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しおりを挟む「して、そなたは何を知っている?」
「・・・何も、何も知りません」
「ほう?余の前で嘘をつくとはな。」
「本当に知らないのです。王様の前で嘘をつきません」
カタカタ震え、地べたに頭を付けながら話すサラに王は嘘を見破り追求する。
「顔をあげよ。そなたにはこの球体が見えるか?」
王に言われ、頭を上げるとふよふよと王の周りに浮かんでいる球体があった。白く濁ってみえる球体を不思議に見ていると王がニヤリと笑った。
「この球体は、普段透明な色をしているんだが今はどんな色をしているか答えてみよ」
「はっはい、白く濁っております。」
震える声で答えると、王は声を出して笑い出した。
「はっはっは、やはりな。そなたは嘘をついておる。」
「!!嘘などーーー」
「黙れい!!!戯言はもうよい!これが証拠じゃ!嘘を付いたものには白く濁って見えるのだ!そなたは自分で言ったであろう?白く濁っておる。とな、衛兵!こやつを地下牢へ連れて行け!白状するまで出すでないぞ!!」
「そんな!!言います!言いますから!!」
「もう遅い!しばらく地下牢で過ごすのだ」
冷たい視線に血の気が一気に引く。
(私はカイさんの約束を守っただけなのに、何でこんな目に合うの?カイさん、助けてくれないの?どうしてーー)
涙が溢れ出てきても誰も助けてくれない。衛兵に連れられて地下へと歩いていく。
一際寒い地下牢に入れられ、囚人の様な扱いをされる。私は何も悪い事をしていない。なんでこんな目にあうの!
理不尽な怒りがサラを包み込む。
「全てあの女が仕組んだ事ね、私をこんな目に合わせてーー殺してやる。カイさんを奪って、私をこんな寒い場所に閉じこめるなんてーーー見つけてやる。絶対に見つけてみせる」
憎しみに満ちた目で誰もいない廊下を睨みつける。その目には憎悪しか無かった。
〔おぉ怖い怖い。嫉妬に狂った女は怖いね~〕
「誰!?」
〔誰って聞かれても。ここから出してあげようか?〕
「どこにいるの!?私に何の用があるの?」
誰もいない部屋でサラの声がこだまする。静まり返った部屋で怖くなったサラは壁の端へと移動する。
〔おやおや、あんなに威勢が良かったのに怖くなったのか?〕
「っ誰なの!?姿を現しなさいよ!」
〔これはこれは、失礼しましたレディー〕
そう言うとボフンと煙の中から仮面をつけた紳士が現れた。
ビクっと仰け反るが礼儀正しくお辞儀をする仮面の紳士に姿勢を正す。
「あなたは?」
〔私の名前はドラー。私の楽しみを奪われてしまいましてね、あなたとは気が合いそうだ〕
「楽しみを奪った?」
〔長い月日をかけて、ピンインを流行らせてこの国を乗っ取る計画が水の泡になってしまいました。順調に進んでいたのに、残念で仕方がない〕
そう言うドラーと名乗る仮面の紳士は、困ったと手振りでサラに話してきた。あの病気の原因はこの人だったのかと怖くなり後退る。そんなサラに御構い無しに話を続けるドラーは提案をしてきた。
〔困っていた時、あなたを見つけました。ピンインを治した人を憎んでますよね?彼を奪われて、殺したいほど憎いですよね?〕
悪魔の囁きの様に、ドラーはサラに囁きかける。
「憎い、私のカイさんを奪っていったのよ。憎い憎い」
〔いい子だ。では、私の為に憎たらしい女を消してしまいなさい。私が力を貸してあげるよ〕
ドラーは禍々しいナイフを取り出すと、髪留めに変えた。
〔これは、必要な時にナイフに変わるからそれまでは髪留めに使うといい〕
キラキラと輝いてみえる髪留めをサラは自分の髪に留める。
すると、先程よりも力が湧いてくる感じがした。
「これは?」
〔私の魔力を髪留めに注いだんだ。この髪留めが道案内するよ。さぁ!行きたまえ!!あの女に復讐をするのだ!!〕
ドラーが両手を広げると、目の前がグニャリと曲がる感覚に目を閉じた。恐る恐る目を開くと門の外にいて、いつのまにか鞄をぶら下げていた。
「今のはいったい・・・?」
不思議に思い、髪に触れると硬いものがあった。髪留めだ。
「夢じゃなかった、本当なの?カイさんに会える?」
そう思うと小さな光が道を照らし出した。真っ直ぐと光る道を見て「この先にあの女がいるのね、カイさん。今逢いにいくわ」
ギュッと鞄を握りしめて光の道を歩き出した。
〔クツクツ、人間は騙しやすい。あの女は危険だ、ピンインを治すなんてーー早めに始末しないと、あの方が知ったら…〕
そう呟くと、ブルブルと震えドナーは闇の中へと消えていった。
何も知らない椿達は、馬車に揺られながら変わる景色を楽しんでいたのだった。
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