異世界の花嫁?お断りします。

momo6

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「おい!!どこに行ったんだ!?」
「はっ!誰も姿を見ていません!」
「なんだと!?そんなはずはない!直ぐに探すんだ!!!いいな!今すぐにだぞ!!!」
「御意!!」

椿がいない事に気付いた騎士達は、急いで辺りを探すが見つからない。椿はウルに乗って既に帰ってしまった後だったのだ。
そうとは知らないシュバーツや騎士団長は顔を真っ青にしながら騎士達に指示を出していたのだ。

「シュバーツ王子。やはり、この辺りにはいないようです。」
「くそっ!」
やり場の無い怒りをテーブルにぶつけ、叩いた拳がジンジンと痛む。
(失敗した、あの時ーー無理にでも引き止めて置けば・・・いや、そんな事をしたら余計嫌がられてしまう。また、ギルドで待ち伏せをーーー!)
「もしや、街に帰ったのか?ーーー依頼完了をしたから、ギルドに行くはず…直ぐ帰還する!!準備が出来次第、出発するぞ!!」
シュバーツは自分の勘を信じ、戻る事にした。騎士団長達も同じ考えだったようで、コクリと頷くと足早に準備を始めた。


(まだ、どこにも逃げないでおくれ!つばき、私には貴女が必要なんだ!)
馬に乗ると2、3人を引き連れて、シュバーツは先に出発した。
椿への想いを抱きながら。
暗闇の中を必死で走る馬の蹄の音が辺りに響き渡ったーー












◇◇◇◇◇






シュバーツ達がギルドへと向かっている頃、椿は既に旅立つ準備を終えていた。
朝一番で、馬車を探すべく創造で作った目覚まし時計をクルクル回し、早い時間にセットする。

リンリンリン・リンリンリッカチ、部屋に鳴り響くアラーム音。目覚ましを止めると眠たい目をゴシゴシしながら欠伸をする。
窓の外はまだ、日が昇ったばかり。

「ーーーーーデジャブ…」
おかしい。確かに私は、ソファーで寝ていたのよ。
椿は眠い頭をフル回転しながら昨日の事を思い出す為、頭を捻る。
椿の目の前には、スヤスヤ気持ち良さそうに眠るエマがいる。
そう、ここは私の部屋。そして、今寝ていたのは私のベット。
皆さま、今の状況がお分かりでしょうか?
確認の為、エマに聞いてみましょう。

ユサユサ、ユサユサ、ユッサユッサユッサユッサ

無言で、エマの肩を揺らして起こす椿。怒りを通り越し無心だった。
「んん~~?なぁ~に~?ふぁ~~」
「・・・・・・・・・」
「あら、おはよぅ~よく眠れた?」
「・・・・・・・・・」
「女の子がソファーで寝たら体を痛くするし、疲れが取れないでしょ?」
「・・・・・・・・・」
「ん?なぁに~何を怒ってるの?あら、もしかして何もしてないから怒ってるの?やぁ~ね~~私が無防備な子に手を出す訳ないでしょ?ーーーそれとも、襲われたいのか?」
「!!!何をバカな事言ってッッッバカバカバカ!もう!知らない!!」
アッハッハ!と笑いだすエマにプンプンしながら、椿は部屋の扉をバタン!と閉め、出て行った。
(んもう!人をバカにして!もう二度と部屋に入れないんだから!)むしろ、追い出せばいいのに。と思うが、椿はそこまで考えが及ばなかった様だ。

イライラしながら、朝ごはんの支度を始めた。
(エマのにだけ、練りがらしでも入れてやろうかしら!)イタズラをしようと考えたが、エマが怒ると怖いので止めることにした。うん、やらない事が身の為よね。うんうん。

一方、1人部屋に残ったエマは椿の反応を楽しそうに思い出していた。
「はっ、やっぱり最高だゎ。つばきちゃんってからかい甲斐があるのよね~~」
顔を歪めながらニマニマするエマだった。
椿が聞いていたら、白い目で見られる事は間違いない。

階段を降りると、ブスーっとした顔で朝食をテーブルに並べる椿が目に入った。
「あらやだ、まだ機嫌なおしてないの?せっかくの顔がブスになるわよ~~」
「余計なお世話です。食べたらすぐに出発しますからね。」
ツンツンする椿に、苦笑しながらも可愛いなと思うエマだった。




ハウスを仕舞うと、元の空き地になる。
「ハウスって、本当に便利~」っと感心しながら、エマを見るとお店に鍵をかけていた。
何でも荷物は全てアイテムボックス(無限ではないが、お店の荷物は全て入るみたい)に仕舞ったので、お店に泥棒が入ってもガランとした店内なので盗られる物がないから安心。

「さぁ!馬車はこっちよ~~」
エマに案内されて、しばらく歩くと街の端にあるお店に着いた。
店の外には馬達が干し草を食べていた。



エマはズカズカと中に入っていく。
何やら名前を呼んでいる事から知り合いだと思われる、エマに任せる事にした椿は外にいる馬達を眺めている。

順々に眺めていくと、端に一際毛色の違う馬がいた。
近づくと、他の馬は茶色や焦茶色に対し真っ黒だ。
不思議に思い、側によると椿に気付いた黒い馬は鼻先をスリスリとすり寄ってきた。それが可愛くて恐る恐る触れると嬉しそうに尻尾を振っている。

ホッコリしていると、エマがやってきた。隣には大きい髭面の男性がいた。
「ガッハッハ!よく懐いてるな!そいつは、気性が荒く中々言う事を聞かなくて困っていたんだ。良かったらそいつを選んでくれると俺も助かるな!いや~本当に大人しいな!!ガッハッハ」
髭面の男性が近づくとブルルンッと威嚇している。
ガッハッハと言いながら、馬小屋から黒い馬を出そうとするが暴れて手こずっていた。

ようやく、外に出てきたら椿の周りをグルグル回りながらスリスリしている。
「可愛い・・・」
「つばきちゃんが気に入ったみたいね~ヤック!この馬が厄介払い出来たんだから、もちろん馬代は無料よね?馬車も長旅になるから最上級にしてよね?」
エマが髭面の男性に話しかける。どうやら、ヤックと言うみたいだ。
ヤックはうう~ん?!と唸っていたが、エマと交渉する内に一歩も引かないエマに「まいったー」と降参していた。
ニンマリ笑顔で、代金を渡すと馬車を黒い馬に繋いでくれた。
「一頭?この馬くんだけで走れるの?」
他の馬は?と聞くと、この種類は一頭で三頭分の力があると教えてくれた。

「凄いな~馬力があるんだね、馬くん!宜しくね!」
椿が話すと嬉しそうに、蹄をカツンカツンと鳴らしていた。

日が昇り、辺りが明るくなる頃。
椿達は他国へと出発した。
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