異世界の花嫁?お断りします。

momo6

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「やはり、ゲヘ。スケべな体つきをしているな、ゲヘ」
腕から足と撫でるように触っていた時「ぎゃっ!!!」突然、叫び声をあげたと思ったら倒れてしまった。何が起こったのか分からず立ち尽くしていたら、入り口から若い男が入ってきた。
「!!これは!当主様がなぜこの様な場所に!?」
ビシリと姿勢を正す2人の男に鞭を打ちながら一喝した。

「誰が襲ってよいと言った!?」
「ひぃぃ申し訳ございません!!!」
「お前達は、お仕置きが必要だな」
当主と呼ばれた男は、ニヤリと笑いパチンと指を弾くと2人の男の足元に闇が出来て吸い込まれていく。
下品な男も、一緒に落ちていった。

静まり返った中、当主は明るい声で話をし出した。
「いや~怖がらせてしまってすまない。指導が出来ていなかったようだ、君達は明日の競売にかけられる大事な人達だ。もし、傷でもついたら大変な事になっていたよ。」
にこやかに話しているが、その目は冷たく感じた。

「この部屋も、手違いがあったみたいで申し訳ない。今から綺麗な部屋に移動するから動かないで。危ないからね」
パチンと指を鳴らすと、一瞬で石畳の場所から暖かい部屋に移動した。
呆気に取られていたら、たくさんのメイドがやってきて服を脱がされそうになる。
「ちょっ!やめて!触らないで!!」
抵抗するも当主が「綺麗にしないと良い人に買われないぞ?抵抗しない事だな。あぁ、食事も取るといい。空腹で倒れられたら困るからな」
「待ちなさい!この子達を親の所に返せないの!?」
その言葉に当主はピタリと動きをとめる。
「攫われた子達を返してあげなさいよ!」

その問いかけに、当主は椿の方へと向きを変える。
「黙れ、こいつらは親に売られてここに来たんだ。帰る場所は無い。攫われた?馬鹿な事を言うな。親が攫ったと見せかけてくれと頼んできたんだ。間違えるな」
その声は怒りを含んでいた。「ーーーそれは、ごめんなさい」やはり、皆んな売られたのかと聞かされて椿は悲しくなった。
素直に謝る椿に当主は気になったのか質問してきた。

「それにしても、お前はこの国の人間では無いな?どうしてここにいるんだ?」
「分からない。黒い手に吸い込まれて、気付いたらここにーー」
「黒い手?親に売られたんじゃないのか?」
「違う!私にーー親なんていない。」
「それなら、何故ここに…別の部屋で話を聞こーーー」
当主が不思議に思い、椿の手を取ろうとした時 勢いよく扉が開かれた。
「ゼオン様~こんな所にいらしたんですねぇ~お客様がお待ちですよぉ~さぁさぁ、こんな部屋にいつまでもいないで、行きますよ~」突然現れた執事にゼオンは連れていかれた。
「待て、この人は間違えてこちらにいる様だ。詳しく話を聞かなくてはいけない。」
ゼオンがそう言うと、執事は埃で汚れた椿を見るとフンと鼻で笑い「お前、名は?」「つばきです」「そう、後で話を聞くからここで待ってなさい」そう言い残し、ゼオンにおべっかを使いながら部屋から出ていってしまった。

残された椿は、待ってましたと言わんばかりのメイド達に風呂場へと連れていかれてしまった。汚れを落とす為隅々まで洗われて始めは抵抗していたが、その気持ち良さに身を投げ出してしまった。それに久しぶりのお風呂に入れた喜びで浮かれてしまったのだ。他の子達も幸せそうだ。
お風呂から出ると、色とりどりの食事にお腹が鳴ってしまう。

少女達は、恐る恐る手に取り口に運ぶとあまりの美味しさにパクパクと手掴みで色々な物を食べていた。
メイド達は、微笑ましく見ており椿も(毒なんて無いよね?)そう思いながら口に入れると、確かに美味しい。


食事も終わり、ウトウトした少女達をメイドはベッドへと運んでいる。優しく頭を撫でたり、トントンと寝かしつけていた。
「あなた達は、なんでそこまでするの?今からこの子達は売られるんだよ?」
口にしてはいけない事だと思っていても、言わずにはいられなかった。“人を売る”そんな人達が暖かい場所や食事を与えるなんて下心があるに違いない。そう思ってしまったのだ。

「私たちは、売れ残りなんです」
ポツリと1人のメイドが話しかけてきた。
「小さい頃、貧しかった両親は私を売りました。でも、誰も買い手がつかなかったので、ゼオン様が引き取ってくれました。」
「私もです。ゼオン様は、売られた子供達が良い人に巡り会えるようにと、子供達を綺麗にして暖かい食事や寝床を用意するんです。」
思いもよらない話に椿は戸惑った。
「ーーー盗賊って聞いたけど、それは本当なの?」
その言葉にメイド達は戸惑いの顔をするが、「私共からは話せません」と口を閉じてしまった。

困ったと顔をするメイド達にこれ以上追求しても、無駄だと思った椿は疲れた身体を癒す為眠る事にした。
シクシクと泣いている声がするが、メイドが子守唄を歌いながら寝かしつけている。それにつられて、椿もいつのまにか寝てしまった。











歌が聞こえる。
あぁ、さっき寝かしつけている時に子守唄を歌っていたよね。
ーーーでも、この歌…聞いたことがある。

『ねんねんよ~つ~ばきちゃ~ん、ねんねんよ~』
お母さん、お母さんの子守唄だ。
よく、この歌で寝てたなぁーーーあれ?今、何してたんだっけ?

確か、お風呂に入って…あれ?思い出せない、どこにいたんだっけ?私はーーーーダレ?



『しっかりするんだ!君は椿だよ!!』
だれ?つばき、私の名前・・・つば・き?

『忘れ草を食べたんだね。大丈夫だよ、君の名前は椿。僕は余り干渉しては行けないんだ、でもいつも君を見守っているよ。』
分からない、何も考えたくない。怖いこわい

『怖がらなくていいんだ。僕は君を知っている。助けてあげたいけど、これ以上は無理なんだ。思い出して、君の名前はーーー』

「椿」



フッと目を開けると、鏡の前に着飾った椿が座っていた。体が痺れており、上手く動かせない。
「まぁまぁ、見違えるように綺麗になりましたよ」
いつのまにか朝になっており、少女達も綺麗に着飾っていた。だが、誰一人動こうとしない。その目は夢の中にでもいるようにトロンとしていた。
「準備は出来ましたかぁ~?さぁさぁ、皆さんお待ちかねよ?!順番にステージに連れておいき!」
執事がかなり声を上げながらメイドに指示していた。
椿は話しをしようにも声が出なく、体も動かなかった。

「ん~?あら、昨日の子ね~綺麗に化けたじゃな~い?これなら、高く売れるわね~ふふ、薬が効いてて聞こえなかったわね~」
そう言うと、執事は椿の耳元で囁いた。
「あなたを欲しいって人がいて、攫ってきたのよ。可愛がって貰いなさいね~」

あははっと高笑いしながら執事は部屋から出て行った。
全部知っていたのか。そう思いながら、動かない体で椿は椅子に座っていた。
その姿は美しく、化粧をしているメイドも思わずため息が出てしまうほどだった。
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