異世界の花嫁?お断りします。

momo6

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おまけ

1-1 ウルと呼ばれて。

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産まれた時、まだ何も分からない子供だった。
母と兄弟がいたのを覚えている。
ただ・・・それだけ。

母が亡くなった時に自然と狩りの仕方を覚えるようになったのは言うまでもない。
いつの間にか兄弟はいなくなっていた。
その事に気付かない程 我は周りが見えていなかった。
気づけば一人・・・
生きる為に狩りをして命を繋いでいた。

長い年月が経った時、いつもの様に狩りをしていたら人族の縄張りまで来てしまった。
我の姿を見た人族は、恐れ慄いた。

「どうか命だけはお助け下さい」

ガクガクと震える姿を見て、興味が薄れた。
何もせず、来た道に戻ると後ろで人族が叫んでいた。

「フェンリル 様!!」

何の事だか分からなかったが、妖精達が噂しているのを聞いた。
フェンリル は我の種族名だと知ったのはそれから先の事だった。
狩りをしても何も感じない。空腹では無いのにこの満たされない虚無感。

なんだ、いつもと同じなのに何か違う。

(フェンリル様!)
あの時の人族が放った言葉が頭から離れない。





・・・今日もここへ来てしまった。
あの人族が住んでいる村。
我が見るからに貧相な暮らしがよく分かる。
皆、痩せ細りーーー住処もボロボロでは無いか。

我の姿を見つけると、住処からゾロゾロと人族が出てきたが…酷い状況だ。
目には生気がなく虚だった。

「フェンリル 様!」
またあの人族だ。前回聞いた声よりも小さく震えていた。
我が食い殺しに来たと怯えた目をしていた。

ふん。誰が食うか、ガリガリで肉付きの悪そうな体ではないか。

この森には美味いのが多く生息しているがーーーそうか、その体では太刀打ち出来ないんだな。

そうかーーーーー

















今日はコイツでいいだろう。
仕留めた獲物を人族の村に持っていく。

よしよし。だいぶ肉付きが良くなってきたな。顔色もイキイキしている。
住処も綺麗になったな。

「フェンリル 様!ありがとうございます!」

人族はお礼を言うが我はその声に答えず、来た道へ戻る。
これが我と人族の境界線なのだ。
これ以上超えてはならぬ。
自分に言い聞かせながら過ごしてきた。
振り向くとニコニコしながら手を振る人族。何故だか心が温まる。我はこの気持ちに気付かない振りを続けていた。気付いたらダメだと頭で言い聞かせていた。


いつもの様に獲物を咥えて村へ行くと血の匂いが村中充満しており、村の入り口には見知らぬ男達がいた。
「おいおい、本当にフェンリル が飯を咥えてきたぜ?!」
「ははぁーー!マジもんじゃねーか!」
「本当に襲わないのかよ?」

男達は血の匂いがする。
大量の血の匂いーー村人達はどこだ?誰も出てきていないではないか、いや・・・あの人族は生きている。どこだ?

「何よそ見してるんだよ!今だ!やっちまえーー!!」

男達が襲いかかってきたが、子虫と変わらん。フッと風を起こせば遠くに飛ばされたが1人耐えた様だな。
だが、顔は蒼白だ。
「おっ、う、おいぉぃーーこんなに強いのかよ?弱いなんてデマ教えやがって!!!」
そう叫ぶと近くの小屋へ逃げ込んだが、我が逃す訳ないだろう?

がぅぉおおお

唸りをあげ、小屋を壊すと男はあの人族に殴りかかっていた。
すぐ様風を使い引き剥がす、人族の顔はアザだらけだった・・・

その瞬間、今までにない感情が芽生えてきた。
身体中が煮えたぎる様だーーー我は怒っているのか?
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