異世界の花嫁?お断りします。

momo6

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サラに治療用に部屋を用意してもらい、まずは患者の様子を見るため各部屋を視察した。

思っていた以上に子供が多く、大人は数名で殆どが子供だったのだ。家に帰りたい・親に家族に会いたいと泣いている子供ばかりで胸が痛い。

見ていると胸が苦しく辛い…ふいっと目を逸らしてしまう椿。
「だめだよ。目を逸らさず現実を受け止めるんだ。しっかり目に焼き付けて、今からこの子達を治すんだろ?この現状を受け止めないといけないよ、大丈夫。私がついてる」

震えていた椿の手をギュッと握りしめながらエマは話しかけた。

(怖い、本当に私にこの子達を治せるの?もし、失敗したら?)同じ言葉が頭の中をグルグル回っていたが、エマの言葉が体の中に響いてきた。

(そうよ、私が治すって言ったのに。ビビってなんていられない、せっかくエマが協力してくれているのよ!1人じゃない。大丈夫。私は出来る。)

「大丈夫?」
「ーーーうん。大丈夫。見ててね」
「あぁ、見ているよ。」

エマの手を握り返し、背筋を正し歩き出す。
もう、椿には迷いが無くなっていた。
凛とする姿にエマはニコリと笑う。
(やっと、いつものつばきちゃんになったわね)









「でゎ~、幼い順で症状が重い順に連れてきたら良いんですねぇ?」
「えぇ。1人ずつ部屋に連れてきて下さい。一日に何人見れるか分からないので、それに…あくまでも治療だから個人差がある。それだけは理解して欲しい」

「はい、分かりましたぁ~」
エマがサラに説明している。
サラはエマが先程までの女性が男性になったので驚いていたが、上手く誤魔化したみたいで。サラは普通に話しかけている。

・・・・・それにしても。近くない?あんな距離で話す事無いよね?しかも、あんな猫撫で声で話してなかったよね?

サラが明らかにエマにベタベタ触ったり話したりしているのがやたら目につく。
「・・・ムカつく」
「えっ?何か言った?ほら、ローラ。最初の子が来るよ。準備はいいかい?」

「どうぞーお入りください」
エマの言葉を無視して、ドアの方へ声をかけた。トントンとノックと共に修道服を着た女性と子供が中に入ってきた。

「カイさん、こちらは1番年少になりますぅ。」
「(治療するのは私なのに、なんでエマに話してるのよ)お名前を聞いてもいいかな?私はローラ。あなたは?」

エマの横から離れないサラにイライラしながらも、治療に専念する。椿の呼びかけにか細く答える声に耳をすませる。

「ーーーーサマォ・・・」
「サマ?サマちゃんって言うのかな?初めましてサマちゃん。少しだけ体を見させて貰うけどいいかな?」
コクリと小さく頷く子供。

肌は青くなっている部分が目立ち、顔色も悪い。
サマの腕を持ち、服をめくると青色が広がっているのがわかる。
(鑑定。状況を教えて)

【 鑑定 : サマオリ。3歳・男子。2歳で発病し親と引き離された。上半身に多く症状が出ている。病気のせいと、親と離れた寂しさで食事を取らない事が多い。栄養失調になりかけている】

椿は鑑定を使い、状況を把握した。そして、哀しく胸が痛い。
(こんな小さい内に親と離れ離れなんてーーー)
涙がこみ上げてくるのを必死で堪え、笑顔を向ける。

「今からおねいちゃんがおまじないをしてあげるね!病気なんて飛んでっちゃうから、見ててね。」
コクリと頷くサマに椿は腕を優しくさすりながら何度も繰り返す。
「いたいたいのとんでけー、いたいたいのとんでけー」
すると、腕の青色がどんどん薄くなっていく。その光景に、子供と一緒に入ってきた修道女が目を見開き、固まっていた。
サマも何度も自分の腕を触ったりして目から涙を流し「ありがどぅ!!おねいぢゃんー!ありがとぅーーー!!」と掠れながらにお礼を言う。

「サマちゃん。今、腕の色が消えたけどまだ治ってないの。これだけでは病気は治らないわ。サマちゃんも沢山食べて力をつけないと病気に勝てないのよ?だから、しっかり食べれる?」
「うん!!」

こんなに、嬉しそうにして。早く治してあげたい。
「次はこれを飲めるかな?」
エマが特製で作った栄養剤を手渡している。
・・・なんで、エマの助手をしてるのよ。って、気にしない・気にしない。今はこの子達を一人でも治さないと。


「次の方ー、お入り下さい」
椿は、サラの態度にムッとしながらも治療に専念した。

鑑定を使い、サクサク治療をしていった。
だいたい5~6人目になった時、目眩を感じた。

(あっ、そろそろ魔力が無くなるのかな?)
自分ではまだ感覚が分からず、チラっとエマを見る。

「もぅー!カイさんったら、あっ私が渡しますよ。」
サラがエマの作った栄養剤を自分で子供に渡しているのが見えた。エマもニコニコしてるのが何だか腹が立ってきた。

「次!お入り下さいー」
笑顔を崩さないように、声をかけるが少し大きな声になっているのに気付いていない。

異変に気付いたエマが「ローラ、今日はもう終わりにしよう」と声をかけてくれたが、御構い無しに治療を続けた。

「いたいたいのとんでけーいたいたいのーーー」
『無理したらダメだよ。これ以上は枯渇するよ』

「えっ?」
頭の中に声が響いたと同時に目の前が暗くなり、椿は倒れてしまった。
魔力切れだ。


急に倒れた椿にその場にいた子供と修道女はオロオロする。
さっと、エマが抱き抱えて心配そうに見つめる子供にニッコリ笑いかけた。
「大丈夫。少し疲れが出ただけだよ、また明日治療の続きをしようね?」

「ぅん、おねいちゃん大丈夫なの?ぼくのがうつったのかな?」
「大丈夫。この病気はうつらないよ、休めばまた元気になる。はい、今日はこれを飲んでまたおいで。」


子供と修道女を部屋から出し、サラに今日は終わりと告げた。
サラも心配そうに椿を見つめていたが、エマがお姫様抱っこで部屋に戻るのを見て恨めしそうに椿を睨みつけていた。



部屋に戻ったら、椿をベットに寝かせて深い溜息をついた。
「まだ、本調子じゃないのに。無茶して、ーーーちゅう。っは、相変わらず柔らかい唇ね」
自分の魔力を口移しで椿に注ぐ。

〔つばき様は、大丈夫でしょうか?〕
「ダメって言っても聞かないわよ。自分の魔力の底が分からないから倒れるのよ、困ったわね」

〔魔力の底が分かればいいのでしょうか?〕
「そうね~分かれば自分でセーブ出来るでしょ?後は減った分の魔力を注いで上げればいいかしら?」

〔そうですか。では、わたしが魔力を上げればよいのでは?〕
「あら?あなたが出たら大騒ぎよ?フェンリル の自覚が無いのかしら、目立って治療どころじゃなくなるわよ?」
〔ならば・・・これならどうでしょうか?〕

「!?ーーーいいんじゃないの?」
ニヤリと笑うエマに椿はスヤスヤと寝息を立てていた。

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