牢獄の天使は愛を知らない

momo6

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第一章

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2人は戦いに夢中で気付いていない。
窓から木に向かって飛んだ。

バキバキバキバキ

枝が折れながら、何とかしがみついた。
早く降りないと気付かれてしまう。

早く早く


だが、気持ちとは裏腹に木登りしたことがないので、足を滑らせ木から落ちてしまう。
「っっっ!!!」

ドフン


(っっっ痛く・・・ない?)

硬い地面を想像していたが、柔らかい地面で驚いた。心臓がドクドクなっている。

「やっぱり俺がいいんだろ?名前は?」

柔らかい毛にギュッと包まれた。
顔を上げると先程の獣人さんだった。

「何か胸騒ぎがしてよ、歩いてたら高潤の中が騒がしいから見に来たんだ。そしたら数分もしない内に空から天使が落ちてきたんだな~しかも、飛び切りの美人だ。」
パチンとウインクしながら鼻をひくひくさせ顔を近づけてきた。

「さっきの野郎は気に入らねーが、俺があの野郎より可愛がってやるからな。何処に入ろうかっと、まだ名前を聞いてなかった。ん?落ち着いたか?」

体がまだガクガクと震えていたのに気付いた獣人は優しく頭を撫でてくれた。
お姫様抱っこをしながらさりげなく、高潤から離れてくれている。
「あっありがとうございます。あの、助けてくれて感謝致します。その、もう歩けますのでおろしてもらえますか?」

鈴を転がしたような声でおずおずとお願いすると、照れたのかしっぽが激しくふりふりしている。

「あっ、あの・・・」

「ぅあ!悪い!あまりに綺麗な声で驚いちまっただけさ!ははっ、いや!まだ震えてるじゃないか!俺がこのまま連れていってやる!どっどこに行けばいんだ?!」

急に大声で話されてびっくりした。
ーーーこのまま、闘技場に連れて行って貰おうか、うん。それが一番早い!イワンセス様が気付いて追いかけて来ても、闘技場に入れば管轄が違うから入れないはず。
闘技場の管理はこの国で唯一の奴隷。
闘技場の長年の優勝者、バロフ。

よし、獣人さんが走ればすぐに着くはず。
「ぁの・・・闘技場に・・・連れて行って貰えますか?」

その瞬間、ピタっと動きが止まる。
えっ?何か問題でもあった?「闘技場になんのようがある?」冷たい目線で見られた。先程までの温かい目は跡形もない。
空気がピリつき背筋に冷たい汗が流れる。

「ーーー元々、闘技場に行くつもりでした。それをイワンセス様に無理やり高潤に連れて行かれたのです。お願いします!このまま闘技場に連れて行って下さい!」

嘘じゃない。本当の事を切に訴えると獣人さんは、考え込み少ししてから顔を覗きこんできた。

「闘技場で何をするんだ?」
「戦います!」

即答で答えると、予想外の答えだったのか目をパチクリしながらガハハと笑い出した。

「こんな細い腕と身体で、たっ戦うだと?ぷふっははは!面白いな」

馬鹿にしたように笑い出し、不愉快だ。
「本気です!」
「甘い。闘技場はお遊びじゃないんだ。怪我もするし、死ぬぞ?わかってるのか?」

真剣な顔で、やめろと言わんばかりの顔をしてきたが、もう決めた事。
今更、娼婦なんてやりたくない。死んだとしても、怖いけど。死にたくないけど私が決めた事。

「分かっています。」

私も生半可な気持ちではない事を伝えようとキッと力強く言い返した。

「・・・ふっ、負けたよ。俺は、アリビィ。闘技場にはたまに出ている。まぁイベントがある時だけだがな。わかった、連れて行ってやるよ。」

鋭い目つきから柔らかい目つきになり、尻尾がタフンタフンとリズミカルに揺れている。
良かった。安堵と共にふーっと息が漏れてしまう。

「はは、この俺に歯向かう女がいたとは驚きだ。ますます気に入った。俺は闘技場でちょっとばかし名前が知られてるんだが・・・お前は知らなそうだな。」

「?」

「いや、闘技場に行けば毎回会えるな。って事だよ。」

ご機嫌になったのか、アリビィはニコニコしながら闘技場の事を話してくれた。
お姫様抱っこされながら、静かに話を聞いているとチラチラ他のお客様らしき人達の視線が刺さる。
無理もない。側から見たら、娼婦を買い取って連れて帰る。と思われているのだろう。
時折「羨ましい」など聴こえてきたから。
チラっとアリビィさんを見るとアリビィさんも聞こえているのか耳がぴこぴこ動いている。
機嫌が良いわけだ。

「ーーーでな、俺が倒した奴は…もう、着いちまったか。俺たちの受付はあっちだが、お前が入るのは、あっちか?」
もう歩けるのに、わざわざ連れて行ってくれるみたいだ。助かるけど、ちょっと恥ずかしい。

「あっ、ここです。ありがとうございました。」
奴隷用の受付に付くと、アリビィさんにお礼を言って下ろしてもらう。
名残惜しそうに腰に手が回ったままだ。

「あの、もう大丈夫ですので手を離して貰えませんか?」
「ん?あっ!悪い、つい…何かあれば俺の名前を出せよ?絶対だ!それから、会いに行くから会ってくれよ?必ずだ!!」

「はい。分かりました。ありがとうございます」

受付中、アリビィは側を離れないので。役員の人が困っていた。

「もう中に入りますので、アリビィさん。ありがとうございました。それから、私は142番です。名前、話してませんでしたね。」

「えっ?142番?それが名前…あぁ!分かった!」

ぺこりと挨拶をして中に入る。
アリビィさんは、私の姿が見えなくなるまで入り口にいたみたいだ。役員さんがやれやれ、っと話してくれた。
女性の奴隷が入る時は、たまに付き添い人がいるみたいで珍しい事ではないみたい。
中には、絶対怪我をさせるな!と脅迫してくる人もいるから本当に迷惑だと愚痴をこぼしていた。

部屋に案内された。

相部屋は無く、1人部屋だった。
部屋の中でケンカが多く、全て1人部屋になったらしい。
と言ってもベットとトイレがあるだけの狭い部屋。だけど、私の中では初めての1人だけの空間!もう地面に寝ることはない!簡易的だけどベットがある!!最高!臭くない!!大事な事だから2回言う。くっさっくっなーーい!!!
明日は、説明と案内がある。と言われ今日は夕飯を食べて寝るだけ。
夕飯は、食堂で集まって食べるって言ってたからまだ時間がある。
とりあえず、それまで横になろう。

今日は色々あったけど、無事に闘技場に来れて良かった。
サリーお母さん。やっと来れたよ。
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