりに友達と会って、盛り上がったんじゃないの?」

「はは、ああそうだな。正直ハメはずしちゃったかな」

 彼は朗らかに笑いながらそう返事をした。よっぽど楽しかったんだろうな。

 そういえば、彼は肩から大きな黒いバッグを下げている。
 あんなの持っていたっけ? バイトに持っていくバッグはあんなに大きくなかったはずだけど……。

「ああ、これ気になる?」

「う、うん。そんなに大きいバッグ、どうしたのかなって? 買ったの?」

「ああちょっとお土産があってな。それ入れるの買ったんだよ」

 なんだそうなのか。
 お土産はきっと友達から貰ったんだろうな、結構大きめだけど何が入ってるんだろ?
 でもいいかそれは後で、今は彼の為に朝ご飯を作ってあげようじゃないか!

「まだ何も食べて無いんでしょ? ちょっと待ってて、すぐに作ってあげるから」

「ああいいよ。あんまりお腹空いて無いんだよね」

「そう?」

 お酒と一緒におつまみを沢山食べて来たとか?
 あれ? そういえばお酒臭くないような……。

「とりあえずさ、このお土産受け取ってくれる。きっと驚くと思うぜ」

「へえ。なんだろ? 楽しみだな~」

 それ程言うなら、きっと凄いのが出て来るんだろう。
 でも正直今朝まで彼に言えない凄い事をしていたから、あんまり驚いてあげられないかも。

(ここは頑張ってリアクションしてあげるところだぞ、私!)

 彼は大きいバッグを床に降ろすと、チャックを開いて中から何かを――ッ!!?

「はは、驚いたろ? これ。上手いこと切り出せたって、自分でも惚れ惚れするよ」

「な……に、それ……?」

 見覚えはある、でもそれについて勝手が口が動いて聞いてしまった。

「何って? 酷い事言うなぁ――



 ――お前の浮気相手じゃないか」



 彼が取り出して来たもの、それは今朝まで一緒に過ごしていた浮気相手のシュウの……頭だった。

「ひっ……!?」

「楽しく過ごしてくれた相手にそんな反応は失礼だろ? お前もそう思うよな? はは! 応えるわけないか」

 何が可笑しいのか、彼は腹話術人形に話し掛けるみたいにシュウの生首に笑いかけていた。

 どうしてこんな……? バレていた? でもだからってなんでここまで!?

「なんでって顔してるな? ここまでやったのに分からないのか? はは、仕方ないか。お前浮気してるくせに鈍感だもんな」

 彼は頭を持ち上げるとそれを優しく撫でると語り出した。
 それはまるでぬいぐるみでも愛でるかのような手つきで……。

「俺が気付いてないとでも思ってたのか? 俺に隠れて他の男と楽しんでたんだろ?」

 やっぱりバレてたんだ……。

「なんで、こんな事……」

「う~ん、なんでって言われれば……やっぱりお前に対する詫びかな?」

「お、詫び? 何を言ってるの……?!」

「だってさ。俺がお前に寂しい思いをさせたから浮気なんてしたんだろ? やっぱその事は反省しなきゃだよな? これはそのお詫びさ。こいつも寂しさを埋めてくれたしな、もう浮気はさせて上げられないけど、せめて手元には置いて上げようかなって。『うん、俺も一緒に過ごせるからうれしい!』だってさ。健気な奴だなぁ、ははは!」

「そ、そんな……」

 彼はシュウの生首を撫でている。

 私は恐怖と絶望で体が固まってしまった。
 もうダメだ、彼が何を言っているのかも分からない。

「ほら」

「ひぃっ!?」

 彼が手に持っていたシュウの生首をこちらに向けて投げてきて、思わず払いのけてしまった。
 首の断面から滴っていた血が手について、それが怖くて足から力が抜けていった。

「おいおい、酷い奴だな。仮にも今朝まで楽しませてくれた相手にさ。……でもいいや」

 彼は足元に転がっていたシュウの首を、まるでゴミでも退けるように蹴とばすと私に向かって歩いてきて――抱きしめてきた。

「……ぅ……ぁ」

 歯がガチガチ震えて声が出せない。
 彼は私を抱きしめたまま、優しい手つきで髪の毛を梳くように撫でてくる。

「はは、震えてるじゃないか。可愛い奴め」

「……ぁ……ぅ……ぃ……」

 恐怖で頭が真っ白になって何も考えられない。

 なんでなんでなんで!? なんでこんなことになったの?!!

 そんな私を余所に彼は私の体をより強く抱きしめてくる。
 まるでもう逃がさないとでもいうかのように……ッ!

 彼は私の耳元に口を近づけ、静かに愛おしくささやいた。

「ああ、ごめんな。怖がらせちゃったな。でも安心してくれ、これからは寂しさを感じなようにちゃあんと努力するから、さ」

 足だけじゃない、体中の力が抜けて行く。

 まるで、今起こっている現実を否定するように――私の意識は暗く落ちて行った。
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