異世界の花嫁?お断りします。

momo6

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今日もいつもの様に、王子が顔を出しにやってきた。

「やぁ、今日は何か変わった事は無いかい?」
「いつも通りですよ」
「そうか、何か気付いた事があれば何でも話していいからね。」
「分かりました」

そういえば、ダンジョンの調査はどうしたのかな?と思い、ロバートと話している王子に声をかける。
「ダンジョンの方はどうですか?何かありましたか?」
「報告では、今のところ問題はないようだ。この調子でいけば、予定より早く帰れるよ」
「そうなんですね。」


良かった、心の中で呟く。
あれからビールに味をしめたエマが毎日来るから、自分で言ったものの後に引けなくなって困っていたが、依頼が終われば解放される。

自然と顔がにやけてしまう。
その様子に、王子は何かあったのかと思い「つばき、本当に何も無いのか?」疑惑の目を向けるが、首を横に振り「何もないですよ~」と慌てるが、じーっと見つめる王子の視線が痛い。

その時、ダンジョンから叫びながら戻ってくる騎士が目に飛び込んできた。

「助けてくれ!!魔物がっっっ急に魔物がっっっっ!」
ガタガタ震えながら、体のあちこちには血が付いていた。
周りにいた騎士達にどよめきが走った。
素早く王子が駆け寄り、詳しく話を聞こうにも気が動転しているのか、同じ事しか言わない。
「第2班!他の仲間を助けに行くぞ!!」
王子の掛け声で、「はい!」と威勢良く返事をして、王子に続きダンジョンの中に入っていく。


残された騎士達は、いつでも出陣出来るように準備をしている。
戻って来た騎士は未だにガタガタ震え、救護班のテントに連れて行かれた。
その様子に椿は、怖くなった。
慌ただしくなった騎士達を見ていると只事ではないのがわかる。

「ウル、、」
《ここにいます。つばき様》
影から出てきたウルに椿はギュウっとしがみつく。
突然現れたフェンリル に騎士達はギョッとしたが、獣魔の首輪を見ると安心し、チロチロと見るものの言い寄ってくる者はいなかった。

「心配しなくても大丈夫よ、」
エマに頭をポンポンされ、子供じゃないんだけど。と思いながらも、不思議と安心した。

「ウル、何が起きたか分かる?」
《多分ですが、溜まっていた魔素が原因かと思います》
「魔素?」
《はい、先程まで無かった禍々しい気配がします。随分と長い間人が立ち入らなかった事で蓄積された魔素が外に溢れでたのでしょう。その魔素に引きよせられ、魔物が集まったのではないかと思います》

「そっか、、、」そしたら、ここも危ない?
そんな不安が頭をよぎる。
自然とウルを触る手に力が入ってしまう。







◇◇◇







辺りは暗くなり、突入していった王子達が未だに戻らない。
心配そうに入り口をウロウロする騎士達が出始めたら頃、
「!!戻ってきたぞ!」
中から出てくる人影を見つけて、近くの騎士が叫んだ。
その声に残っていた者達も近づき入り口を覗き込む。

ーーーそして、その姿を見ると絶句した。
誰1人として無傷な者は居なかったのだ。皆血だらけだった。

それをみた椿は一気に血の気が引き、立ちくらみしそうになるのを堪えた。
待機していた騎士達が手を貸し、その場で治療をしている。
エマも、ポーションを飲ませたりとしていた。
私も手伝わないとって思っても足が動かない。

1人アワアワしていると、「王子!!」
最後に王子が戻って来たようで、何やら慌ただしく周りの騎士達が騒いでいた。
足を引きずるように、王子の所に行くと右腕が肩から無くなっており、ぐるぐる巻きにされ青白い顔で横たわっていた。

「っっっ!!」
声にならない椿は、その場から後退りしてしまう。何て声をかけていいのか分からない。他の人達より、1番酷い怪我を前にして言葉が出てこないのだ。

目を開けた王子が、周りの騎士達の心配をしている。人の心配をするより、自分の心配をしないと!腕が無くなったんだよ!っと思っても口に出来ない。だって、涙が出て声が出てこない。

そんな椿が目に入ったのか、王子が優しく話しかける。
「怖い思いをさせてしまったね、魔物は全て倒したからもう安心だよ。」
ニコリと笑う顔も力なく、また目を閉じてしまった。
「王子!!!」
周りの騎士達がわっと騒ぎ出す。

「なんで、、、自分が死ぬかもしれないのにーーー死なせない」
椿は、どいて!っと近くにいた騎士を押しのけ王子の無くなった腕・肩に触れる。
ぐるぐる巻きにされた布を取ると、えぐり取られた様な傷跡が見え、目を逸らしそうになる。血がまだ吹き出ているのを布で抑えながら「生きて、死んではだめだよ」願うように何度も口にする。

自分には【便利屋・鑑定士・治療師】とあった。治療師なら、この腕も治せるはず…いや、絶対に治す!
(元の腕!元の腕!絶対に治すんだから!!!)

傷跡を淡い光が包みこむと新しい腕が生えて来た。
光が消えると、無くなったはずの腕があった。周りで見ていた騎士達の歓喜の声が上がった。

「ふぅ、何とか出来たーーー王子?シュバーツ王子?」
まだ目を覚まさない王子に呼びかけるとうっすらと目を開けた。
「まだ、痛い所はありますか?」
「?」
何を言われているのか分からず、ぼーっとしている王子に椿は両手をギュウッと握りしめた。その感触に一瞬理解が出来ないと顔をしたが、すぐに状況が分かったとバッと無くなった腕を見る。
「腕がーーー!!私の腕が!」
「はい、ちゃんとありますよ!まだ痛いですか?」
状況がいまいち掴めない王子に、近くの騎士が先程の出来事を話していた。そして、椿が助けてくれたと知ると
「ありがとう!怖い思いをさせてしまったのに、私の腕を治してくれてっっっ本当にありがとう!!!」
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