異世界の花嫁?お断りします。

momo6

文字の大きさ
28 / 83

28

しおりを挟む
ハウスに戻ると、外はガヤガヤと騒がしい。
ウルと一緒に外に出てみるとハウスの周りに人集りが出来ていた。椿の姿を見つけると騎士達が歓喜の声を上げながら椿を取り囲んだのだ。

女神が「大変な事になっている」と言う意味が分かった。
王子の件で見ていた騎士から騎士へ、話が広まったようだ。

「うわぁ~・・・少年っと、違うか。女神様の言った通りだ。」
ボソっと呟くと、まずはこの状況をどうにかする為にシュバーツ王子の所に行かなくてはと考えた。
「すみません。ちょっと通して下さい」
集まった騎士達を押しのけながら、椿はシュバーツの近くに行く。
好奇の目で見られ、正直気分は悪い。

少し先のテントに騎士団長達と会議をしているシュバーツの姿が見えた。
ダンジョンについて話している声が聞こえたので、声をかけるのを躊躇い、テントの外で待っているとまたゾロゾロと椿と話そうと騎士達が集まってきた。

「どこで魔法を習ったの?」
「誰が師?この辺り?」
「他には何が出来るの?」
「彼女になって下さい」
「腰が痛いのを治してくれ」

口々に椿に話しかける。
返答に困り、ははっと愛想笑いをするも質問責めでどうしようかと考えていると「何の騒ぎだ」
テントから、騒ぎを聞きつけた騎士団長が出てきた。確か第三班の団長でライ・・・なんとかさん。うーん、名前が出てこない。

ライがギロリと翡翠の瞳で睨むと、ピタリと静かになった。誰も話さず視線を合わせないようにしている。すると、入り口にいた椿と目があい、「あぁ、なるほど」ポツリと言うと椿の頭をポンポンしながら、スッと椿の前に立ち。騎士達を睨みつけながら大声を上げた。

「お前達!!何をやっているんだ!女性を追い回している暇があるのか!!!やるべき事が他にもあるだろ!」
「「「っっはい!!!」」」
一喝すると、それぞれの持ち場へと駆けて行った。
ようやく静かになったな。と一息つくとライが椿に謝罪してきたので、頭を上げてください!と慌てて騎士団長に言うと頭を上げたライと目があった。
綺麗な翡翠の瞳は先程怒鳴りつけた人とは思えないほど優しい瞳だった。

「すまなかったな、俺の教育不届きだ。後でみっちり言っておくので許してくれないか?」
そう言うと、遠目で見ていた騎士を鋭い眼光で見つめています。怖い・・・
「そこまで気にしていないので、大丈夫です!」そう答えると、また頭を撫でなでされました。
子供扱いされてる感が半端ないんですけど、悪気は無いんだろうな、別にいいけど。


とりあえず、中に入りなさい。と案内されると、シュバーツに事情を説明してくれて「申し訳ない」とまた謝罪されてしまった。

「もう大丈夫ですので、謝らないで下さい」
「しかしーーー」
「大丈夫です!」
私が好きでやった事だからと話して、今後はどうするのか?と聞かれたけど、ーーー何も考えていなかったと反省。
女神様には勢いで「自分で後始末をする」と言ってしまったけど、正直どうすれば良いのか分からない。

困ったと、シュバーツを見るとニコリと微笑まれた。
「シュバーツ王子。箝口令をするにしてもこの件は大きすぎます。すぐに噂が広まると予想され、他国に知れ渡ったらーーー直ぐに対策をしなくては。」
先程のライがシュバーツに助言してくれて、「うん。そうだな」とライと同じ考えだった様だ。

私としては、穏便に済ませたいけど。それは無理みたい。
「つばき、私はこの事を王に知らせる義務がある。
まず一つ目は、ダンジョンを最深部まで行けたので、今回の依頼は完了になる。ありがとう。
溜まった魔素により、魔物が溢れて出たと分かったんだ。溢れ出た魔物は退治したからしばらくは大丈夫。」
ニコリと今回の依頼が終わった事を話してくれたので、内心ホッとする。
だって、また炊事係を続けるのか心配だったから。

続けて、とシュバーツが穏やかに話し出す。
「二つ目は、つばきの回復が飛び抜けている。と言うより、無くなったはずの腕を創り上げる者は初めて見た。
出来ればつばきには、国の為に貢献して欲しいと思っている。その為には王宮魔導師として私と来て欲しいんだが、どうだろうか?」

やんわり話すシュバーツが期待の目で椿を見つける。周りの団長も「承諾しろ」と目で訴えているのが分かる。
やっぱり、思っていた通りの展開になったなーーー王宮魔導師?それになったら、自由が無くなるし戦いに巻き込まれるの確実じゃない!絶対になりたくない。私は治療師としてここに来た訳ではないんだけど、誰も見た事の無いのを見ると自分の手元に置きたくなるよね…

さて、どうやって断ろうかしら。

考え込む椿に、続けてシュバーツが王宮魔導師になれば良い事ばかりだよ。と言っているけど、全然魅力を感じない。だって、あのレオも王宮魔導師だったよね?あんな人と一緒に仕事したくないし。

「有り難い申し出ですが、私には荷が重すぎて勤まりません。今回の件は、たまたまです。あの後、体に負荷がかかり枯渇になりました。ウルが側にいなければ自分が危ない所でした。なので、もう同じ事をやれと言われても出来ません。手助けしたいのですが、自分の命が大事なのでーーーすみません」
正直に話すと断られるとは予想していなかったシュバーツが目をまん丸にして固まっていた。

「ごめんなさい。後、依頼が完了したならここに終了のサインをお願いします」
固まっているシュバーツに依頼完了のサインをしてもらい、さっさと退出する。
だって、あのまま居たら周りの団長達にも何を言われるか想像がつく。
この場から離れるのが1番。ーーー解決してないって?だって、ほかに思いつかなかったんだもん。しょうがないじゃない。

自分に言い聞かせながら、ハウスに戻るとハウスを無限収納にしまう。
エマを探しに行こうとしたら、すぐ近くにいたので声をかけるが私の行動が筒抜けだったのか帰り支度をしていた。

「エマ、ごめんーー私」
「良いのよ。何も言わなくても分かってるわよ」ねっ?と優しく抱きしめてくれた。
あなたは間違っていない。と言われている様でホッとする。偽善かもしれないけど、同じような事を求められたら多分やってしまう。それで、自分が死ぬような目にあうのは避けたい。
心のどこかで、自分を正当化してた。
エマの優しさに甘えてしまってもいいよね?今だけーーー


《つばき様、一度街へ戻りますか?》
ウルに声をかけられて、椿はエマから離れた。
「うん。戻ろう、ギルドで依頼完了しないとね」
(そのまま、この国を離れよう。また勧誘されるのが目に浮かぶ)王に報告したら、私が何と言おうが有無を言わさず連れて行かれるに決まってる。なら、見つからないーー遠い所に行けば良いんだ。

ウルの背中に乗り、今後の事を考えながらその場を離れる。
ウルの毛に顔を埋める椿を エマは何も言わず一緒にウルの背中に乗り、微かに震える椿を後ろから抱きしめる様に包み込む。





◇◇◇◇◇




ウルの疾走にも限界があり、1日ではギルドに着かなかった。
森は抜けたので、道の脇にハウスを出して休むことにした。

食材はまだ残っていたので簡単に夕飯を作り、エマと食べていたら顔を曇らせていた椿に「ねぇ?そんなに悩む事ないわよ?」と気を使われてしまった。
頭では、分かってるんだけどーーーやっぱり、考えちゃうよね。


私はこの先、どうすればいいんだろ・・・








更新が大分遅れました(>人<;)
ごめんなさい(涙
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...